【2019年8月2日掲載】Huawei Global DC Consultant Summit Report
Cloud&SDN研究所の加藤です。華為技術様(以下、敬称略)から招待いただき、2019年07月01日から07月04日まで Huawei Global DC Consultant Summit に参加しました。このイベントは華為技術主催の電源や空調などのデータセンタのファシリティと、それらを管理するネットワーク、そして全体の取り組みについてを公演や現地訪問を通して会社を知ってもらう為のイベントです。主にデータセンタの物理 (Layer 0-1) 寄りの内容が多いイベントでしたが、1社でファシリティ、通信インフラからユーザ端末まで全てをカバーできる企業の強みと、幅広くカバーができる地力を(思い)知る良い機会でした。今回の投稿では文化の違いとデータセンタ、最近の取り取り組みについて書きます。
About 文化 (not 技術的)
今回は日本からの深圳までの旅程は直行便ではなく、香港から送迎車にての入国をしました。直行便は本数がなく、また昼から活動する旅程を組めないという理由です。香港から深圳までは思ったよりも時間がかからなく、入国を含めて車で2時間ほどでした。その間、遠くから見た深圳の風景を見たり、モバイルキャリアや左車線の香港から右車線の深圳への道路の切り替わりなどを身近に体感することができました。
車窓を流れる建物で目立つ香港と深圳の高層ビル、いずれも高いビルの隣には必ずと言っていいほど同じ構造のビルが複数本立っていました。日本にはあまりない建築の特徴でしょう。単純に建物の高さと許容量の問題かもしれませんが、全く同じビルが隣に立つ様子は1個作るなら2個以上作ってしまう文化と高層ビルでも賄いきれないスペース確保の需要をそこはかとなく感じます。
深圳の街中は予想よりも緑が多かったです。華為技術の担当さん曰く、公園や緑地は計画的で適切な置き方が決まっているそうです。街中の幹線道路は広く、高いビルがみっちり詰まっている訳でもなく見通しが良い街でした。街に面する道路は日本国内でよく見る車から自動運転の先駆けのメーカの車まで、沢山の台数が走り、交通からも街の活気を感じました。また情報用かは不明ですがパイプを埋める工事や、建物を作る、壊す工事を至る所で見かけました。深圳の街は今のどんどん開発が進んでいるようです。そして地価も依然として高騰しているとのことです。
賑やかであり、窮屈でもなく、過ごしやすい、そんな深圳の街でした。
About 華為技術
今回の訪問で私が初めて知ったことは、華為技術は創業当時 (1987年) は香港製PBXの代理販売業であったことです。その後、会社の成長とともにERPの重要性が認識され、そしてERPの規模の拡大によりデータセンタを持つようになりました。ビジネスの拡大に伴い拡大しつづけるデータセンタに対して煩雑化するオペレーションから⾃分たちで⼯夫をし、配線の効率化や自動化を進めて行くことで、今のデータセンタのソリューション事業も行うようになったとのことです。もともと全く別なビジネスであったころで必要なものを自分たちの必要なものに合わせ物を用意しようとすると自社開発になったこと、そして、その研究結果が今の多岐にわたる事業の支えになっているとのことです。
華為技術は毎年売上の10%は研究開発に充て、研究施設も広く展開しています (後述)。研究を会社として評価していることと、研究する側もしっかり実績をしっかり積んで評価されているからこそ、今の地力があるように見えます。小規模ながら社内R&Dに所属する私としては、身につまされる思いでした。
About Data Center Tour
主目的のイベントは07月02日から03日の2日間、主に華為技術内外のスピーカーによる基調講演と、データセンタ・R&D施設の見学で構成されていました。参加者は100人以上の規模で開かれ、参加していたのは欧州系、中東系の自動車・データセンタコンサルタント会社で、日本からは当社を含むデータセンタを持っている企業2社でした。華為技術で初めて本国で開催するパートナー・コンサルタント向けのデータセンタイベントとのことでしたが、アテンドの徹底から見せていただいた華為技術の世界まで非常に充実したツアーとなりました。
– Keynote
深圳の本社から少し離れた Huawei Xiliu Beipo Village Base で最初に全体の挨拶と基調講演を受けました。公演内容は主に華為技術が考えるデータセンタの作り方や、その作り方の根拠となるIDC周りのリサーチ統計の話、そしてその鍵となるコンポーネントそれぞれの解説でした。鍵はモジュール化されたデータセンタファシリティ製品それぞれで、ラック、UPS、空調とそれらを統合管理する仕組みです。
モジュール化した製品群
電子機器だけではなくデータセンタ設備、ラックも一つのモジュール
バッテリ、ファン、空調、電源、センサのアクティブ監視
ファシリティ機器のネットワーク越しの監視とコントロールの実現
センサからの情報を収集してAIにての自動調整
データセンタ見学にてデモ
一つの操作に対し状況パラメタn*100相当の情報を使って自動コントロール
PUE (Power Usage Effective) を手動に比べ0.1落としている (1.5 -> 1.4) +人手を減らすことに成功し、自社設備については徐々に近代化を進めているそうです。
穿った見方をすると「すべて独自でやるならなんでもできるでしょう」とは思います。しかし身の回りで「やらない」、「できない」中途半端な状況のところ、例え独自でも「やってみせる」、「できている」ことは強いインパクトでした。やりたいことや、普段頭を悩めているところを実現して、表に出せている事にただただ驚くしかありません。
