Bearwear(band)
バンドでタイに行ってライブをしてきた話|バンコク旅行記
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バンドでタイに行ってライブをしてきた話|バンコク旅行記

Bearwear(band)

1. タイから来たオファー

毎月5〜10本ぐらい東京近辺のライブハウスでライブをこなし、CDを出したりオーディションに応募したりなどしながら、少しでも上に行こうと切磋琢磨している、我々Bearwearはいわゆるインディーズと呼ばれるバンド。

日々漠然と、「めっちゃ売れたいなあ」とか「大きいフェス出たいなあ」とか「主題歌になりたいなあ」とかいろいろバンドマンなりに夢を追っている。俺らの場合はこれらに加えて、「海外でライブしたいなあ」っていう大きな夢が結成当初からあった。

楽曲は英詞だし、影響受けてるのは海外の音楽だし、海外でウケることをなんとなく目標としながら活動している。でも海外に行ってライブする方法なんてわからないし、なんとなく2年後とかに海外でライブできてればいいなとか考えてた。しかし前触れも無く急にこの夢が叶ってしまうこととなる。

4月、突然バンドのアドレスに届いた1件のメール。日本人の音楽関係者からの連絡であった。面識は無い方だったが、僕らの楽曲を前々から聞いていて気に入ってくているという。知り合いのバンコクのイベンターにBearwearを紹介したところ、向こうも気に入ってくれてタイでの出演をオファーしたいらしいので出ませんか?という内容のメールであった。

条件が良すぎてどう考えても詐欺メール。こんなうまい話あるわけないって、戸惑いながらも10回ぐらい慎重に読み直して、決して詐欺ではなく本当にタイに行けるんだってことを理解してメンバーに連絡。当たり前だがみんな乗り気で、行くことが決定した。

呼んでくれたイベンターもSEEN SCENE SPACEっていう過去に数々の日本のバンドをタイに招聘している信頼できるところだったので安心。

そこからはトントン拍子で話が進み、6/15日にタイ・バンコクで開催される『POW! FEST』に出演することに。ライブの前日に到着してライブの翌日に帰る2泊3日のタイ行きツアーが決まった。

普段は下北沢とか渋谷ばっか書かれてるライブ予定表に「タイ・バンコク」って書き込む違和感。それだけでなんかすごい人になった気分で高揚していた。「海外でライブするんだぜ」って友達に自慢したり、「お客さん全然いなかったらどうしよう」とか一人で夜考えたり。

で、なんやかんだあっという間に二ヶ月が過ぎて、いよいよ出発前。パスポート申請したり、普段より長めに演奏するために練習したり、楽器を飛行機に積むために準備したりでかなりドタバタしていた。慣れてない感がすごい。

2. タイ到着

いよいよ出発。6時間飛行機に乗って、タイ・バンコクに到着。現地のスタッフがBearwearと書かれた紙を持ってゲートで出迎えてくれた。

そこからがもうすごい。丁寧な送迎、綺麗なホテル、連れてってくれる美味いタイ料理屋。海外の人気スターが来日した時の待遇だ

俺らは普段日本に来てくれる海外のアーティストを「外タレ」って呼んでありがたがってるけど、自分たちが今はその「外タレ」側なんだよなあって変に納得。でもそれにしても俺ら規模のバンドじゃ信じられないぐらい全て用意してくれていることに感動。

ボロいゲストハウスみたいなところ想像してたし、飯代ぐらいは自分たちで払うのかと思ってた。想像以上の贅沢すぎる歓迎を受けて、「こんだけやってくれたんだから明日は俺ら呼んだこと後悔させないようにすごいライブしなきゃだな」ってみんなで気合い入れた。「食費とか宿代以外にも5人分の飛行機代で15万円も払ってもらってるからね、20万円ぐらいの価値あるライブしなきゃ割に合わないよ」って。

次の日まで自由行動だったので、その晩は有名な夜のカオサン通りに繰り出した。タイに到着してからひたすらビール飲んでる。今のところ完全にただの旅行だ。

さっきまでの綺麗なタイとは打って変わり、カオサン通りではカルチャーショックの連続。外は蒸し暑くて歩いてるだけで汗びっしょり。タクシーの初乗り相場は100円。と思ったらさっそく乗ったタクシーでボッタクられる。交通ルールめちゃくちゃ。なんかハエいっぱい飛んでるし空気が臭う。そこら中に屋台。いろんな店から爆音で聞こえてくる安っぽいEDM。トイレでトイレットペーパー流しちゃダメ。水道水飲めない。オバサンのマッサージ師が乳首をいじってくる。

