Barbara Murata Tomomi

バーバラ村田です。 STUDIO T&Y代表、村田朋未です。 株式会社ムラタ制…

Barbara Murata Tomomi

バーバラ村田です。 STUDIO T&Y代表、村田朋未です。 株式会社ムラタ制作所代表取締役です。 https://murata-creative.com/

マガジン

  • よるべR

  • 父記録2023

    2023/4/2からの父の記録。 父は60歳でパーキンソン病と診断されてから17年になります。介護度5。 特養に入所している為、3年間面会が叶いませんでした。やっと面会が制限付きで解禁された矢先に誤嚥性肺炎で緊急搬送され、入院。 限りある時間を書き残しておきたく、日々の記録を綴っています。

最近の記事

子どもって本当に大人になるんだな

昔々、光洋さんが子連れでエジンバラの演劇フェスに出演した時のこと。 私は当時ロンドンに留学していたこともあり、お手伝いに行った。 光洋さんは妻子連れで来ていて、奥さんが音響。娘のなおちゃんは三歳。 上演中にひとりになってしまうなおちゃんの子守りをするのが私の役目。 劇場の地下が宿泊部屋になっていて、夕ご飯の後なおちゃんが眠ったところを見計らって光洋さんと奥さんはそうっと舞台に向かう。 「起きませんように」と念じながらなおちゃんの寝顔を見守るが、まあ、起きる笑。 二人がいない

    • よるべない日々②

      2020年4月7日緊急事態宣言。 店が閉まり、街に人気がなくなりスマホばかり見る日々。 ものすごい勢いで「配信」が始まった。 配信演劇、配信ライブ、配信大道芸、配信ワークショップ。 ツイキャスやインスタライブでパフォーマンスやおしゃべり配信をする人も増え、打ち合わせや稽古、飲み会までもがzoomになった。 無観客開催が普通になって、「有観客」という不思議な言葉が生まれた。 今まで大道芸や舞台やライブハウスで当たり前のように「生」で「有観客」でやってきて、「配信」なんて縁のな

      • よるべない日々①

        2020年1月中旬。 私は学生時代のサークルの仲間と共に、小さなライブハウスでパントマイムライブの準備をしていた。 その日の朝だったか、中国で謎の感染症が流行り始めたという報道があった。 小さなライブハウスで、みんなでお客さんの為の席をぎゅうぎゅうに並べながら、「謎の肺炎?みたいのが武漢で流行ってるらしいよ。」「怖いね」なんて言い合ったのを覚えている。 ライブは大入り満員だった。後輩たちも沢山観に来てくれた。 若い頃一緒にパントマイムを始めた仲間たちが30年近く経った今でもこ

        • 父記録2023/7/18【敏腕プロデューサー】

          「ほらー気持ちいいでしょ、鼻の穴ふさいじゃえー!」 母が歌うように言った。 蒸しタオルで父の顔や頭や足を拭く。 「あー気持ちいい気持ちいいねー。嫌なの?どっちなの?足も拭いちゃえ〜」 「ヨガの先生がね、足首あっためるといいって」 母は頭、私は足。手分けして父の体を蒸しタオルで拭く。 昨日母と選んだ小学生時代の夏休みの写真をプリントしてボードに貼って持って来ていた。 珍しく週末にお店を休んで遊園地に行った時の写真。 父と並んでおでんを食べる私。 サングラスにパイプを咥えた父と

        子どもって本当に大人になるんだな

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        • よるべR
          2本
        • 父記録2023
          49本

        記事

          Yellow Eagle 10th memorial

          父の恩師、ゴローさんの10th Memorial にお招き頂いて、母と夫と三人で参加してきました。 夫には父のペンドルトンジャケット、帽子、ゴローさんに作って貰ったベルトを着けてもらいました。 このペンドルトンは偶然にもゴローさんとお揃い。 母は「ありがとう、うれしい。誰かがこのコート着てるの見ると、胸がほかほかっとするわね。いつもこんな感じの人が隣にいたから」と言いました。 四人でゴローさんに挨拶出来たような気がしました。

          Yellow Eagle 10th memorial

          めぐりあう時間たち

          オパールの付いたフェザーネックレスを着けた若者がやってきた。 ぼろぼろになってしまったレザーブレスを差し出して、「母のものなんですが、革の交換出来ますか?」と言う。 レザーブレスはとても珍しいタイプのものだった。革は吟面があちこち剥げてくたくたになっている。長年着けてくださっていたのだろう。 少し時間はかかるが修理は可能なことを伝えてブレスレットをお預かりした。 「Instagramで見たこのブレスレットがカッコいいなと思って。こんなのありますか?」 新人スタッフしおん君