– Huawei Xiliu Beipo Village Base
Huawei Xiliu Beipo Village Base は深圳の都市部から離れた広大な土地を利用して研究施設を一つの村のように作っています。研究施設には約5000人の社員が務めているとのことです。(なお、当社の研究員は所長を含めて3名です) 近所には居住区もあり、全体で生活が済んでしまうくらいの規模でした。Villageとありますがテーマパークに入ったと錯覚してしまうような別世界がそこにはありました。今回のデータセンタツアーの見どころの一つといえる場所です。
デザインが洋風に統一された建物が並び、たくさんの緑があり、お店があり、列車が敷地内を走っていました。ラベルや看板で中文を見えない限り今、自分が中国にいることを忘れてしまうくらいの景観がそこにはがありました。今の所はネットワーク周りの設備の研究の一部がここで、深圳内の本社近隣の研究設備を移動中とのことで、村の中の路線も拡張予定とのことです。
-Container Data center
「コンテナデータセンタ」、この言葉自体は2010年より少し前から出てき始めたデータセンタの一つの形を指します。通常データセンタは建設を含めて竣工までの時間に年単位かかるところで、データセンタに必要なコンピュータ、電源、空調などの一式をコンテナに詰めて並べるおよび重ねることで、半年〜1年内にデータセンタを展開するための技術になります。
華為技術はコンテナデータセンタにも取り組んでいます。Uptime Institute が定めるデータセンタ基準のうち、モジュラ型データセンタ用基準 Tier-Ready のパートナーとしても活動しています。華為技術のコンテナ型データセンタは本社と同じく深圳にあり、今回は現地ではセンタの外観から内部まで見せていただきました。
これまでの私の知見ではコンテナ型は全てが詰まったコンテナを1個だけ置いてエッジ側の拠点にするか、詰まったコンテナを広い場所に展開し、積み上げていること、そしてそれぞれのコンテナは独立して動いているイメージでした。
今回、見学させていただいたコンテナ型データセンタもコンテナにデータセンタのファシリティを詰め込んで置いていくスタイルです。しかし、私が想像していたものとは少し異なる設計思想で作られていました。
華為技術のコンテナは、まず前提としてそれぞれのコンテナの内部は上下のフリーアクセスを用意して空気を通せるような設計で作られています。それぞれのコンテナはTier-Readyの認証を受けていて、信頼性も担保されています。これらのコンテナを敷き詰め、それぞれが面している側板を外すことで、上下のフリーアクセスを持つ一つのコロケーション用空間を作ることが出来ます。すべてを纏めたコンテナ一つずつ置いていくのではなく、コンテナを敷き詰めて認証が通ったデータセンタを作ってしまうのです。
そのコンテナを敷き詰めてできた空間に、モジュール化されたクローズドのラック一式(アイルキャッピングされているラック一式にはラック型の空調、ラック型UPS、サーバ)を置いて行くことで、見事に一つのコロケーション室を実現しています。撮影許可がなく見た目を共有できないのが残念ですが、出来上がったコンテナ型データセンタは私たちがよく知る普通のデータセンタの1室だったのです。
そして、その1室と同じような形でできた部屋を重ねることで複数フロアのデータセンタを作ることも出来ます。今回見たセンタは、電源ルーム、コロケーションルーム、そしてそれらを繋ぐ通路や階段、エレベエータもコンテナを積んで作られています。(見た目のため別途全体を包んでいます)コロケーション用の棟のほか、隣には空調用のコンテナを積んだ棟、非常電源のコンテナを積んだ棟を並べて、3棟を1セットに立派なデータセンタを作っていました。
驚くことに基礎工事を含めて複数フロアを持つデータセンタを6ヶ月で作った、とのことです。
コンテナ展開方法の発想と工期については衝撃的でした。この真価はそれぞれのデータセンタの要素が綺麗にモジュール化され、連携ができているところにあります。コンテナで作ったコロケーション室内に置くものはモジュール化されたラック1式ですが、これは別に既存のコロケーションでも展開してもよいもので、決してコンテナ用ではありません。ラックに限らず、空調、UPSについても同じ事が言えます。コンテナがあってその為にモジュール化をしているのではなく、コンテナにモジュール化したものを無駄なく詰め込んでいます。工程に無駄がありません。
華為技術全体の取り組み
今回のイベントにて直接説明を受けた部門は「Network Energy」の部門であり、データセンタファシリティ周りの話が主でした。2日目には深圳の本社施設2か所にてデータセンタファシリティ以外の取組みのスマートシティ、監視カメラ、5Gソリューション、電気自動車、裏方のAI用チップなど、様々なデモンストレーションを見せていただきました。このイベントの内容で私たちが衝撃を受けたのが1部門のだけでの内容でしたので、他の部門の内容も濃い研究と実証結果が期待できます。
まとめ
ファシリティからユーザ端末まで幅広い事業展開をしている華為技術ですが、それを1社で支えられる地力をしっかり見る事ができ、良い刺激を受けました。とにかく必要なものは作るし、やりたい事があって作っていくことを続けてきた結果と、それをずっと支える社員の気質と人数があってできる事なのだろう、という事が伝わってくるイベントでした。お土産に頂いたノートの一言「We Do IT Right!」の言葉がとても力強かったです。
改めまして、華為技術様ありがとうございました。