女性の性的抑圧は誰によって作られているのか?

「女性なんだからおとしやかでいなさい」「女性は女性らしい格好でないと」「女性が××すべきではない」などの所謂「女性らしくしなさい」的なフレーズは、この令和日本においては完全に時代錯誤かつ差別的な発言として認知されているだろう。それにも関わらず、インターネットでは日々このような「らしさの押し付け?」に悩む女性が後を絶たず、定期的に被害報告や啓発がバズることもある。そのような被害報告や啓発の中でよく言われるのは「そのような規範は男性が女性を支配しようとしたり、女性を性的モノ化(人格を見ずに性的な魅力のみに焦点を当てる事)する事や、その他の女性蔑視意識により生じるものである」という説明だ。実際に男性が望む/望まざる、意識する/意識しないにも関わらず「男女つがいとなって種を残す(男女互いに必要としあう)」という性別の仕組み上、上記言論の正否とは別に男性の存在がこれらの意識形成の1因を担ってる事は事実だろう。

しかしながら、このような言説では往々にして「女性もまた存在自体が男性への働きかけとなる(男性も女性を必要とするので)」「その規範は本当に男性側の意識が主因であり、女性側は全く因子を有さないのか?」という視点が抜け落ちがちであるように思う。雑に言えば、このような議論は大体が「女性は1方的に男性に(性別)規範を押し付けられる側の存在である。逆はない」を前提としているのだ。

結論から言えば上記の前提は論外である。わざわざ研究事例などをあげるまでもなく「女性にモテようと必死になる男性」の姿は至るところで見る事が出来るし、また悪口としても「モテないでしょw」「そんなんだからモテないんだよ」というのも至るところで聞く事が出来る。当然ながら男性がモテようと必死になったり、モテないでしょwが悪口として機能するのは、女性側が男性側に対して「性的魅力」という強大なパワーを持ってある種強権的に影響力を行使出来るからに他ならない。そして先進国において、性的魅力には著しい格差がある。

tinderの「いいね」を分析したところ、男性の下位80%は女性の下位22%にも“いいね”するが、女性の上位78%は男性の上位20%しか“いいね”しない事が分かったという。また男性は女性の6.2倍頻繁に“いいね”するが、この魅力格差により平均的男性がマッチする確率は0.87%になるもよう。

https://twitter.com/rei10830349/status/1156824567869927424

つまり人間には「男女つがいとなって種を残す」性質があるが、現代の先進国においては男性が「求める側」であり、女性が「求められる側」なのである。素直に考えた場合、1般的には「求められる側」は決定権を有する優位にあり、「求める側」は決定権を有さず劣位に置かれているが故に求められる側に対して忖度したり迎合したりせざるを得ないだろう。例えば就活が圧倒的な買い手市場であれば、就活生は企業の「こんな人材を求めてます。条件は××です」という姿勢に合わせざるを得ないし、企業は就活生の足元を見る形で自分の意を押し通しやすくなるだろう。そして現代先進国の状況下において、男性は本当に「女性を求める側」として強固な影響力を行使する事が出来るだろうか?(勿論、全く行使出来ないというわけではないだろうが)

結論から言えば、女性に対する性的規範を作り出し、またそれを押し付けるのは女性である。正確には「女性は女性が抜け駆け?しないように圧力をかけ、また逸脱者に苛烈な制裁を課す」性質があるが、その圧力や制裁が性的規範の形をとることもあるのだ。

例えば「女性はおしとやかでいなさい」という規範に関して、女性は「おしとやかではない女性」に対して男性以上に苛烈な攻撃を加える傾向がある事が示唆されている。

Vrangalovaは、性的に自由な女性に対する個人の否定的な見方のモデレーターを調べるための研究を行い、宗教規範の影響を取り除く為に「信心深くない」と述べた大学生のグループ(N = 758、75%女性)に、彼らが望ましいと認めた人格特性に関する匿名の調査を完了するように求めた。すると女性は性的に自由な女性に対して、外向性を除くあらゆる点で貞潔な女性よりも人格を否定的に見て、また能力も劣っていると評価した。1方で男性は、性的に自由な女性に対して人格を否定的に見る傾向は認められなかった。
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0265407513487638

