同姓同名 下村敦史 幻冬舎
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同姓同名 下村敦史 幻冬舎

ミステリインフルエンサーMATSU

6歳の少女が、公園のトイレで惨殺された。

犯人は16歳の少年。

少年法に基づき、実名は公表されなかった。

しかし、週刊誌がその名を世間に晒してしまう。

大山正紀

少年の名前は、瞬く間に誰もが知るものとなった。

この報道がきっかけとなり、日本中の大山正紀の人生が狂い始める。

彼らは、殺人犯と同姓同名であるというだけで、いじめに遭い、距離を置かれ、あまりにも理不尽な、偏見の目で見られるようになる。

-そして7年後、短すぎる刑期を終えた大山正紀が出所した。

時を経て、弱火になりつつあった炎が、再び一気に燃え上がる。

年月を重ねてもなお、大山正紀に苦しめられる大山正紀たちは、「大山正紀同姓同名被害者の会」を開くに至った。

しかし、そこに集った大山正紀たちには、それぞれに、明かすことのできない、思いもよらない秘密があった-



本作で著者は、少年法と実名報道への警鐘を鳴らすとともに、SNSでの誹謗中傷問題にも深く踏み込んだ。

登場人物全員が同姓同名という、奇想を最大限に生かした大胆かつ緻密な構成からなるストーリーは、読者にとって最高のご褒美となるだろう。

ただ、描く側である著者にとって、本作の執筆は相当難易度の高いチャレンジであったことが窺える。

普段、ニュースを見ていて被害者の悲しみや苦しみを考えたことがある人は多いと思う。

しかし、その事件の犯人と同姓同名である人について、考えを巡らせたことがある人は少ないのではないだろうか。

想像してみると、犯罪者と同姓同名であることは、決して気分の良いものではない。

凄惨な事件の犯人ともなれば尚更だ。

今の世の中は異常なのかもしれない

昨今、社会問題となっているSNSでの誹謗中傷、追い込まれた被害者の自殺。

言葉にはとてつもない影響力があり、人を殺すほどの凶悪性が秘められているという事実に、あまりにも無自覚な現実。

今の時代、直接手を下さなくとも、誰もが殺人者となりうるのだ。

作中、SNSでの被害に遭った大山正紀は、悲痛な胸の内を明かしている。

「人はみんな、他人を攻撃しすぎなんですよ」

少年法、実名報道、誹謗中傷問題と並行して、大山正紀たちがもつ秘密が織りなすストーリーは、終盤、鋭い切れ味で真実を開示していく。

超絶技巧とは、まさにこのこと。

著者は、最高難易度の技を鮮やかに決め、綺麗に着地を成功させて見せた。



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