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暗譜の魅力

暗譜の魅力

素晴らしい音楽家の演奏会に行く。

大編成のものから室内楽、独奏などの小編成のものまで世の中には様々な演奏会が開催されている。

自分も演奏会やライヴをひらく身として、奏者目線も視聴者目線も両方の立場から考えられるように日々研究をしている。

そんな中日々音楽家や舞台俳優など生でお客様へエンターテインメントをお届けするものとして一つ

"暗譜"という表現の方法が出てきた。

ピアニストや弦楽器奏者、歌手がソリストとして演奏している最中は暗譜で臨んでいる方が多いように思う


そんな中僕たち金管楽器奏者は?
そんな事を考えつつ

よくよく考えてみると暗譜とはただ単に楽譜を暗記し演奏する事では無さそうだ

これまでたった数小節の暗譜から協奏曲丸々一曲の暗譜まで様々な暗譜をしてきましたが、今日はそんな暗譜について書いてみる。

1, 暗譜とは

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演奏会においては多くの場合、ステージ上に譜面台を立て、楽譜を置き演奏を始める。

稀に

・楽譜の譜めくりが間に合わない時用
・ミュート(消音器、現在では音色を変えるためにも使われる)を置くため
・他演奏に瞬時に必要なものを置いておくため

これらのために譜面台を2本ないし3本必要な数を用意し用途によって使い分ける。

暗譜とはこの楽譜を置くための譜面台や楽譜自体を使用せず楽譜に書かれてある音楽を暗記し演奏する事だ。

ルールではないが、慣習で多くのソロピアニストや歌手、弦楽器奏者が暗譜で演奏しているのをよく目にする

また管楽器においてもコンクールやコンテストにおいて暗譜の指示をされることも多い

理由は謎だが、暗譜も出来ないようならこのコンクールに出る資格もないということだろうか

オペラの役者たちも暗譜で行なっているがそのステージ下部のピットと呼ばれるオーケストラがいる場所ではみな譜面台に楽譜を用意し演奏をする。

これらが暗譜と呼ばれるもの

2, 暗譜がもたらす効果とは

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暗譜がもたらす効果と考えたときにまずは見栄えである。

CD録音や音源や動画の制作でない限り、基本的に演奏家の前には聴衆がいる事になる。

我々も聴衆がいるのといないのとでは必ず演奏は変わってくるし、ホールによってはお客様がいる分響きも変わると言われるぐらい、やはり聴衆がいるのといないのとでは別世界だ。

その聴衆がいるということは音楽という芸術が五感の中の味覚以外の

・聴覚
・視覚
・触覚
・嗅覚

そして六感目の見えない何かを感じるを含め味覚を除いた四つの感覚と一つの感覚で音楽を体感してもらう事になる。

そんな中百聞は一見にしかずというぐらい我々の印象を決定付ける"見る"という能力が聴衆にとっては大切になってくる。

例えばどんなに素晴らしい演奏を行う奏者であってもみすぼらしい格好や不潔な見た目、姿勢も悪く社会一般的に明らかに不適切な装いで演奏を行っていたら気にしない人も中に入るだろうがどんなに素晴らしい音楽も素晴らしさを減退させてしまうだろう。

という風に簡単に考えられるぐらい見た目は重要になる。

そこで暗譜である。

聴衆からすれば、奏者の表情や雰囲気も譜面台や楽譜がない事によってより感じやすくなり耳で聞く音楽から五感をフルに使った臨場感溢れる音楽という空間、時間芸術を堪能しやすくなる。

奏者からすれば譜面台や楽譜がない事により聴衆を始め今自分が演奏している空間や時間をより認識できるようになり

・その時
・その場
・自分が発する音楽

これら3つが掛け算式に音楽の立体感や臨場感をより生み出しライヴらしい音楽を提供する事に繋がる。

3、経験

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暗譜による演奏が楽しくなっていくまでの自分の経験値を記す。

ソロで生まれて初めて数フレーズ以上の暗譜に挑戦したのは14分近い金管バンドとの協奏曲Cyranoを演奏した時だった。

未経験、しかもバンドバックの協奏曲という事でプレッシャーや緊張はとても高かったがとても良い経験になった。

またその後も何度もバンドバックでのソロの演奏を経験してきたが初めて行ったCyranoの演奏以降ほぼ全て暗譜で演奏を行った。

それは上記2に記した通りお客様の反応が段違いだからである。

我々人は未知の体験にとても不安や緊張を覚えるが一度行ってしまえば前例という経験が生まれ未知が既知となりその不安はかなり軽減される。(初めて行った後にトラウマになるような感想を言われたり自己否定に走るとその経験は嫌なものになる)

その後の今もできるだけ暗譜での演奏に挑戦しコンサートやライヴというものをお客様も含め全員で作れるように意識をしている。


まとめ

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つまり暗譜とは聞いていただくお客様にどのようにその音楽を聞いて頂きたいかをより伝えるための一つの方法である

必ずしも暗譜=音楽をより伝えられる
ではないが、暗譜による演奏によってこちらの意図した楽しみ方をより伝えやすい場合もある

そのため暗譜での演奏という表現方法も我々の選択肢の一つにいつも必ずもっておきたい

今日はそんな話でした。

ご読了ありがとうございました。


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