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中国ライブコマースで大炎上。急成長に隠れた闇が明らかに

先日、11月11日に行われた中国ECの大セールイベント「ダブル11」についてのnoteを書きました。その中でもライブ中継販売の盛況や、既存ECへの衝撃などについて紹介しました。

爆発的な成長が続いているライブ中継販売ですが、今年のダブル11ではトラブルに巻き込まれ大炎上しました。以前から、ボクのnoteで何度も名前が出てくる中国のスター「李佳琦」と「薇娅」のツートップですが、彼らへの批判もヒートアップ。寡占化への批判も一気に増えていて、今回の一連の動きは中国のライブ中継のあり方にも深く影響を与えるかもしれません。

まずは事実関係について説明しましょう。

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ダブル11キャンペーンが終わって間もなく、weiboが運用しているクレームプラットフォーム「黒猫クレーム」で、「李佳琦のライブ中継での予約販売で購入したロレアルのマスクの値段が約束の定価どころか、ダブル11当日のオフィシャル店舗での直接購入よりずっと高いんだけど」とのクレームが多数投稿されました。

具体的には下記の感じ。

10月20日のダブル11の予約販売の初日に、李佳琦のライブ中継でロレアルのマスクが50枚で429元(約7400円)の価格で販売されています(予約販売なので配達は11月11日になります)。しかし11月11日にロレアルのオフィシャル店舗のライブ中継で購入する場合、50枚は257.7元(約4450円)とはるかに安い額で買えてしまう。

一般的には、トップクラスのライブ中継セールスは、オフィシャル店舗のリンクによって商品を販売し、荷造りも配達もその後のカスタマイズ対応も全部オフィシャルルートになります。それにスターである李佳琦や薇娅レベルでは、全ネット、プラットフォームでの最低価格になっていることが常態化になっています。

つまり、「ここで1番安い値段で買えますよ」と胸を張って言えることこそトップセールスの実力だと。消費者もこのイメージが強いからライブに積極参加しますし、時間をかけて商品紹介を見ながら販売リンクの更新を待っています。大量成約が予想され、実際にいつもすぐ完売するため、買いたいものがあればライブの最初から参加し商品の販売リンク公開をチェックしそのタイミングで申し込まなければなりません。

なので、ライブを見て買った人からしたら期待を大きく裏切られる結果となり炎上となりました。

事前にお得な価格で販売する契約をしているはずが、なぜ今回のようなトラブルが起きたのでしょうか。その理由は「ロレアルが販売促進のために数量限定で999元に達したら200元引きのクーポン券を2万を配ったから」です。これらのクーポンを同時に使えば、李佳琦や薇娅のライブ中継より安い値段で購入することが可能です。

個人的には、先日のnoteでも書いたよう、割引ルールがあまりにも複雑で、消費者だけではなく、販売側もわからなくなってミスしてしまっているのではないかと考えています。

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↑2021年上半期化粧品メーカートップ10で、ロレアルが堂々のTOP。

ただ、小さい店舗がこのようなミスを犯すならまだしも、HRやAmaniなどのブラントも傘下に収める世界最大手とも言えるロレアルがこのようなミスを犯すとは予想外でした。

さらに気になるのは、今回の炎上を煽ったのが他ならぬロレアルのカスタマースタッフなのです。

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騙されたと主張する購入者は、ロレアルのカスタマースタッフと交渉したら「買い物には理性が必要で簡単に情報を信じるな!李佳琦も結局ロレアルが雇ったセールスだ。消費者は理性的に行動しましょう」とチャットで返事されていました(まぁこのやりとりだとお客さんも結構衝動的な言い方をしていて、この箇所だけが切り取られてのかもですが)。

その後、「李佳琦」と「薇娅」それぞれは問題が解決するまでロレアルとの提携を中止すると発表しました。

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ボクのnoteの愛読者の皆様はまだ覚えていますか?李佳琦はもともとはロレアルのセールス養成企画に選ばれて美容部員になったのです、つまりロレアルとの関係はビジネスだけのものではないはずです。

今回古巣と提携中止までに至ったのは、もしも今回の件をきちんと処理できなければ、中国No. 1のライブ中継セールスのメンツが保てないだけではなく、どこよりもお得なライブというブランドと信頼感が一気になくなるからです。

また、陰謀論者の意見ではロレアルがわざとやらかしたではないかというのもあります。ライブ中継では最低価格と約束しなければならないし、おまけも多めに付けなければならない、高額の手数料とレベニューも払わなければならない理由は、集客が良いからです。でも、もしも消費者がロレアルのオフィシャル店舗のライブ中継が1番安く買えるって事実を知れば、自然にそっちを選ぶでしょう。なので今回のトラブルはロレアルには好都合ではないかと、議論されています。

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その後、ロレアルが謝罪し、解決案も出してましたがこれもまた大炎上。

解決案としては、トータルで999元の商品を購入した消費者にすぐに制限なしでロレアル店舗で使える200元の現金券を渡します。達していない消費者も499元に達していれば100元引きのクーポンを2枚渡します、というもの。

この解決案に腹がたった消費者からは「騙された以上もう絶対買わんわ」と猛烈なツッコミ。

まだ落ち着いてませんが、今回のトラブルが非常に興味深いだと思います。中国のライブ中継を利用しているユーザーは全ネット民の4割を占めます。ライブ中継はもはや国民のインフラと言っても良い。

正直その魅力はあまり感じられませんでしたって言うのは個人的な意見で多くの人たちとは違うのかなぁと思ってましたが、今回の一件でみんな不満があることが判明しました。

不満爆発の一覧の中にあったわかりやすい例はこれです。

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「杭州の大手デパートでは、某高級化粧品はオンラインより全然安い価格でキャンペーンをしていて、予約が殺到しています。デパートのマーケティング経費を使っての割引だと考えられます。でもこの件が李佳琦の運営社に知られ、ブランド側に文句を言ってオフラインのキャンペーンが中止に追い込まれた」というもの。

オンラインライブ側が強くなり過ぎたため、オンラインの価格コントロールすることが当たり前になっている弊害は言わずもがな、今やオフラインまで干渉しているのです。どうなんだろうと思う人が多いのは共感できますね。

ライブコマースは、本来なら商品の魅力をわかりやすく伝えてくれて、さらに安く買えるように仕事してくれるから人気が集まっていたのです。それがいつからか自分の影響力を保つため消費者が自分たちのところより安く買おうとすることを阻止するって...もはや消費者にとって本末転倒です。この機会に急成長した弊害が一気に是正されることを期待したいです。

(参考資料)

https://www.zhihu.com/question/499215160

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