先発投手と救援投手の年齢曲線

野球選手の成績は年齢の影響を受けるのではと考える人は多いと思います。若ければ成長しピークを迎えたらあとは衰えていく……、というイメージがありますが野手はこれに当てはまる一方、投手はそうではないようです。選手の年齢が成績に与える影響については複数の研究があります。NPBでは例えば『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1(水曜社)』の『年齢の変化と成績の関係』では野手は27歳にピークを迎えるのに対し投手は21歳を超えるとあとは成績が低下していくというかなり早い段階で衰えるという結果が出ています。投手の肩・肘は消耗品と言いますがそれにしてもかなり早いように感じられます。

今回はNPBでの投手の年齢曲線について投手を先発と救援に分けて分析していきたいと思います。

検証

6人ローテーションが定着したとされる1990年以降のNPBの投手を対象にします。
先発投手の定義は10先発以上、救援登板10以下、
救援投手の定義は救援登板20以上、先発登板2以下、
とします。

まずは出場機会数についてです。
出場が最も多い投球回数を100%としたときの比で表しています。
まずは先発投手です。

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23歳ごろから出場率が80%を超えているなど先発投手は若い段階から一軍で使われているようです。29歳でピークを迎えた後は徐々に出場機会を減らしていくようです。

続いては救援投手です。

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こちらは先発投手と異なり25歳ごろから出場が増えるようです。23~24歳頃からいきなりリリーフで選手を起用、ということはあまり行われていないようです。出場機会の分布を見ると25~30歳までは高いのですがその後急激に低下します。先発投手と比べると出場機会の減り方が急なように見えます。救援投手は寿命が短い、と言いますが出場機会の減り方を見るとそういうところは確かにあるのかもしれません。

続いて各指標の年齢曲線を見ていきます。

こちらは以下の方法で成績の変化を調べています。

Aging 説明1

Aging 説明2


(この方法に問題があるようでしたらご指摘ください)

変化を折れ線グラフで表したものがこちらです。

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(BABIPに×10と書かれているのは他の指標と合わせて変化を可視化するためです。)

それぞれの項目について先発と救援の違いを見ていきます。

まずは防御率です。

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防御率は高ければ高いほど成績の悪化を意味します。どちらも基本的に若い頃から悪化していく傾向にあるようです。救援投手は先発投手に比べると値が高くなりやすく先発投手以上に激しく衰えます。出場機会もですが成績の悪化の激しさも救援投手の選手寿命の短さを表しているように思えます。

続いては奪三振率です。

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先発投手は21歳から救援投手は23歳のシーズンでピークを迎え以降はどちらも衰えていきます。

続いては与四球率です。

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先発投手は0.00付近をある程度まで横這いを続けています。一方で救援投手は30歳になる頃から値が跳ね上がります。先発投手と比べて成績が30歳以降に悪化しやすい理由の1つかもしれません。

続いてはHR/9(9イニング当たりで打たれる本塁打)です。

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どちらも基本的に若い頃から値が上昇(本塁打をよく打たれる)していく傾向にあります。ただ救援投手の方が上昇の度合いが大きいようです。


続いてはBABIP(ボールインプレーの打率)です。

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どちらも若いころから上昇(ヒットをよく打たれる)を続けていきます。救援投手の方がわずかに上昇の度合いが大きいでしょうか。


まとめ


・出場機会で見ると先発投手の方がなだらかな推移で救援投手は25~30歳あたりに集中している。
・基本的に投手は先発・救援ともに若い頃から成績が悪化していく傾向にある。
・成績の悪化の度合いは基本的に救援投手の方が激しい。

投手と言うのは基本的に若さが求められるポジションですがその中でも救援投手は先発投手以上に若さが求められるポジションのようです。それがポジションによって求められる能力の違いによるものなのか、それとも肩・肘の消耗の度合いが異なるからなのか、といった理由はわかりません。ただチームは救援投手が先発投手以上に寿命が短いことを念頭に置いたうえでチーム編成をした方がよいようには思えます。

参考:
『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1(水曜社)』の『年齢の変化と成績の関係』

Pitcher Aging Curves: Introduction

データ出典:
日本プロ野球記録

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