見出し画像

[#27] 大変です!ハードディスクが壊れました

初出: MacPower 2002年 9月号

世の中は「.Mac」の有料化の話題で持ちきりらしい。納得するところも文句もあるので、オレもその話題に参加したかったのだが、それどころではなくなってしまった。「PowerBook G4」(初代)のハードディスクが吹っ飛んでしまったのだ(泣)。

クラッシュのそもそもの原因は、ニューヨークのエキスポでのジョブズのキーノート・スピーチを見るために、発表直後の「QuickTime 6」をマシンにインストールしようとしたことにある。

ストリーミング放送開始の10分ほど前にWebサイトにアクセスしてみると、何とMPEG-4でも映像を配信するというのだ。それだったら、話のネタにMPEG-4を試すだろう。「ふむふむ、それにはQuickTime 6が必要なのだな」 というわけで、インストールを決めたのだ。ダウンロードサイトに行ってみると、インストーラーのサイズが19MBもある。しかも、ジョブズのキーノート・スピーチを見るためにアクセスしているユーザーが多いのか、かなり重たい。しゃあない、ダウンロードしながら別のMacで見ることにしましょう。

キーノートの前半は「Jaguar」の説明だったが、内容は5月のWWDC のデモとほとんど同じ。「そうだよなぁ、Jaguarしかないよなぁ。何か新しいハードは発表されるのかなぁ」と思っていると、QuickTime 6のダウンロードが終了。早速インストールしてみる。いつも感じているんだけど、このアップル標準のインストーラーはインターフェースがひどい。いちいちユーザーに鍵ボタンを押させるぐらいなら、パスワードのダイアログを表示させろよと思う。あと、インストール終盤の「システムの最適化」っていう処理の意味がいまいちわからないよな。んー、今回はやけにこの処理が長いね。ま、気長に、気長に…..。

ん?おかしい。よく見てみると、プログレスバーが波打っていないぞ!?ハングしてんじゃねーか!システムの最適化中だったはずだぞ。大丈夫なのか?とりあえず強制リスタート。いやな予感が頭をよぎる。ドキドキ。そういう予感はたいてい当たってしまうのだ。リスタートしても、「?」マークで起動処理が止まっちゃってる。くっ(泣)。

そんなこんなで、お決まりのハードディスクのクラッシュだ。パーティション情報が壊れたので、中身のデータは全部パーになってしまった。Macにバックアップ機能[*1] が用意されたというニュースを聞きながらの事故なのが、何とも切ない。パーティション情報が飛んだだけで、フォーマットし直せば使えると思い、外付けドライブとしてつないでみる。でも、すぐにハードディスクにあるまじき音を立てて死んでしまった。結局、内蔵ハードディスクはマシンに標準付属の20GBのものに付け替えることに。んー、「iPod」の曲がPowerBook G4に戻せんぞ!

今回のトラブルでとても痛かったのが、バックアップ体制をちゃんとしていなかったこと。過去にも何度となく痛い目に遭ってきたので、Mac OS 9の時代には結構いろいろ工夫してバックアップの体制を整えていた。メインマシンのPowerBook G4は毎日持ち歩いているため、何が起こるかわからない。データのバックアップは必須であったはずなのだ。「AppleShare」サーバーと「AppleScript」 バックアップソフトの「Retrospect Express Backup」と FTPサーバーなどを駆使して、かなり快適なバックアップ体制を敷いていたのであった。毎晩、自動的にバックアップデータが更新されるため、あまりバックアップを意識する必要もなかった。

しかし時代は移り、昨年末からメインマシンのシステムはMac OS X。まずRetrospectがMac OS Xに対応していなかった[*2] 。また FinderのAppleScript対応がタコで、Mac OS 9のときのスクリプトが動かない。「ラベル」がなくなったので、ファイルの内容に関係なく目印をつけることが難しくなった。UNIXのバックアップツールはリソースに対応していない。ファイルの場所がバラバラで、どれをバックアップしていいの勘が働かない。……などなどいろんな理由があるが、要はオレがバックアップを怠っていたのだ。思い返すと、よくもこんな恐ろしい状況で仕事をしていたものだ。

不幸中の幸いだったのは、最近の仕事の多くはネット・アプリケーションだったということ。これらの作業環境自体はサーバー上に構築されているので、実害はほとんどなかった。この点は本当に助かった。「BBEdit」は、FTPサーバーからファイルを直接引っ張ってきて編集できる。ネット上のソースコードも、ローカルの場合と同じように編集が行えるわけだ。画像などを除いて、すべてサーバー上のデータを直接いじることにしていた。

逆に一番痛かったのは、メールのデータが飛んだことだ。メーラーとして使っている「Microsoft Entourage」は、1つの巨大なファイルでメールボックスを管理している。なので、変更された個所だけをバックアップするということができない。メールボックスのファイルサイズが300MBだったら、毎回300MBをまるまるバックアップしなくてはならないわけだ。

今回の一連の騒動で、Mac OS X でのバックアップについての対処方法がつかめてきた。バックアップが必要なファイルはどこにあるのか。個人の環境に必要なデータと、システムの復旧に必要なデータの違いもだいぶわかった。ひとえにバックアップとはいっても、マシンの中のすべてのファイルをバックアップできるものではない。目的のデータをピンポイントでバックアップしていく必要がある。こうした知識は、経験を通じてしか身につかないものだろう。思い返すとMac OSとの長い付き合いで、何度も痛い目に遭いながら知識を深めてきたわけだ。トラブルのおかげで、Mac OS Xとの距離は縮まったものと信じたい。

バスケ(http://www.saryo.org/basuke/)シエスタウェア代表取締役
先月予告した「JaguarでAppleScriptが速くなる秘密!」は来月に回します。途中まで書いてたんだけど、消えちゃったんです。書き直す気力なかったんです。

[*1] Macにバックアップ機能 - まぁ、100MBでどうするのかという話もあるが……。年額1万円近くとるなら、容量はもっと欲しかったな。
[*2] Mac OS Xに対応していなかった - 今年の3月ぐらいにはMac OS X 対応版が出ていたのに、買っていませんでした。すみません。

編集・三村晋一

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?