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量子計算学習ノート

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量子コンピュータと量子通信 (オーム社) の読書ノートです。
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2023年12月の記事一覧

量子計算学習ノート - 線形オペレータの性質

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 前回の記事では正規オペレータのスペクトル分解について述べた。この記事ではスペクトル分解をふんだんに利用して、各オペレータの役立つ性質を確認していく。 射影オペレータの性質射影オペレータ$${P}$$が与えられて、対応する固有空間を$${W}$$とする。$${W}$$のCONS$${\{|w_i\rangle\}}$$とすると、$${P = \sum_i |w_i\rangle \langle w_i

量子計算学習ノート - スペクトル分解

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 これまで種々の線形オペレータを紹介してきたが、この記事では正規オペレータの非常に重要な性質であるスペクトル分解定理について紹介する。 まず、対角化可能であったときに正規オペレータであることを示す。対角表現によって、$${A^*}$$は以下のように表現できることになる。 $$ A^* = \sum_i \lambda^* |e_i\rangle \langle e_i| $$ よって、以下が成り立

量子計算学習ノート - 様々な線形オペレータ

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 特別な線形オペレータであるエルミートオペレータ、そしてその中でも重要な射影オペレータについて見てきたが、その他にも重要な線形オペレータはいくつかある。この記事ではそんな線形オペレータたちを紹介する。 まずは正規オペレータである。次の性質を満たす線形オペレータ $${A}$$を正規オペレータという。 $$ AA^* = A^*A $$ 定義により、エルミートオペレータは必ず正規オペレータである。

量子計算学習ノート - エルミートオペレータ2

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 前回の記事では射影オペレータの定義について述べた。この記事では射影オペレータが線形オペレータなのか、またエルミートオペレータなのか、そしてどんな性質があるのかを議論する。 いつもどおり$${V}$$をヒルベルト空間とし、$${W}$$をその部分空間とする。$${P_W}$$を部分空間$${W}$$への射影オペレータとすると、射影オペレータが線形オペレータであることが証明できる。実際に証明してみよう。

量子計算学習ノート - エルミートオペレータ1

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 ヒルベルト空間$${V}$$上の線形オペレータ$${A}$$が $$ A = A^* $$ を満たすとき、$${A}$$をエルミートオペレータ、もしくは自己共役オペレータと呼ぶ。エルミートオペレータの中でも特に射影オペレータは観測を議論するうえで重要だ。これを定義するために射影定理について紹介しよう。 $${V}$$の部分空間$${W}$$を仮定する。$${W}$$に対し、以下のような集合$${