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「PAY․JP YELL BANK」を提供開始 - 決済・金融戦略のアップデート -



はじめに

BASEグループは創業当初から提供しているネットショップ作成サービス「BASE(ベイス)」以外にも複数事業を運営しており、グループ全体で主に4つの事業を展開しています。2023年4月に、購入者向けショッピングサービス「Pay ID(ペイ アイディー)」で、BNPL機能をリリースするなど(​​「あと払い(Pay ID)」を提供開始 新たな自社決済ネットワークへの第一歩|BASEグループ公式note)、グループの事業ポートフォリオを拡充しているステージです。

特に事業成長の観点では、ショップ・加盟店向け事業である、オンライン決済サービス「PAY.JP(ペイドット ジェーピー)」と資金調達サービス「YELL BANK(エールバンク)」が好調で、グループの成長を牽引する存在になり始めています。

「YELL BANK」は業界に先駆けて2018年にリリースした将来債権買取型の資金調達サービスで、これまでは「BASE」をご利用のショップ向けに提供しておりましたが、2024年6月18日から「PAY.JP」の加盟店にも提供することとなりました。本日は新サービス「PAY.JP YELL BANK」のリリースに至った背景や私たちの想い、事業戦略上の特徴などをお話ししていきたいと思います。

「PAY.JP YELL BANK」提供開始について

<個人・スモールチームが抱える資金繰りの課題を解決したい>

まず、「PAY.JP YELL BANK」のサービス概要をお話しする前に、今回のサービスリリースに至った背景をお話しいたします。

こちらは以前に「BASE」をご利用のショップ向けに実施した資金繰りに関するアンケートの抜粋になります。個人・スモールチームの過半数の方々が資金繰りに関する課題に直面しているが、解決方法に辿り着いていないことが多く、資金繰り自体に抵抗感やリスクを感じる方も多くいらっしゃることがよくわかります。

次に、こちらは「PAY.JP」加盟店向けに実施した資金繰りに関するアンケートの抜粋です。事業成長への投資を理想としていながらも、実際の使い道は既存事業の運営に関する項目がメインとなっています。

「YELL BANK」は、このような個人・スモールチームが抱える資金繰りの課題を解決するために開発されたサービスです。

そして、「PAY.JP」は決済機能に特化したBtoBサービスであり、個人やスモールチームの利用に最適化された「BASE」のユーザー層と比較すると売上規模は大きくなります。ただ、プロダクトの思想は「BASE」と同じで、これから事業を始めるスタートアップやSMB(Small and Medium Business )における、決済の簡易化を通じた新規事業の成長支援に軸足をおいているので、資金繰りに関する同様の課題・ニーズがあるのではと考えました。

上記背景から、YELL BANKチームとPAY.JPチームが協働でユーザーインタビューやPoC(実証実験)を通じてニーズを確認し、「PAY.JP」向けにプロダクトチューニングをしていった結果、「PAY.JP YELL BANK」として正式リリースする運びとなりました。

<「PAY.JP YELL BANK」について>

「PAY.JP YELL BANK」は、仕組み自体は「YELL BANK」と同じ将来債権の買取サービスですが、いわゆるエンベデッドファイナンス(組込型金融)という手法で提供しています。

エンベデッドファイナンスとは、非金融事業者が自社の既存サービスの中にパートナーが提供する金融機能を組み込むことで、シームレスなユーザー体験を可能にするものです。

「YELL BANK」のサービス提供主体はBASE社になるのですが、PAY社が提供する「PAY.JP」のサービスに資金調達機能を組み込んでいるので、加盟店目線ではPAY社がフロントになります。これにより、「PAY.JP」加盟店は現在使っている売上管理画面から調達申し込みや支払金額の確認をすることができ、ユーザー体験を極限までシームレスにすることが可能となります。添付画像は実際の管理画面のイメージです。

サービスの特徴は以下の通りです。

【特徴1】 3クリックで資金調達が完了

一般的な金融与信とは異なり、「PAY.JP YELL BANK」では「PAY.JP」での売上実績 等」をAIを活用し事前に評価しています。そのため事前審査や書類提出がなく、調達までのスピードを大幅に縮めることができます。いつも通り加盟店運用をしていたら調達可能な金額が出てきた、というユーザー体験になります。提供金額をみながら、調達する金額を決め3クリックするだけで調達が完了します。

