見出し画像

【無料公開】 アタランタのハイプレス:マスタークラスのマンツーマン

ヨーロッパサッカーのここ2シーズンにおいて、ジャン・ピエロ・ガスペリーニよりも良い成績を残したといえる監督は数少ない。アタランタの監督は2016-2017シーズン、チームをリーグ4位およびチャンピオンの舞台へと導き、2017-2018シーズンは最終的に7位で今シーズンを終えた。つまりはベルガモ(アタランタの本拠地がある州)でさらに1シーズン、ヨーロッパサッカーを見られることが保証されたのだ。
この期間、ガスペリーニのアタランタはエネルギッシュなプレス、スピード感のあるプレー、トップチームに上がってきた若い選手の質などにおいて、イタリアセリエAの中で最もおもしろいチームであった。本記事ではガスペリーニが使ったディフェンスの戦術部分について調査してみよう。


アタランタが好んだフォーメーション


イタリアサッカーのトップカテゴリーでの監督としての数年間、彼のチームは1-3-4-3のシステムに近いものだった。それも良いが、基本のシステムを1-3-4-2-1もしくは1-3-4-1-2と組み合わせせているのも確かだ。特にラインを組んでいる選手たちや相手チームの構成次第である。すべてにおいてスタメンの選手構成によるのだ。


ハイプレス


アタランタはイタリアで最も攻撃的なチームといえる。ガスペリーニは対戦相手をコンスタントに困らせるため、ハイプレスを選手たちに教えこんだ。これは統計にも出ており、アタランタは1試合平均19回相手からボールを奪うことに成功している。
同じように、1パート45分間で相手チームに許したパスの数がアタランタ(平均351回)よりも少なかったのは3チームだけだ。

この統計ではベルガモチームの効果的なプレスが強調されており、アタランタを相手にボールを保持することは難しいということを示している。それにしても、彼らはどうやっているのか?

アタランタが高い位置でブロックを保っているとき、マンマークも一緒にしている。マンマークの性質に基づき、ガスペリーニはプレッシャーのガイドラインを相手チームの構成に合わせているのだ。それでは2つの異なるステージを見てみよう。

最初の例はインテルをホームに迎えた試合である。インテルは1-3-2-4-1というフォーメーションを選択した。これはつまりガスペリーニが、3枚のフォワードをインテルの3枚のセンターバックに対してプレスをかけさせるということを意味した。さらに内側のトップ下の選手2人が相手チームのボランチをマークし、ウイングバックは相手チームのウイングバックをマークした。

下の画像ではインテルのウイングバック(カンセロ選手)が、アタランタのウイングバック(ゴセンス選手)にアプローチをかけられている。左フォワード(アレハンドロ・ゴメス選手)は右センターバックをマークし、そのあいだトップ下のフロイラー選手はインテルのボランチであるガリアルディーニ選手にアプローチをかけている。右フォワードのクリスタンテ選手は左センターバックをマーク、中央フォワードのムサ・バロウ選手は相手チームが逃げるために中央へとパスをしたいときのキーパーへのパスの選択肢を無くさせている。インテルは前線へ大きくボールを蹴り出すプレーを強いられたのだ。

画像1

続いての例は、ジェノア戦である。ジェノアは1-3-5-2というフォーメーションで臨み、ガスペリーニはそのシステムにプレスの枠組みを当てはめた。
新しく見られるのは、両ウイングバックが相手チームの両ウイングバックにプレスをかけている点だ。フォワードのバロウ選手はまたも、センターバックの選手へのパスコースを断ちながらキーパーへとプレスをかけている。アタランタのトップ下の選手は、ほかのトップ下の選手が相手トップ下の選手をマークするために後ろに下がりながら組織化されたジェノアをマークしている。

画像2

この極端なプレスは相手チームが次の動きで攻撃をつくりだすことを封じるのに非常に役立つ。相手チームは前線に大きく蹴り出すサッカーを強いられてしまうのだ。そして相手チームに混沌とした状況を引き起こさせる。ナポリやローマ、フィオレンティーナのような名の知れたチームも、アタランタを相手にするときはいつも彼らの支配に苦しんだのである。


中間/低い位置でブロックを敷いたときのマンマーク

アタランタが高い位置でのプレスをかけられないときは、個々人のマークにも頼る。選手たちのポジションを、各自がマークできるようにするため相手選手のポジションに当てはめる。もしくはとりわけディフェンスにおいて1人の選手をフリーにさせ、カバーに行くことができるようにさせるのだ。

