【研究】日本の政策におけるeスポーツ→知財戦略本部の議事録を見てみると(2018.8.8追記)

内閣が主導する知的財産戦略本部という政策会議がありますが、今年に入ってから、この中でもeスポーツが取りざたされるようになってきました。まず、こちらの委員を見てみましょう。

コンテンツ分野を取り扱う会合への出席者(16名)
石 川 和 子 (一社)日本動画協会理事長
日本アニメーション(株) 代表取締役社長
内 山 隆 青山学院大学総合文化政策学部教授
大 﨑 洋 吉本興業(株)代表取締役社長
岡 村 秀 樹 (一社)コンピュータエンターテインメント協会会長
セガホールディングス(株)代表取締役社長
川 上 量 生 カドカワ(株)代表取締役社長 【本部員】
木 田 幸 紀 日本放送協会専務理事
喜連川 優 国立情報学研究所所長、東京大学生産技術研究所教授
迫 本 淳 一 松竹(株)代表取締役社長 【本部員】
重 村 一 (株)ニッポン放送 代表取締役会長
瀬 尾 太 一 (一社)日本写真著作権協会常務理事
(公社)日本複製権センター代表理事
竹 宮 惠 子 漫画家、京都精華大学学長 【本部員】
◎ 中 村 伊知哉 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
野 間 省 伸 (株)講談社代表取締役社長
福 井 健 策 弁護士、骨董通り法律事務所
堀 義 貴 (株)ホリプロ 代表取締役社長
宮 島 香 澄 日本テレビ放送網(株)報道局解説委員

これは、知財戦略本部のうち、コンテンツについて特に議論する分科会のメンバーということになります(本部員、という表示があるのが、取りまとめを担当する会議のメンバーのようです。)。カドカワやセガといったゲームコンテンツよりの関係者もたくさんいますね。

ここでの議論は、「知的財産戦略ビジョン」という形でまとめられ、公表されていますが(上記HPからたどっていけば入手可能です)、今回は、ここでeスポーツが取り上げられた、第4回会合の議事録を見ていくことにしましょう(下記はタイトル未設定になっていますが、議事録へのリンクです。)。

そのまま転載するのも面白くありませんので、概要をざっとまとめるとともに、考察を加えてみます。なお、参考資料はこちら↓

■ 日本スポーツ連合副会長の浜村氏が参考人として、日本(及び世界)のeスポーツについて解説

2016年度の世界のゲームコンテンツ市場の売り上げは約9兆円。デジタル配信が9割近く(コピー対策?)となっている。

eスポーツの大会は大規模になってきているが、日本では遅れている。日本では、規制の問題があったと考えられている。とりわけ、刑法(賭博罪)、景品表示法、風俗営業法が問題になる。刑法と景品表示法は、消費者庁等との相談を経て、やり方をしっかり整理してきたことでクリアできてきている(これを明言している公表資料で信頼のあるソースは限られているので、結構貴重です)。JeSUのプロライセンス制度はそのための制度。(この部分の掘り下げは、追って研究・執筆させていただく予定です。)他方で、風俗営業法の規制は、なかなか正面からクリアになっていない。

■ 風営法の規制が結構厄介

この風俗営業法の規制というのがなかなかやっかいです。主に問題になる場面は2つあって、1つは、賞金制大会の実施。闘会議やRAGEのように、イベントホールを貸し切ってPCを設置し、ゲーム大会を行う場合でも、風俗営業法の基準に照らすと、「ゲームセンター」と同様に扱われてしまう(少なくとも形式的には該当してしまう)おそれがあります。もしこれに該当する場合、賞品・賞金を提供することは一切禁止されます。この点は、大会ごとに、個別に管轄警察署等に相談に行って解決(ほんとに解決できているのかは不明?)しているようなのですが、法律上乗り越えがたい壁になってしまっています。もう一つは、eスポーツカフェ問題です。中国でメジャーなPC房といった、PCが並べてあって、みんなでゲームを楽しめるような施設(ネカフェ風?)も、同様にゲームセンターとして扱われる可能性があります。そうすると、オフライン大会のようなものを開催するのが難しくなったり、営業時間に制限が生じたりします。下記のリンクツイートにもあるように、ネットカフェとしての条例規制も適用されると考えられます。


■ eスポーツビジネスのポイントは、放映権収入、スポンサーシップ収入

これはいわずもがなそうで、日本でもスポンサーシップは一般的になりつつありますが、eスポーツに関する放映権が収入になるというのは、まだまだ考えづらい状況ではあります。他方で、日テレでもeスポーツを取り上げる番組が新たに始まるなど、テレビのような大きなメディアで注目することが、重要な起爆剤になるといいなと感じます。

■ 野球でいう「カープ女子」のコンテンツのように、ノンゲーマー層からマネタイズできるようにしていくことが、ビジネスの発展に重要

資料を直接ご確認いただくとわかりやすいのですが、参考資料21頁にもあるように、①一般プレイヤーによるネット動画サービスの利用が活発化すると、アマチュアプレイヤーの中からスタープレイヤーが登場する。そのうえで、地上波のテレビ放送等より大きなメディアで取り上げられることにより、ゲームをプレイしないファン層が生まれてくると、マーケットの購買力が一気に高まるといった構図を描いています。

■ まとめ

政府の政策にも取り上げられるようなトピックは、こういった政府主導の会議で影響力のある人が重要な発言をすることも多いので、eスポーツに限らずこまめにチェックしてみることをお勧めします。

(2018.8.8 追記) ちょっと雑なまとめが多かったので、少しリンクを増やす等して分析を加えました。FPS

garnet




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?