噂には聞いていたが、物価の安さにもめちゃくちゃ驚き。レッドブル40円、Tシャツ300円、マッサージ1時間500円。完全に富豪になった気分。金使うことに躊躇しなくなる。

とにかく安いから移動は全部タクシー呼ぶ。なんでこんなに安いんだろうか。乗りながらタイのタクシー事情を調べると、どうやらタイでは運転手がローン組んで車をタクシー会社から買って、それで個人業でタクシー運転手をやるらしい。タクシー会社は絶対損しない。運転手だけ必死にローン返済しながら厳しい生活を送る。格差の広がりやすい社会構図らしい。あんまそういうの詳しくないけど。

3. POW! FEST 当日

翌日、ライブ前は会場でサウンドチェック。時間通りに会場に向かうと、すでにスケジュールより30分ぐらい押してるとのこと。ガチガチのスケジュールだけど大丈夫なのかな?と少し心配になる。

音響やステージスタッフ達も日本と比べると手際が悪すぎて笑ってしまう。そんなんじゃ絶対時間通りに終わらないよ!って。そもそも今夜の終演予定時間は夜中12:00。でもよく考えたらこの国はタクシー文化だから、終電って概念が無いから終わる時間気にしないでいいのか

会場のスタッフもだが、ひとつ思ったのはタイは店員がみんな超ユルい。アメリカのてきとうで無愛想な店員とはまた違うタイプ。タイは働いてる人たちがみんなユルくて楽しそう。

店員同士でちょっかいだして遊んでたり、飯食ったり携帯見ながら接客したり。ゲームセンターでバイク乗るゲームをやってたら店員に勝負挑まれたのは笑った。

日中は街に出て遊びつくして、また夕方会場に戻るとすでに現地のバンドの演奏が始まっていた。

続々とでてくるタイのゆるいインディ/ドリームポップバンドたち。ここに来るまで名前も知らなかったバンドだがどれもかなり良質である。 

良質と言っても、そんなに音楽的に高度で複雑なサウンドプロダクションが施されているわけではない。

でも、「生のギターサウンド本来の良さを引き出した隙間のあるフレージング」、「自然に体が揺れるローファイなビート」、「エンターテイメントとしてのキャッチーさを優先しすぎないことで生み出される心地の良いボーカルワーク」だったり、生理的に気持ち良いって感じるサウンドが共通してどのバンドにもあった。自由や心地よさが音楽に表れてる。

欧米や日本の音楽の語法をうまく取り入れつつ、彼らの生活圏を表す湿度とリアリティのある音が両立しているような。

聴き馴染みのある音に惹きつけられるけど、同時に、日々東京の満員電車の中で疲弊している俺らの生活圏では感じることができない新鮮な空気も体感できる。

これが欧米諸国や日本のメディア、リスナーがアジアの自由な音楽に惹かれる理由か。

世界中の各音楽メディアが「アジアンインディミュージック」という括りで韓国や中国、東南アジアから生まれる音楽に今注目しているのも納得。

お客さんもビール片手に揺れたり踊ったり会場全体が楽しい雰囲気に包まれ始める。東南アジアの音楽はこれまで聞いたことはあったけど現地でライブを見るのは初めて。会場の空気感も相まって、「これがタイの音楽かあ」って全身で体感した。

4. Bearwear初の海外ライブ

そしていよいよ俺らの出番前。

タイはバンドの準備中に座って待つ文化があるらしく、さっきまで楽しそうに踊っていたお客さんたちがみんなフロアで座って駄弁っているのも不思議な光景だった。細かいことだがステージ袖にお客さんが自由に出入りしているのも驚いた。

