オランダ備忘録(1)到着まで
初めての海外滞在として、オランダに半年いたのが2016年夏から2017年明けるまで。
生きてきた中で、今までで一番幸せだった、といっても過言ではないほどの時期だった。
なんでそんなに幸福感を感じていたのかは、たぶん異文化との出会いの初期段階の陶酔効果というものもあるんだとは思うけど。
けどなんだか、すごく、自由になったような、世界が広がったような感じがしたのは事実である。
今までも、ちょこちょこ書いてはいたけど、忘れ去ってしまう前に、少し備忘録として記しておこうかと思い。
Youはなぜオランダに?
というわけで、そもそもなぜオランダに行ったのか。
もともと、交換留学は、学部時代から憧れつつも、いや、英語喋れんし、なんか怖いしと、けっきょく具体的に計画しないままで人生を過ごしていたものである。
けれど30代になってからやっぱり未知の土地への好奇心が再燃し、英語もほんとに少しずつだが勉強を続けてたので、人生後悔するよりは、行っとこう!と思い、だいぶ遅咲きながら海外へ行こうと決心。
オランダを選んだ理由はわれながら「なんとなくフィーリング」だった。
もちろん英語で授業が受けられるポリグロットな国ということも大きい。
後は前の会社の、ちょっと市川実日子似の先輩が、オランダに滞在経験があって。そこで出会った彼氏と結婚してたのだが、オランダは楽しかったと聞いていて風車やチューリップの写った写真を見せてもらったような、もらわなかったような。
あとその会社では、オランダから研修生が来てた。日本人の父とオランダ人の母を持つ女子で、前髪ぱっつん、黒髪色白、素直、体格わりとよくて中性的。
なんとなく自分とフィーリングが合う感じの子だった。
まあ、そんなことからぼんやりとオランダに好印象があったのだろう。
あと、積極的な移民受け入れ、大麻合法、などおおらかというのか、寛容な政治風土にも興味があった。
ただヨーロッパへの憧れとかが特にあったわけではない。
「どうせ同じ先進国だしなあ~」と思ってた。
自然の多い場所が好きなので、旅行とかなら、もうちょい違う場所に行こうと思ってた。
だから、ヨーロッパの面白さに自分がどっぷりハマってしまうとは予想してなかった。
行く直前に逡巡
で、無事に交換留学で行けることになったわけである。
けど、出発前にはかなり逡巡した。
というのも、当時はヨーロッパでテロが多発してたから。
トルコの空港で爆発があったり、ベルギーだったかでもイスラム過激派によるテロがあり。
オランダではまだなかったものの、当局は警戒レベルをあげていた。
死んだら困る。
てなわけで怖かった。
まあしかし、普通に考えてほんとにテロに遭遇してしまう確率は相当低い。
そんなわけで、悩んだけれども、空港がテロに襲われなさそうな曜日と時間を選んで、(旅客が少ない見込みとか、ラマダンの日程とかを考慮・・)
出発!
アブダビまわりの南航路である。
アブダビで途中下船、中東の神秘的なデザインの空間に圧倒されつつ待機。
ぜんぶで20時間以上かかって、アムステルダム空港はスキポールに到着。
それから電車で、大学のあるライデンに向かう。
トランクは、友達から、友達いうところの「サブカルトランク」を借りて持って行ってた。
黒くてフェイクの革張りで、V系バンド好きな友達の趣味である。荷物は最低限度、服は現地調達するつもりだったんで、半年滞在にしてはけっこう小さめ。
到着直後は、わりとビビっていた気がする。
それはそうだ。
まずテロにビビってたんだし、海外は日本と違って、ちょっと隙を見せると荷物を盗まれるという情報があったから。
電車の中では、ガタイのいい、横ストライプティーシャツ着たお兄さんの前の席が空いてたから、ここいいですか?と座らせてもらった。
しかし、私がぎこちなかったせいか、相手の笑顔も引きつっていた気がする(笑)
車窓はけっこうのどかで、草原、農場の建物、放牧された牛などが過ぎていく。
たいら、たいら、どこまでいっても平らな土地。
電車は二階建てで、日本の車両よりも大きくてごつい感じ。
それからライデン着だけど、学生寮に入れるのは翌日からだったから、予約してあったホテルに向かう。
道は全部煉瓦だたみの道。
トランクがガタガタ跳ねてたのはいうまでもない。
たぶんまだ割とビビっていたと思う。
おお、外国人がこんなにたくさんいるぞ!! 緊張する!(お前が外人だろという突っ込み)
まあ、駅から街を南にくだり、地図を見て右に曲がり・・・しかし迷った。
えーん、ホテルがどこかわからんよう・・・・。
とキョロキョロしていると、
金髪ロングの背の高いお姉さん(というかオランダ人はたいてい背が高い)
が「大丈夫?」と声をかけてきてくれた。ティーシャツにキュロットかなんか、ふわっとした長い髪。
そしてホテルまで案内してくれた。
煉瓦の路地を歩いていく。
ホテルは運河沿いで、そばに大きな昔ながらの風車が回っている。
女の子が水面の方に素足を垂らして、風車のそばに座っている。
運河に橋がかかっていて、人々が自転車で往来している。
テレビを付けるとオランダ語。
オランダの人達はなんかガタイがよくて戦士っぽい感じだな~と、出てくるキャスターとかを見て思った。
たまたま鼻筋や首が太い男性が出演してたせいだろう。
電車の中のお兄さんの印象もあったか。
長旅だったので、長く眠った。何を夕飯に食べたのかは覚えてない。
大きめのベッドにシャワーとトイレつき。
シャワールームは、大きなガラス板で部屋から仕切られている。
シャワーヘッドは日本の1.5倍くらいあり、随分高いところから水が落ちてくる。鏡も高い位置にあるから背伸びした。
朝起きて、引き揚げ窓から外を見ると、ああ別世界。
風車、運河、中世みたいな煉瓦造りの道、煉瓦造りの可愛い建物、
きらきら輝くアーチ窓、跳ね橋を渡っていく人々。
カモメの鳴く音、風車のきしみ、煉瓦を通っていく足音などが聞こえてくる。
なんだかおとぎ話のようだ・・・現実感がない・・・と思った。
この時はまだ、緊張しててそんなに感動した!とゆう感じでもなかった。
ただ、ああ、本当に来てしまったんだな・・・という思いだったか。
朝食はビュッフェスタイル。
ヨーグルトにシリアル、ベリーのミックスジュースなどが並んでいた。
ヨーグルトは大きなジャーに入ってるから、そこから取り分けるのかと思いきや、それが一人分だったのでだいぶ多い。
二つくらい離れた席にはイギリス?かどこからか来た老夫婦がいて、こっちを見て微笑んでいた。
――続く――
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