【特徴2】 支払いは商品が売れた時だけ

一般的な融資では毎月決まった金額を返済しますが、「PAY.JP YELL BANK」は変動する毎回の入金額から調達前に決めた一定割合がお支払いに当てられます。売上がなく入金がない場合は、調達金額への支払いも一切発生しません。支払いに追われることなく事業を継続できるという点で、大きなメリットがあります。

【特徴3】 AIが運営状況を常に評価

「PAY.JP YELL BANK」では、AIを活用して加盟店様の売上実績や運営状況などの情報を日々評価しています。売上が好調であればその情報も評価の要素に加わり、その結果調達できる金額も日々変化していきます。

事業者が利用できる資金調達手段は様々ありますが、冒頭のアンケートでご紹介した通り、個人・スモールチームにはハードルが高いことも少なくありません。大手金融機関などでは、中々メインで向き合いづらい顧客層になることもあるかもしれませんが、個人・スモールチームの成長に向き合ってきた私たちとしては、SMBの課題に寄り添ったサービス設計を意識しています。

加盟店向け金融サービスの潮流

この数年、国内外で中小加盟店向けの金融サービスが活況です。特に、非金融系のプラットフォーマーが金融機能を提供するパターンと、加盟店のキャッシュフローに携わる決済事業者が金融機能を提供するパターンが多く見られます。

こちらは国内外の事例紹介です。各社ともに「決済履歴を金融サービスに活用する」という点は共通していますが、アプローチが異なります。

上段は「バーティカルSaas」などと呼ばれますが、特定業種で必要機能をワンストップで提供する事業者(Shopify:ECショップ向け、Toast:飲食事業者向け)、下段は「ホリゾンタルSaas」などと呼ばれ、特定機能を業種横断で水平展開する事業者です。Square・Stripeともに、決済サービスをグローバル展開する世界トップクラスのFintech企業ですね。

国内でも、この1-2年で「YELL BANK」のような将来債権買取型の資金調達サービスが展開され始めてますが、上記海外の潮流と同じく、プラットフォーマー(バーティカル)と決済事業者(ホリゾンタル)による2方向のアプローチが主流になっていくと考えています。

BASEグループの特徴としては、「BASE」というネットショップ運営に必要な機能をワンストップで提供する事業(バーティカル)と「PAY.JP」という決済機能を業界横断で展開している(ホリゾンタル)両事業において金融機能を提供することができます。

グループ内で双方向のアプローチが可能となることで、特定領域を掘り下げたバーティカル特有の事業理解や取得データの深み、業界横断で広く展開できるホリゾンタル特有の事業スケールの双方のメリットを享受することができるため、プロダクト品質の向上や事業展開の戦略策定に役立てることができます。

今後の展開

私たちは2012年11月のサービス創業から10年以上をかけて、ショップ・購入者双方のプロダクトと顧客基盤を構築し、プラットフォーマーとして2side-networkを展開しています。ショップ・加盟店の取引先も含めると、BtoBtoCの商流に全方位でタッチしており、ネット上の商取引・キャッシュフローをワンストップで最適化できるポジションにいます。

今後、ショップ↔︎購入者(BtoC)、ショップ↔︎取引先(BtoB)、それぞれのキャッシュフローにおける、プロダクトの拡張とユーザーの拡張を予定しています。

支払いと入金のサイクルを柔軟にするプロダクト開発・アップデートを進めるとともに、BASEグループ以外の事業者に対しても、私たちがこれまで展開している決済・金融サービスを裏方としてエンベデッドしていくことで、個人・スモールチームが抱える決済・金融に関する課題を幅広く解決していきたいと考えております。

プロフィール

髙橋 直(たかはし なお)
1983年生まれ。東京都出身。青山学院大学卒業後、三井住友カード株式会社へ入社し、戦略提携や事業開発業務に従事。国内外IT企業との資本業務提携や電子マネー事業・決済プラットフォーム事業等の立ち上げに参画。
2022年4月1日にBASE株式会社に入社、同日付で執行役員に就任。
BASEグループの決済・金融を中心とした戦略事業を担当し、購入者向けショッピングサービス「Pay ID」、オンライン決済サービス「PAY.JP」、ショップ向け金融事業であるBASE BANKの管掌と併せ、経営戦略室を兼任しグループ全体の戦略立案・実行に従事。決済・金融事業を行うDepartmentを統括し、2023年3月24日付で上級執行役員に就任。
100%子会社であるPAY株式会社の取締役も務める。

この記事を読んでBASEグループの決済・金融事業にご興味を持ちいただけましたら、ぜひ弊社HR窓口や私のTwitterに気軽にDMをいただけるとうれしいです。
@nao_takahashi_