緊張のせいで小さな環境の違いも気になってしまう。本番前までいろいろな不安要素が頭を駆け巡っていたが、今思えば要らん心配だった。

ステージ上がった瞬間全て吹っ飛ぶ。俺らが出てくると同時にあがる大きな歓声。カタコトの日本語でヤジを飛ばしてくる子も。想像を遥かに超える大歓迎。

音すら出してないのにお客さんから歓迎される経験なんて今まで経験したことなく、お客さんの元気なエネルギーに圧倒されてしまった。

メンバー同士で目を見合わせて苦笑い。普段はやらないけどとりあえず自分たちを奮い立たせるためにビールみんな持って乾杯。

演奏を始めるとそのお客さんの歓声も一気に気持ちよく感じる。1、2列目には歌詞を知っていて歌っている人も。自分以外の歌声が帰ってくることに本当に感動した。しかも異国の地で。最初は自分の声がディレイで跳ね返って聞こえてるだけかと思った。

ライブ途中のMCで本番前に用意したタイ語のカンペを読み上げて挨拶したら大ウケ。何言っても盛り上がる確変状態。これは気持ちいい。俺も海外のアーティストが来日したときに拙いカタコト日本語覚えて喋ってくれるのは大好きだから気持ちはよく分かる。

そして無事演奏終了。演奏終了後もしばらく鳴り止まない拍手と歓声。どんな顔すればいいかもわからずそそくさとステージを後にしてしまった。そこだけもう一回やり直したい。歓声浴びながらセンキューって笑顔で手振って余韻噛み締めながらステージ降りたかった。

ステージ降りてからも写真とかサイン求められて気分は完全に人気スター。サインなんてしたことないからその場でそれっぽいの考えた。

純粋なお客さん以外にも、見に来てた現地の若いバンドマン達と交流できたのも貴重な体験だった。Title FightとかジザメリのバンT着た、俺達と同い年ぐらいの人が「ライブ超良かったよ!俺らはシューゲイザーバンドやってるんだ!Spotifyにあるから聞いてみてよ!」ってフランクに話しかけてくる感じ。もっとゆっくり話してタイのローカルバンドシーンについて聞きたかったな。

本番前の不安はとっくに忘れ、想像を超えるお客さんの反応の良さにメンバー全員笑顔。「やばいね」「売れてるバンドってこういう気分なんだろうな」「タイのお客さんノリよすぎ」「一生タイでライブしたいわ」「日本で次ライブしたら落ち込みそう」「日本でもタイ語でMCすればウケないかな」なんてみんなでキャッキャとハシャいだ。海越えた場所に住んでる人たちが俺らの曲で喜んでくれるってめちゃくちゃ嬉しいことだもん。

心身ともにヘトヘトだったが、Bearwear初海外公演が無事成功したことに安堵。

5. 再びタイの夜の街へ フアイクアン

公演終了後はメンバーも半分はホテルに帰って爆睡。この時点で夜中1:30。

俺含めて残った3人だけ、どうしてもタイマッサージを受けに行きたいってことで、24時間営業のマッサージ屋を探してタクシーで向かう。エロいマッサージじゃなくて健全なやつ。披露たまりすぎて、本当にちゃんとマッサージ受けたかった。

ネットで評判の良いマッサージ屋を見つけて、名前も聞いたことない街へ向かうことに。

結論から言うとこの「フアイクアン」という街に踏み込んだことで、これまで楽しかったタイの印象が180度変わる。

マッサージは超気持ちよかった。でも店員が誰も英語を喋れない。昨日行ったカオサン通りのマッサージ屋は英語通じた。観光地じゃない場所に行くと英語喋れる人がいなくなるんだってことに気づく。言葉が一切通じないことってかなり恐怖。

でもマッサージ受けて身体も楽になったしなんかこのまま帰るのはもったいないよねってことで、ちょっとだけその街をプラプラしてみることに。小さなナイトマーケットっぽい屋台の並びが見えたので向かってみた。

ちょっと近寄っただけで雰囲気が昨日行ったカオサン通りのナイトマーケットととは違うことがわかる。カオサン通りではキャッチや押し売りが凄すぎて前に進めないぐらいだった。一方このフアイクアンのナイトマーケットでは日本人の俺らに誰も話しかけてこない。目も合わせない。たまにすれ違うニューハーフに肩叩かれて「ハァ〜イ」って挨拶されたぐらい。

路地を一個曲がればボロボロの住宅街。近辺の住民が路上にテーブル出して飲んでたり、ボロボロの犬が寝てたり、足のない物乞いが笑いながら缶を振ってこっちを見てたり。すれ違うと急に追いかけてくる人とかもいて早足で逃げる。

