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一弁一弁拾い集めて、さあおいで。 2024.12.08 ヴィッセル神戸 vs 湘南ベルマーレ マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。


開始時の立ち位置
各ポジションの嚙み合わせ


■ハイライト

 気温が下がり寒そうな様子ではあるが、よく晴れた神戸でキックオフ。湘南は前節から2名メンバーを変更、小野瀬・根本に代わって平岡・福田がスターターに入る。一方の神戸は左サイドに変更有。左SBは本多、左WGが広瀬で宮代は中盤を務める。

 2分の神戸、パスカットから一本のパスで武藤が抜け出してGKと1vs1、戻ってきたミンテに後ろから倒された…かのように思われたが、オフサイドの判定。
 5分の神戸。武藤に入った縦パスをフリック、宮代が拾ってサイドに流れた大迫へパス。空いた中央に移動した武藤に向かって大迫が低いクロス、右足で合わせるがわずかに枠の外。
 9分も神戸。フィードの処理がバタついた湘南に対して高い位置からプレスをかけてボールを奪い、武藤が上福元と1vs1。シュートは上福元が弾き出し、コーナーキックに逃れる。
 16分の神戸、セットプレーの流れから宮代がネットを揺らすが、その手前の段階、扇原のキックに競り合ったトゥーレルの位置がオフサイドとして得点取り消し。


 24分、神戸が先制。右サイドから大迫がクロスを上げ、中で合わせたのは武藤。シュートは上福元がセーブ、ミンテがこぼれたところをカバーしていたが広瀬と交錯して転倒、フリーで最後に詰めたのが宮代。今度はオフサイドもなく、得点が認められた。
 42分の神戸。自陣深い位置からのフリーキック、前川のキックに大迫が競り勝って抜け出した佐々木へ。上福元が飛び出してシュートコースは消していたが、冷静に呼び込んだいた武藤へパス。無人のゴールに流し込んだ武藤が前半終了間際に点差を広げる追加点を奪う。

 前半は2-0の神戸リードで折り返し、ハーフタイムで湘南が2枚交代。平岡に代えて阿部、大岩に代えて岡本、ポジションは変わらず人だけ入れ替える形。
 55分の湘南。池田のパスに抜け出した福田が前川が1vs1を迎えるが、うまくコースを塞いだ前川が一枚上。かわそうとしたが逆に追い込まれてボールを奪われた
 69分、神戸のスローイン。酒井高徳のロングスローの流れから、扇原がミドルシュートを叩き込んで3点差。


 試合はそのまま終了、神戸が勝利してリーグ優勝と連覇、天皇杯とあわせて二冠を達成した。


■試合の振り返り

 リーグ優勝をかけた相手の気迫や勢いといったものに圧倒された序盤に1ゴールを許してしまい、望む展開にさせてしまった試合という印象。勝敗にフォーカスするのであれば戦術的なところよりも、序盤では絶対に1点も許さない的な意思統一や精神的な面でのぶつかり合いが必要だったのだろう。失点シーンを見るとチャレンジとカバーの関係が崩れているような気もするがそれはそれとして、この試合で何を取り組もうとして、どんな課題が残ったのかを振り返ってみたい。

 キックオフ直後から神戸の圧力高めなプレスを受けた湘南。何度か淳之介が大迫の横に空いたスペースを利用して持ち運びボールを供給する場面が見られたが、神戸がプレスのかけ方を修正してからは封鎖されてしまった。中継の林解説員も指摘していたが、4-4-2ではなくもう一枚(下図では室生)が前に出てCB3人にプレッシャーをかけ、ボールサイドのWBにはSBが縦にスライドして出てくるように。手前に押し寄せてくるのであれば、と湘南は裏を狙ったフィードを用いるが神戸のCB2人がFWを制圧。蹴っては回収され、中央経由では捕まって奪われショートカウンターと厳しい時間を過ごすうちに失点を喫する。

神戸がプレスをかけてきた図。
CBが競り合いに勝ち続け、湘南を自陣に寄せ付けなかった。


 失点後は神戸の圧力も収まり、30分を過ぎるとWBや降りてきたFWで時間を作って徐々に押し返していく。作った時間を有効に使えているかというと怪しく、逆に相手が帰陣する時間を与えてしまっているとも言える。とはいえ今シーズンの中でも後ろから時間を作りながら進行していくが、相手に守りを固められて崩せない試合はいくつもあった。例えば17節のホームG大阪戦、第19節のホームFC東京戦、第31節のC大阪戦などだ。
 その結果として早さに舵を切って結果を手にした(と筆者はとらえている)ため、不出来はこの試合に限ったものでもなく、シーズン全体で解決しきらなかった課題でもある。試合を通してボールを握りながら相手の戻りを凌駕してフリーの選手を作り出し得点まで繋げたのは、第24節アウェイG大阪戦、その試合で畑が挙げたゴールくらいだろうか。
 戻られて崩しきれないのなら速く攻めてしまおう、という志向で鹿島戦から4連勝。だが札幌戦、横浜FM戦、そしてこの神戸戦と、時間を作る役割のFWが相手CBに抑えられたらどうする?といういったん目を背けた課題を突き付けられた最終盤だった。
 フェリッピはそれを拳でぶち破っていくためのカードなのかと思っていたがどうやらそうではなく、どちらかといえば丁寧な組み立てを力でまとめあげるタイプであり、彼が本領発揮することがあればそれはチームの成長と同義なのかもしれない(来年もいればだけど)。

 後半から阿部が入り、タイミングよく相手のいない場所に顔を出してDFラインからボールを引き出すように。焦って前に送って失うのではなく、いったん自分たちがボールを持つ時間を増やそうぜ、というメッセージのあるプレーを見せてくれた。55分の田中から池田へ通し、福田がDFライン裏に抜け出したプレーの数秒前。阿部がボールを持ちながら田中にここまで来いと指さしながらチョンとパスしたシーンに、彼の凄さが詰まっているような気がする。今年でお別れになるのは残念だが、新天地での活躍を祈りたい。


 優勝するクラブの強さや基準といったものを目の当たりにした経験が来シーズンに繋がることを願って、今シーズンの各試合レビューを終える。2024シーズンレビューは今週末に公開予定なので、そちらも読んでもらえたら嬉しい。


 今年も一年間、お疲れさまでした!



試合結果
J1リーグ第38節
ヴィッセル神戸 3-0 湘南ベルマーレ

神戸:宮代(26')、武藤(43')、扇原(70')
湘南:なし

主審 荒木 友輔


タイトル引用:壱百満天原サロメ/♡ふぁむ・ふぁた~る♡

ヴィッセル神戸の担当ライバー、壱百満天原サロメの楽曲より引用。花びらを一つ一つ集めていくような積み重ねが求められる試合だったことから。集めた先にはリーグタイトルという大きな花弁が広がっているだろうか。


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ぺん
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