見出し画像

柑橘類の座標(you & me)

クールビズなのにネクタイを締めたのは
君が良いと言ったから
多分忘れているけど些細な言葉も
記録されていて困る
君から貰ったチョコレート
きっと最期のプレゼント
冷蔵庫から出した瞬間溶け始める

生涯連れ添う訳にはいかない
平行に走ることはできない
ただ一瞬垂直に交わった二本の線
好きな曲のイントロで終わる
オレンジピールが苦いアクセント
次の約束を繋げない甘い人々になる

右目の端に目ヤニが溜まりやすいんだね
左の二の腕に大きめのホクロがあるね
嘘がつけないから最後は黙っているね
それらを起点に嫌いになりたかった
大嫌いになりたかった

チョコレートはほろ苦いけど甘い
夜食べる癖が付くと抜けない
依存することが怖くなっても
もう抜け出せないのに
秒読みでいつも考えている
もう嵌まり込んでいるのに
空気読んで別れ際は演じたり
いつでも別れられると演じたり

クールビズなのにネクタイを締めたのは
それだけ大人の付き合いって
結局は自分に言い聞かせているんだ
なのに何でくれたんだチョコレート
側にいる訳じゃないのにと
大人の癖に夢を見た後に嗚呼

さよならも好きも輪郭が無いから言わない
これがエレジーなら場所も選ばずに泣いた
君が良いと言ってくれたから
僕はこれで良いと思った
忘れているだろうけど魂は記録しているよう
バグやウィルスが不意に引っ張り上げる
例えば
オレンジピールが入ったチョコレート

君を嫌いになってしまえたら
一歩でも前に進める、なんてね
忘れてしまえやしないのにね
君が良いと言ってくれたから
僕もこれで良いと閉じ込めた

僕等の間に生まれたものは
言葉も感情も温度も時間も+も−も
ゼロになる事はない
愛なんてものには成りはしないけど
諦めずに育てていれば
それに近いものにはなれたかもしれない
機械が感情を持つように
それに近いものにはなれたかもしれない

ただ一瞬でも混じった線と線
太さも速度も違う二本の線が
君と僕だっただけ

君と僕だっただけ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?