早めに出た方がいいなと本能的に感じて、タクシー捕まえられそうな大通りへと向かう。命の危険感じて背後気にしながら歩くって普段はなかなかできない経験だ。

終始怪しげなガラの悪い雰囲気漂う、このフアイクアンナイトマーケットは、ローカルな庶民向けのディープな場所だったらしい。

無事タクシーを捕まえて、帰りに3人で色々思うことを話した。

「あの足の無い物乞いの笑顔が頭から離れない」

「だいぶなリアルを見たな」

「日本平和すぎ」

「昨日まで見てきたバンコクはタイの綺麗な部分だけだったんだな」

「チケット代1000バーツする俺らのライブに来る人もタイの中ではかなり裕福なひとたちなんだ」

「さらに郊外に行ったらどうなってるんだろう」

「さっきの街に住んでる人たちに俺らの音楽なんて聴かせても響かないんだろうな」

「音楽で癒やしたり救ったりできないのかな」

「そこに住んだこともないリアルを知らない人が何か歌ってあげてもムカつくだけでしょ」

「音楽って価値観同じような人同士でしか響かないのかね」

「つらい気分になってきた」

「でもあの街にいったのは正解だった。見なかったら何も知らないままだったし」

なんて勝手な想像で語って、何も知らないのにちょっと知った気になってる自分にまたちょっと落ち込んで、ホテル戻ってからもしばらく3人で寝ないで悶々としていた。

6. 最終日〜帰国

翌日はゲリラ豪雨。タイの天気はよく変わるらしい。天気予報が3日間一度も当てにならなかった。笑えないぐらいの土砂降りだったけど、押し売りされた安いポンチョが可愛くてちょっと元気を取り戻す。

帰国する前にタイっぽいところ行っておこうってことで、暁の寺(ワット・アルン)と呼ばれる寺院に行ってきた。惹き込まれるでかい建造物見てさらにまた自分のちっぽけさを知る。

昨晩のこともあり、様々な考えが脳内で渦巻いていて、タイの仏教のデザインや輪廻転生の教えとかに触れるとかなり心にくるものがあった。

仏教なんて興味もったこといままでなかったのに。とにかくもっと世界のいろんなものを知って吸収したい欲がすごい高まっている。

もともと俺らはいっぱい音楽聞いたり映画見たり記事読んだり、インプットするのが大好きな人間たちで、スマホを使って片っ端から新しい情報を漁るのは日課になっている。

でも最近は毎秒毎秒得る情報が多すぎて、ひとつひとつをちゃんと吸収できているのかわからないままひたすら流れる情報を浴び続けてるマンネリ状態だった。

でも今回タイにライブをしにきて滞在した3日間で自分の中にインプットされたことって、同じインプットでも全く別物のように感じる。新しい場所で実際に自分の目で見て経験するってこんなにも、一個一個の得る知識に毎度衝撃と喜びを感じれるんだって驚いてる

タイのことだってこの3日間じゃ全然知りつくせてない。またすぐにでもライブしに来たい。違う別の国からも出演オファーが来ることも願っている。

ちょっと前までは海外でライブをすることが目標だったはずなのに、海外でライブをする楽しさと奥深さを知ってしまうと、1回きりなんかじゃ足りない。もっと海外にライブをしに行きたいし、各地の見たことないお客さんとか見たことない街を見てみたい、新しい景色もっと見たいってワクワクしてる。絶対次行く国でも観光地だけじゃなくてローカルな街に足を踏み入れたいし、なんならそういう各国のローカルな街でもライブしまくりたい。

いいライブをし続けて、いい曲を作り続ければ色んな国から今後も声がかかるかもしれないっていうのは、ミュージシャンならではの夢のある世界の歩き方だし、ものすごいモチベーションに繋がる。ワールドツアーとかもしてみたい。

バックパッカーってこういう心境なんだろうな。ただの東京のバンドマンがたった一回の海外公演で完全に心は旅人になってしまったのであった。

POW! FESTプレイリスト


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Tokyo Indie rock/Emo band東京で活動するインディエモバンドBearwear。Kazma(作詞・ボーカル)、Kou(作曲・ベース)