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悶え_08/11

6:15  いつもより15分遅れて起床した。
動かなきゃと頭ではわかっているのに体が言うことを聞かなかった。
大きなベッドの左端でうずくまる。
昨日切ってしまった左肩といつもの如くみぞおちから痛みを発していた。

薬飲まなきゃ

そう思って隣に置かれた机の上にある薬の束とペットボトルの水を手をかけたが動こうとすればするほど痛みは増していく。
目の前がぐるぐると回って薬どころか水すらも喉に通らなくて口の中に入れた薬が溶けだした。
じわじわと押し寄せてくる苦味と吐き気
なぜぼくはこうなってしまったんだろう。
処方薬に頼らないと生きていけない体になってしまったんだろう。
どうしてあの時生きることを選んでしまったのだろう
死ねるチャンスは何度もあった
死ぬチャンスは何度もあったのに
生きることを選んでいた
今更選択肢を変えるだなんてゲームじゃないから無理に決まっている。
治療を受けなければ死ねていた時も
立ち上がらなければ溺死できていた時も
倒れていたら轢き殺されていた時も
なんやかんや全て生きる方向へ転んでいた。
そしてまた後悔するんだ。
「死ねたら良かった」って。
いまだって処方薬を飲まずに過ごしていたら毎日苦しくてもいつかは無事に死ねるはずだ。
でもそれをしないのは臆病だから。
もしくは、
…大切な人たちがいるから
でも、僕は本当に無理になったら何も言わずに姿を消すような薄情な人間だと思う。
「愛してるよ」って言って、消える自身がある。
ぼくは最低な非道い奴だよ。

夢を見たんだ
皆に嫌われて離れられる夢。
その時のぼくは泣いて縋ってた。
後に自殺したんだけどさ

嫌われるのを恐れて怯えながら笑ってるんだ
誰が見てるかわからないこんな場所でしか吐けない言葉達を並べて。
ある一定の人に嫌われる夢はよく見るよ
けど皆に嫌われる夢は久々で。
“僕は皆と生きてちゃダメなのかな”
そう思っちゃった。
実際わからない。
独りで生きていくのが正解なのか
人に縋りながらが正しいのか


そんなことを考えながら伏せた瞼を開けた時、お腹に衝撃が走った。
母親が態々起こしに来てくれたようだ。
その痛みが現実に引き込む縄のように感じた。
時計を見ると9:25。
大遅刻。
母親と叔母、従兄弟の母親に謝りえずきそうになりながらも無理やり体を動かした。
視界が歪むのを必死で繕いぐるぐるする何かを御手洗で流した。
洗面所の壁に倒れ込むように背中を預けぼんやりする。

身なり整えなきゃ
ご飯食べないと
薬飲まないと
笑わないと

なんかもうすべてどうだってよかった
未だに血が出る左腕
部屋着に染みた赤い血液
見るのが嫌で重ねられたタオルの中からお気に入りのタオルを引っ張り出し、そこに顔を埋めた。
柔軟剤の匂いに吐きそうになりながら息を吸う。
痛みに悶え、死にたくなる。
最早ルーティンだ。
誰がの足音や母親達の笑い声を小耳に挟みながらあの人たちへ向けた意識を絶った。

…どうせ今日も死ねないんだろうな。

そんなことを想いながら
薄らとお得意の笑みを浮かべて

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