この内容が起こっている別のシチュエーションを見てみよう。まずは1-4-3-3のシステムで知られているナポリを相手にした試合だ。ガスペリーニは彼の集約型のサッカーを壊し、次の写真で見られるマークの仕方を実行した。センターバックと3人のミッドフィルダーをマークすることに決め、サッリ率いるナポリが効果的に使っていた中央のスペースを排除した。サイドバックの2人は相手チームのサイドバックが彼らのゾーンでボールを受けるまでフリーにさせた。つまりナポリが後ろに戻らなければいけなくなるように誘導させたのだ。

画像3

先ほど紹介したインテル相手の試合ではインテルの攻撃システム(1-3-2-4-1)によって、異なるフォーメーションをつくっていた。概要は正しいマークの相手にシンプルに向かうことができる、というアタランタに十分に似ているものだ。

画像4

次にユベントスを相手に1-4-2-3-1のシステムで戦った、昨シーズンの試合を見てみよう。これはアタランタの極端なプレスがいくつか見られる、今までで最も興味深いサンプルだろう。フォワードは中央のバルザーリ選手にアプローチをかける。アタランタがユベントス側ピッチの中央にいるケディラ選手に仕掛けるように、ピアニッチ選手をマンマークしているのがはっきりとわかる。ユベントスの右サイドバックは左トップ下のクルティッチ選手にマークされている。黄色で強調されているのはアタランタのウイングバックで、このときディバラ選手をマークするためにピッチ中央のポジションに入ることができている。

画像5

次の写真ではフロイラー選手にアプローチをかけられているピアニッチ選手を見てみよう。相手サイドには新しくユベントスの右サイドバックをマークしているクルティッチ選手がいる。左寄りのコーナーにはクリスタンテ選手がケディラ選手についている。
黄色で強調されている部分はマジエッロ選手である。ここで彼のポジションを見てほしい、左ウイングバックがディバラ選手にリーチしている。黒色で強調されているのはアタランタのセンターハーフであるマッティア・カルダラ選手で、彼はピッチ中央までイグアイン選手を追っかけている状態だ。
ここではガスペリーニの選手たちが彼の指示に忠実に従っていることがわかる。アタランタを分析する際にディフェンスのフォーメーションを話すのは非常に問題がある、というのはこういった部分からわかるのだ。「フォーメーション」は相手チームの動きによってコンスタントに変わる。

画像6

ここではユベントスのプレー中にアタランタのディフェンスの焦点が見られる良い例をお見せしよう。ガイドラインの種類を分けるのは不可能だ。この状況を具体的に話すと、それぞれの側面にディフェンスの選手が2人いて、左トップ下のクリティッチ選手は右サイドバックのダニエル・アウヴェス選手をマークしている。その間左ウイングバックのスピナッツォーラ選手がユベントスの右ボランチをマークしている。そして同じ形状を右サイドでも使った。トップ下右利きのハテブール選手は相手チームの左サイドバックのアレックス・サンドロ選手をマークし、右ウイングバックのコンチ選手はユベントス左ウイングのマンジュキッチ選手をマークした。2人のセンターバック(黒い部分)は、3人目のセンターバック(黄色部分)と一緒に相手チームのトップとトップ下をマークした。2人のセンターバック間でどのフォワードにプレスをかけるかを変えられるだろう。

画像7

上の写真ではもし何かマークを間違えた場合、この形がどれほど壊れやすいかを示している。クリスタンテ選手(青)はケディラ選手を自由にさせ、キエッリーニ選手とボールに気をとられた。するとケディラ選手はフリーになり、もしボールを受けて展開していたら問題が起きていたであろう。しかしこの場面ではその状況に至らなかった。

マンマークの反動的な性質にもかかわらず、チームがプレーのやり方やアタランタの仕組みに順応しなければならないため、このタイプのマークでは積極的に起こってしまいます。相手チームへ問題を生み出させ、このようなチームを相手に戦うのは非常に複雑なのだ。その上このシステムが機能している場合に、これまでゴールをあげたのは36ゴールのみで、ユベントス・ナポリ・インテルにのみ効果的に働いている。彼らのエネルギッシュでアグレッシブな性質は、この集団的なプレスによって誰も対戦したくないと思わせるチームになり、非常に印象的なディフェンスの統計に若干の光を当てているのだ。

(2018.05.11)

よろしければサポートお願いします。皆様からいただいたサポートはクリエイターの活動費の一部とさせていただきます。 どうぞよろしくお願いいたします。