GMとスカウトのtension

GMとスカウトの権限とは?

日本に於けるGMの走りは西武根本管理部長と言われます。根本氏はドラフト前の人買いのような時代のスカウトを経験し、監督を経てGMのような役割になったため寝技師と呼ばれていたように西武の財力をバックにドラフト制度の裏をかくような選手獲得をしてきました。根本氏時代の西武、ダイエーはスカウトの意見も反映されるものの最終的には根本氏が全てを決めるとういう全権集中型です。日本ハムは山田スカウトの力が強かったこともあり、スカウトの意見がドラフト指名順位などにも反映されやすい傾向があるようです。それでも陽獲得に際しては当時の編成担当吉村GM補佐の意見を取り入れたようです。高田GMはDeNAでは当初日本ハム型でその年の一番いい選手を指名する方針でした。しかしスカウトの意見を参考にしてドラフト順位を進めると編成的に欲しい選手を取り逃がすことになることから、スカウトの意見は最大限尊重しながらも最終的には高田GM自身が指名シミュレーションをギリギリで決めるという方針を作りました。事前に決めてしまうと方針に不満を持つ人から情報が漏れるのを避けるためです。よく事前に情報漏らせば他球団が競合を避け引くから良いという人もいますが、入札競合確実と思われた選手が単独指名になるケースはいろいろと裏があり、報道陣に漏らすことで有利になることはあまりありません。日本ハムは一度決めたら動かないので早い時期に発表していますが、高田GMはこのやり方にメリットは少ないと感じていたようです。

あなた買います。

ドラフト以前に中大穴吹獲得にスカウト間で札束合戦となりその模様が「あなた買います」という映画になりました。この時は南海が獲得しています。立大長嶋、杉浦には南海が先輩の大沢を通じてお金を渡しており2人の南海入団は確実という中で長嶋だけ巨人へという逆転劇がおきました。上尾高校山崎裕之獲得に際して5000万円という金額まで契約金が跳ね上がり、ドラフト制度導入で契約金を抑えるという流れになりました。ドラフト開始から江川事件まではどこかの球団が獲得したいという選手を獲得させないように邪魔する指名やろくに選手も見ないで聞いた名前だからと指名して交渉権放棄することもありました。江川事件あたりから裏交渉などが増えてきて、根本氏の寝技など契約金の実金額は規定から外れてきます。そして逆指名ドラフトが始まると昔の自由競争さながらの事態となります。スカウトはいい選手を探す目利きとして全国の選手を巡りますが、契約金の財布を握るのは球団オーナーだったり、社長だったりGMです。スカウトの評価と指名順位などに自ずとズレがでます。他球団の評価も加味されますから一筋縄でいきません。ベイスターズにいた那須野が5億を超える契約金を手にしていて協約違反と言われた件も先日、本人がインタビューで他球団は倍の金額を提示したところもあり、大学もベイスターズ以外に行けと言っていたと語りました。松岡、中塚スカウトが高校時代から熱心に見てくれたからベイスターズに入団したと。たぶんベイスターズ側に周囲が他球団を断れる金額に引き上げるようにした結果が件の金額だったのでしょう。この時期はアマチュア球界の首領だった山中氏がGM時代でスカウトの努力に報いるため大学側にネゴシエーションした結果だったと思われます。

競合確実と言われた選手が単独指名されるケース

ベイスターズでは今永、東が挙げられます。今永は4年春の怪我ということが理由として挙げられてますが、たぶん早い時期から(高校ぐらいから)見守り、有力な関係者を押さえていたことで他球団が事実上ちょっかいを出さなかったというのが正解でしょう。東も同様です。今年の森下も広島がかなり関係者を押さえていた感じでベイスターズは奥川か森で悩んだのではないかと最近は推測しています。プロ入りが確約できるクラスの選手以外は4年の春ごろには社会人のチームが決まっているケースがほとんどです。一般の内定もその前後でそれを大きくズレると会社の人事計画が狂います。森下を強行指名して入団に持ち込む場合の予算は広島より多くなったでしょう。契約金の規定はありますが、各球団が選手の有力な支援者にコンサルティング料として払う金額には規定がありません。


神里の2位指名は愚行なのか?

17年ドラフトで神里を2位で指名した時に、あんな選手はドラフト下位指名クラスで日生出身の柿田を指名したから2位になった情実指名だとSNS上に書く人もいました。神里も実はそういう評判を気にしていたようで心を痛めていたと噂されます。高田GMから外野手らしい外野手が欲しかったからと自分が付けていた背番号8をもらい、開幕レギュラーを勝ち取り2年間で外野の主力となりました。しかしSNS上のファンからの根拠なき誹謗中傷で心病む選手もいるので気をつけたいところです。17年ドラフトでいえば1、2番を担えるような二遊間選手もしくは外野手が欲しかったのが事実でしょう。FAで大和獲得を調査していた時期で一番候補はトヨタの藤岡。彼は外野手もやっていたので2位で獲りたかったがロッテに先を越されます。次が神里だったと思われますが西武もしくはソフトバンクが獲得するのではという情報があり、2位で神里を押さえたと思われます。3位だと西武、ソフトバンクに先を越されます。実際に西武は2位で西川、ソフトバンクは3位で増田と外野手を指名しています。神里が候補に入っていてもおかしくはありません。球団編成はスカウトの評価だけでなく、編成上の補強ポイント、他球団との兼ね合い、見かけだけでないお金の問題が複雑に絡むことを意識したいです。

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