自分の気持ちのあげ方

東京で会社員をしていた6年の間、私の沈みがちな気分の解消法は、『髪を切る』ことだった。

落ち込んだときは、美容院の予約を入れた。
大学生の頃から同じ美容師さんに切ってもらっていて(今でも日本に帰国すると、彼に髪を切ってもらう)「バッサリやっていいから、かっこよくしてね」とほぼお任せ。
いつもカットばかりしていたので、私の髪は伸びる間がなく、いつもショートヘアだった。

髪を切ると、気分が軽やかになって、元気になった。

でも、ネパールに移住してからは、あまり髪を切らなくなった。
今でこそネパールでも都市部では、肩より短い髪の女性もパラパラ見かけるようになったが、移住した当初、短い髪の女性を見ることはほぼなかった。
腰に届きそうな長い髪を、後ろでひとつに束ねる髪型が、一般的な大人の女性の髪型で、ショートカットの私は、会う人会う人に「なぜ髪を伸ばさないのか」と非難めいたことを言われた。
それが面倒だったのと、ショートカット慣れしていないネパール美容師に髪を切ってもらう気がしなかったので、なんとなくだらだらと伸ばしていた。

だって、気分をあげたくて髪を切るのに、変な髪型になったら、気分が上がるどころか、下がりまくりだもんね。

そして、髪を切るのは、日本に一時帰国したときの楽しみになった。

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しかし、そのひそかな楽しみも、コロナ禍で叶わず、3月から”おうちこもり生活”が続いている。
なるべくストレスを溜めないように気をつけているが、気分を上げることが難しい。

で、思ったのだ。
じゃ、自分で切るかってね。

数年前から20年ぶりに前髪を作るようになって、前髪だけはちょこちょこ切ってはいたが、横や後の髪はさすがに自分では手を出さずにいた。が、あまりにも中途半ばな長さになっていたし、どうも気分が乗らない日々が続いていたので、えいやっと自分で無理やり切ってみる。

幸い、私の髪は、猫っ毛で、毛先はあちこちに跳ねるため、真っ直ぐに切れなくても多少のことならごまかせる。
鏡を見ながらぶちぶちと切ること20分。
後ろ姿は自分で見えないので、どうなっているかあまり気にしないようにした。

鏡の中のちょと軽くなったテキトウボブに一応満足!
あ〜、やっぱり髪を切ると気持ちが軽くなるな〜〜〜!!!

でも、それってなんでだろうね。

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ネパールでは、霊的なお仕事をする女性は決して髪を切らないと言う。髪には霊的なパワーが宿るからなんだとか。
また、ネパールでブラックマジックをかけるときには、かけたい相手の髪の毛を用いることもあるらしい。髪はその人のエネルギーが宿っていると思われていて、髪の毛を使うと強力に黒魔術をかけることができるのだそうだ。
だから、ネパールの女性はクシで髪をといたあと、不用意に髪を捨てたりしない。黒魔術をかける道具に使われないための方法は、抜けた髪に息(ツバ)を吐きかけてから捨てること。ネパールでは、ツバは穢れているものとして扱われ、穢れてしまった髪の毛は呪いには使用できないらしい。

これらの話の真偽のほどはわからないけれど、もし自分のエネルギーが髪に宿るとするならば、気分が落ち込んでいる時ってのは、マイナスエネルギーが髪にも溜まっているということになり、髪を切ることでマイナスエネルギーを切り捨てることになるのかもしれない。

ま、単純に、私はショートヘアが好きで、髪型が決まると気分が上がるだけの話なのかもしれんけどね。

とりあえずしばらくは、セルフカットテキトウボブで、窮屈な束縛の多い時間を乗り切るぞ!


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【text by Chikako from Nepal 】

宮本ちか子 瀬戸内海の島で海に囲まれて育つも、なぜか海のないヒマラヤの国ネパール在住。夫も仕事も家財道具も全て捨て、ネパールに移住したのは30歳のとき。ポカラで15年ホテルを経営するが諸々あって、泣く泣くホテルを売却。現在はフリーランスライター、タマラエネルギーワーク、仕入コーディネイト等々。バツイチで結婚は2回、娘が1人、ネパール人配偶者はアーユルヴェーダの治療師。「刺身が食いたい」とつぶやく回数が最近さらに増えてきたアラフィフである。

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