またTwitterにおいて、2019年にBrandwatchが10万件のミソジニーツィートを分析したところ、性的に××な女性に対する攻撃的なツィートの61.3%は女性によって作成されていた事が判明した。
https://www.brandwatch.com/blog/react-will-twitter-ever-free-misogynistic-abuse/

次に「女性は女性らしい格好でないと」に関して、女性は女性に対して上記の傾向と連動する形で「ファッションや化粧の制限ないし同調圧力」をかける事が示唆されている。

Arnockyは「経済的ゲームを行う」と異性愛の女子大学生を集め、3分間のビデオを撮影させ「パートナーになる実験参加者に相互に送信する」と言って、実際には「性的に着飾ってる女性」と「保守的に着飾ってる女性」の2パターンのビデオを用意し、それらをランダムに見せたうえでオンラインで経済的ゲームを行わせた。このゲームは最後に3つの応答オプションから選択してお金と交換できるポイントを獲得する必要があり、ここで参加者はパートナーからポイントを「盗む」ことを選択出来た。すると女性の参加者は「性的に着飾ってる女性」を「非人間化」し、ゲームにおける彼女への攻撃的な行動の増加を引き起こしたことを示した。またこれは、高レベルの性的競争力を持つ女性の間で最も顕著だったという。
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797619836106

このような話に対して、社会学などでは「女性が女性に対して性的攻撃に出るのは男性優位社会において、男性に庇護されるしかないからだ」「性的に表現された女性の描写の広まりはジェンダー不平等と女性抑圧文化の結果である」とフワッとした説明がなされがちだが、それに反するような定量性や客観性を持った研究は幾つもある。1例をあげると、TwitterやInstagramで公開されている68562枚の性的な自画像の集計パターンと、ジェンダー不平等に関する市郡国の指標との関連を調べたところ、研究者達はジェンダー不平等と特定の地域に投稿された性的な自画像の数に有意な関連を発見しなかったという。
https://www.pnas.org/content/115/35/8722

まとめると、現代先進国において女性の性的な表像は男性よりも女性によって作られていると言えるだろう。それなのに、何故女性側のこうした抑圧は指摘されず、男性側の主体的な働きかけの結果であると言われるのか?に対し、その答えを示唆するような研究がある。

女性は男性と比してゴシップを好む傾向にあるが、1説には男性の2.5倍ゴシップ話をしているというが、女性は「肉体的に魅力的な女性」及び「挑発的な服装」ないし「男性受けしそうな服装」の女性に対して、ゴシップによって間接的に攻撃を加える傾向が強い事が示唆されている。換言すれば「女性は自らの不平不満を第3者の評判や噂に仮託して表明する」傾向があるということだ。(所謂「貴方の××、みんなからちょっと良く思われてないみたいだよ」話法である)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022103117304195

それ故に「女性の性的抑圧誰によって作られているのか?」の答えに関しては、3つの軸があると言える。まず1つ目は男性側の働きかけ。2つ目は女性側の働きかけ。そして3つ目は「男性側の働きかけという体を装った女性側の働きかけ」である。実際「男性側の働きかけ」がどの程度の影響力を及ぼしているかは別として、「女性側の働きかけ」が無視されてる事と「男性側の働きかけという体を装った女性側の働きかけ」が広く訴えられる事により、男性側の働きかけが過剰に高く見積もられている傾向は確実にあるだろう。

その為、女性の性的抑圧は「男性側の1方的な働きかけ」とするだけでは決して無くなる事はないだろう。女性の性的抑圧に苦しんでいる人間が楽になる、あるいは生きやすくなる世の中を到来させる為には「女性側の働きかけ」「男性側の働きかけという体を装った女性側の働きかけ」についても言及が必要である事は間違いない。そのような社会が到来し、今苦しんでる人間達の苦痛が少しでも緩和されることを願い、記事を終わる事とする。




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コメント (1)
それ以上、いけない。
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