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日本のノンアルコールビールは、そもそもビールじゃないんだよね。って話

JB Pressさんに『日本のノンアルコールビールが不味すぎる理由
 -ドイツとの決定的な差は財務省の規制にあった-
』という記事が上がっていたので斜め読みしつつ、今夏聞いた話を思い出したので補足気味に書いておこうかと。

前述の引用記事から結論から書きますが、

ドイツのノンアルコールビールは、ビールからアルコールを取り除いて「脱アルコール化」したものが売られています。
【中略】
日本のノンアルコールビールは、ビールとは全く製法が違う、完成品のビールからアルコールを抜くのではなく、麦汁その他から別の飲料を作り出しているのです。

……なのですよね。
この話をするにはビールの作り方が頭に入ってないと難しいかもなので、簡単にお話ししますと、

■ビールの主な原料は、麦(麦芽)、ホップ、水、酵母です。(これ以外を副原料と呼ぶことが多いです)
■水を張った鍋に麦とホップを入れて沸かし、漉したものを「麦汁」と呼びます。
■麦汁を酵母で発酵することで、アルコールが発生し、「ビール」になります。

最低限、この知識がないと、引用先の記事もこの投稿も「なんのこっちゃ?」かもしれません。

これを踏まえ、ノンアルコールビールの作り方を考えてみましょう。
引用の例では、ドイツの場合「ビール」−「アルコール」=「ノンアルコールビール」とあります。
日本では、麦汁を魔改造(ビールになる前の状態を原料と)することで、「ビール風飲料」を作る、としています。
ノンアルコールビールの作り方としては、実はこの2種類だけではなく「完成品を薄める(セッション的なやつ)」とか「発酵をコントロール」して「アルコール度数を規定以下に調整する」とかいろいろあるらしいんですけど。(この辺も引用記事に記載があります)

この後の情報は酒場で行った噂話を踏まえてなので悪しからず、なのですが、元記事にもあるように酒税の問題があって、簡単に言ってアルコールが発生していない麦汁の状態では酒税がかからない、ってことなんですね。言い換えれば、ビールに欠かせない主原料である酵母を入れると酒税がかかっちゃうてこと。

一度「ビール」となったが最後、その後アルコールを抜こうが酒税対象のままなんだそうです。

ここで問題です。
あなたが経営者や醸造の立場なら「麦汁→ビール→ノンアルコールビール」で作りますか?それとも「麦汁→ノンアルコールビール」にしますか?

酒税以外にも、「手間」という観点があるのではないでしょうか。(開発費などの概念は除く)
※それでも地ビールメーカーさんでは、“ドイツ風の”ノンアルコールビールを作っているところもあります。

引用記事の中では、「(ドイツに比べて日本の)ノンアルコールビールは全般においしいというものではない気がします」という主観で書かれているようです。

ですが、「原料:ビール」と「原料:麦汁」を並べて、「どっちがビールに近い味でしょうか?」と言われてもちょっと反応に困ってしまいます。(たぶん言いたいことはここではないでしょうけど)

販売的な意味でも、ノンアルコールビールではなく「麦汁飲料」として開き直っちゃうのもひとつだと思うんですよね。下手にビールと冠していることで産まれている誤解もあると思いますし。(そこに市場があるかどうかは知りませんけど)

日本風のノンアルコールビール(語弊があるかな?)をビールの代用品と捉えるのか、麦汁飲料としての可能性と捉えるのか。技術的な面から新ジャンル(第三のビール)のことも思い出してしまって、歴史が繰り返している感に浸ってしまいます。

ビール界隈のこの手の話は、着地点をどこにするのか(味?酒税?など)で論点が変わってきます。ビアバーなどに行くとチラホラ聞こえてくるこの手の話題。これもまた今の時代のビールブーム(クラフトビールブーム、第二次地ビールブーム)の面白みかもしれません。

[2017.12.17記]

※掲載の画像と本投稿記事の内容は関連がありません。イメージです。



【蛇足】

この引用記事を読んで思ったのは2つ。

バターの代用品としてのマーガリンのお話(参考:2ch copipe hozon『マーガリンの歴史ワロタwwwwwwwwwwww』

1 名前:VIPがお送りします[] 投稿日:2013/01/22(火) 22:13:22.92 ID:wGB4KRcl0
1880年 アメリカ 安くておいしい改良型のマーガリンが開発される
 ↓
乳製品業界「にせバター死ね!規制しろ!税金かけろ!」
農業「せ、せやな・・・よくないな・・・」
 ↓
政府「マーガリン1ポンドにつき2セントのマーガリン税を導入するわ」
政府「あとマーガリンの卸と小売を認可制とし、認可料が徴収するわ」
乳製品業界「ざまあ!」
お客さん「マーガリンください」
 ↓
政府「マーガリンはバターと同じ値段で売ること、安売りしちゃダメ」
乳製品業界「ざまあ!」
お客さん「マーガリンください」
 ↓
マーガリン屋「これからは国産(アメリカ産)の植物油を使うよ!油売って!」
綿花農家「ありがてえwww」
大豆農家「ありがてえwww」
 ↓
農業「マーガリンいいやつだったわ 誤解してたわ」
政府「酪農は大事だけど、もうマーガリン差別をやめざるをえないわ」
乳製品業界「・・・」
 ↓
医者「正直、バターは心臓ぶっ壊す毒です。マーガリンのほうがマシ。」
乳製品業界「・・・」
 ↓
医者「トランス脂肪酸っていうのもある」
乳製品業界「っしゃああああああああマーガリンは毒!マーガリンは毒!プラスチック!」
 ↓
マーガリン屋「製法変えてトランス脂肪酸減らしたよ」
お客さん「マーガリンください」

を思い出したことと、

 たとえて言えば、「ヤクルト」のような乳酸菌飲料を造ると言って、その実、納豆菌でドリンクを造っているような話ですから、所詮ビールではなく、別ものができて当然という話にしかならない。

この文章を読んで、ヤクルトさん提供のサワーエール(乳酸菌発酵のビール)を期待してしまったことですね。(※一般的なビール酵母以外で醸造してもビールと呼んだりするんです)

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