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契約書や利用規約などの作成代行は誰に頼むべき?という話。

私は契約書や利用規約などの作成をメイン業務としていますが、多くのお客様から次のようなことを聞かれます。

「契約書や利用規約の作成って、行政書士にも依頼できるの?弁護士とは違うの?」

そこで、この疑問について、行政書士である私なりの見解を書き殴ってみようと思います。

そもそも行政書士は契約書などの作成を代行できるのか?

これは「Yes」です。

その根拠は、行政書士法第1条の2第1項および第1条の3第1項で規定されており、

第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする

第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一~三 (省略)
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること
(※太字は筆者によるもの)

契約書、示談書、告発状、定款などは「権利義務に関する書類」に該当するため、報酬を得てその作成を行うことができますし、またその作成の相談に応ずることもできます

(※他の士業でも、その業務範囲に付随する契約書であれば作成できます。例えば不動産登記が関係する遺産分割協議書を司法書士が作成する、など。)

弁護士へ依頼するメリット

法的な文書の作成と言えば、やはり弁護士がその中心となることは間違いありません。

そもそも、契約書などの文書は、単に約束事、同意事項を記しただけのものではなく、「○○したら△△する」というような、「要件(要件事実)」と「効果(法律効果)」がハッキリ明確となっていることが重要です。

これが曖昧ですと、見解の相違やトラブルなどが発生したときに、それに関係する契約書が解決の指針となることができません。
そればかりか、自身に有利な法律効果を得るためにはその根拠となる要件事実を主張する必要がありますが、要件や効果が曖昧であったり自身に不利な規定となっていた場合は、自身にとって何のメリットもありません。

弁護士であれば、司法修習において研修を受けますし、何より実務において必要不可欠なものであるため、要件と効果を常に意識し、常に鍛えられている状態であると思います。

それに対し、行政書士は原則的にこういった研修を受けません。
また、行政書士の業務の中心は許認可(建設業や古物商など)であり、許認可を行う官公署の指示に従って、あるいは指定された基準を満たすための必要書類などを準備することが主なものとなるため、許認可系実務においては契約書作成に求められる水準での要件や効果について意識する場面はほぼ無いと考えられます。

そのため、許認可に強い行政書士事務所であっても、契約書作成も安心して任せられるかというと、なかなか難しいところではないでしょうか。
スポーツで言えば、良い選手イコール良い監督とは言えない、という話に近いと思います。

弁護士なら”代理”まで依頼できる安心感

弁護士に依頼する大きなメリットとして、契約書の作成だけでなく、契約交渉までも依頼できる点が挙げられます。

また、万が一紛争に発展したような場合においても、引き続き依頼ができる可能性が高いという点もメリットとして挙げられます。
(もちろん、契約交渉や紛争解決、訴訟手続については別途費用が必要になると思いますが。)

訴訟を行う段階ではなくても、内容証明郵便を弁護士名で送達するだけでも効果がある場合もあります。

行政書士も内容証明郵便を作成することはできますが、紛争性の高い事案については弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止) との関係で違法行為となるおそれもあります。
なお、行政書士は契約交渉などの代理行為はできません。

法的観点だけではダメ!必要なのは「ビジネス視点」

以上を総合しますと、職種・資格保有者としてどちらに依頼すべきか率直に言えば、もちろん弁護士ということになります。

ただ、上記メリットに見合う分だけの高額の報酬が必要となる場合が一般的です。
利用料無料のウェブサービスにおける利用規約作成など、あまりお金を掛けられない場合は躊躇してしまうのもよくわかります。

また、契約書を作成するときは法律や法的効果だけを考えていれば良いのではありません。

契約書には契約当事者のビジネスモデルそのものが記載されます。
これは決して法律関係だけの問題ではありません
契約書や利用規約というと、”法的に云々”という点に思考が偏りがちですが、それ以前にビジネスにおける約束事であるという視点を忘れてはなりません。

弁護士であっても、”アジャイル開発”を知らない人が効果的なシステム制作業務委託契約書を作成できるとは限りません。
ウェブ制作分野でも、近年の開発手法を考えますと、従来からの請負契約スキームに依存した契約書やその考え方に固執していては適切な契約書を作成することは難しいはずです。

行政書士であっても、常に法律文書作成を勉強し意識している人もいます。私は弁護士ではないため、特にこの点は重視して日頃から勉強を重ねています。

つまり、弁護士であっても、行政書士であっても、結局は資格云々ではなく、作成しようとしている契約分野に詳しいか否かがとても重要なのではないかと考えています。

その分野に詳しい弁護士なら良いでしょうし、その分野に詳しい行政書士でも、法律文書の作成に長けているのであれば、安心して依頼してみてはいかがでしょうか。

ちなみに、その依頼先の候補として、弊事務所も含めていただけますと大変嬉しいです。
特にウェブ分野(ウェブ制作、ウェブサービス)の契約書や利用規約作成、著作権関連を専門としていますので、作成を検討されている方、誰かに依頼したいと考えている方はぜひお問い合わせ(お問い合わせフォーム)ください。

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