The Velvet Underground
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのアルバムは全部好きですが、一番好きなものは?と聞かれれば・・・3枚目(The Velvet Underground )かもしれません。ジョン・ケイルが在籍していた1枚目、2枚目、最後の4枚目も全部好きなんですけれど、一番聴いているのは間違いなく3枚目です。
ジョン・ケイルがぬけて、アヴァンギャルドさが影を潜めたと言われたりすることもあるこのアルバムですが、レコーディングの直前の移動中に機材が盗まれてしまったことが原因で全体に静かになっているようで「こんなふうに作るしかなかった作品」なのかもしれませんが、そのことがこのアルバムにいい意味で作用し、ある種の緊張感を持った作品になっていると思います。
今、ふと思いましたが、ポール・マッカートニー(&ウイングス)が「Band On The Run」を作った時の、最悪なレコーディングの環境から緊張感が生まれ、素晴らしい作品となったことに少し似ているような気がしないでもありません(全然違う作品ですけれど)。
このアルバムの持つ静寂と緊張感が、他のヴェルヴェット・アンダーグラウンドのアルバムにはないテンションを生んでいるように思いますし、アレンジが割と控えめというか、おとなしいというか、とても繊細で壊れそうな雰囲気もあるというか、だからこそ楽曲の良さが非常によくわかる気がします。ルー・リードは彼という存在そのもの、そして活動に関してクローズ・アップをされる傾向がある気がしますが、とても素晴らしい曲をかく人で(当たり前のことを当たり前に言っているような気もしますが)そのことをまざまざと見せつけられているとも思います。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを聴くと「いい曲は少ないコードでできている」という考えに至りもします。バンド内の人間関係の悪化や契約の関係、 先程も触れた盗難にあったことなど、様々なトラブルで このアルバムを作っていた時期のルー・リードはやる気のようなものが削がれていることも、ダグ・ユールにリード・ ヴォーカルを数曲譲っていることから感じたりもしますが(個人の感想です)、そんな状況そのものも良い作用を起こしているように思えて。
そしてダグ・ユールですが、彼のこのアルバムにおける活躍はすばらしいと思います。メンバーと認められなかったり、非難されがちだったかもしれませんが、この人の才能はもっと評価されるべきだと思うのです。さらに、モーリン・タッカーのヴォーカル曲で、ルー・リードのアコギとダグ・ユールのベースの演奏だけの「After Hours」もシンプルかつ素朴で、なんだか良いのです。
こんなふうにつらつら書いてきましたが、最初の曲、「Candy Says」がきこえた瞬間、すぐにヴェルヴェット・アンダーグラウンドの世界に引き込まれます。他のバンドではなかなか味わえないし、巡り会えない感じというか。それは1枚目アルバムの最初の「Sunday Morning」にも同じことが言えるかもしれませんが、3枚目は冷たい炎というか、冷めた情念というか、そんなものを感じさせてくれる唯一無二のアルバムだと感じます。