          めぐりあう時間たち

          加納さんのお財布

          上野でのフェスティバル出演の後、加納さんと一緒に母の家に向かった。 預けていた加納さんの財布の修理が出来上がったと言う。 母の家に着くと柴犬じろうがゆらゆらと尻尾を振りながら出迎えてくれた。 母は次から次へとテーブルに食べ物を並べる。 トロサーモン丼、もずく、めかぶ、マグロのお刺身、白滝と牛肉の煮たの 「アイスクリームも買っておいたのよ」 ハーゲンダッツ。 「こんなの作ったの。」 リンゴとレーズンをたっぷりバターとラム酒で煮たの。アイスクリームに乗せた。 「柿もあるの」 加納

          加納さんのお財布

          豊岡のお坊さん

          豊岡演劇祭ストリート、初めての参加でした。 旧豊岡市役所前で各日バーバラビット二回ずつ、閉会セレモニーの後、旧市役所内の稽古堂にてかたわれ。 再会や出会いが沢山ありました。 初日の夜、夕ご飯を買いにナイトマーケットに行ったらどこも売り切れで、ひもじい思いですぐ向かい側にあった焼肉屋さんで牛丼のテイクアウトを頼んだ。 牛丼を待っていると 「ちょっと一杯飲ませてやー。チューハイ。」 と勢いよく入ってきたカジュアルお洒落なおじ様。 「なんかそこで大道芸やってたからちょっと観て10

          豊岡のお坊さん

          父記録 2023/7/17【なちゅやしゅみアルバム】

          「わーわーわー!うるさい?うるさいでしょ、うるさいあたしがうるさくしに来たわよーとっちゃえとっちゃえー」 母が元気よく声をかけたかと思うとおもむろに父のアームカバーを外し始めた。 返す刀で蒸しタオル。父の頭ぐいぐいと拭く。 「乱暴でしょ?乱暴で鳴らした由美子さんだからね!」 父はされるがままになっている。由美子さんの夫歴半世紀超だからな。 ガンバお父さん、私は足を拭くよ。 「『乱暴だなあお前は。朋ちゃんみたいに優しく出来ないのか〜?』って思ってるでしょ。出来ないのよ〜」 父

          父記録 2023/7/17【なちゅやしゅみアルバム】

          父記録 2023/7/16【もう一度、】

          母はお休み。 7/13、私がお休みでひとりで面会に行った母から 「お父さん、『もう一度…』って言うのよ。もう一度、もう一度、なにしたいの? あたしはもう一度、大学通りを犬、一匹でいいから連れてさ二人で散歩したいな。 もう一度、お店に行きたい?家に帰りたい? ってお母さん色々訊いたんだけどお父さん、『もう一度…もう一度、』って。なんだか分からなかった。」 と電話があった。 私からも、訊いてみる。 「お父さーん。ね、もう一度、もう一度、何したい?」 「大学通り歩きたい?犬散歩し

          父記録 2023/7/16【もう一度、】

          父記録7/10〜12

          7/10 晴れ、暑い 今日も目をぱっちり開けていた。 「お父さんうちに居ないから、喋る相手居ないから、今までよく二人で喋ったなあと思ったわよ。うるさかったかしら〜?」 母がいたずらっぽく父に話しかけた。 「お手手拭こうかー?」 父の手はいつも固く握りしめられている。 「お父さんの右手。よく頑張ったね、たくさん作ったね。お疲れ様右手。」 話しかけながら父の拳と腕を揉む。 母が笑いながら繰り返す。 「お疲れ様、右手!」 7/11 母「お父さんが喋るとみんな嬉しいのよ」 看護師さ

          父記録 2023/7/9 【かっこいいヒゲ】

          晴れ時々雨。暑い。 今日は母はお休み。 「お父さーん。昨日ゆきおさん来てくれたでしょう?よかったねえ」 蒸しタオルで頭、顔、手、足を拭いて揉む。 「お父さーん、顔拭きますよー」 ゴロゴロ 「外は暑いよ〜」 ゴロゴロ 父はよく笑い、よく返事してくれた。 何かを一生懸命言っていたが、聴き取れない。  「お父さん今日は沢山返事してくれてうれしいなー。でもゴロゴロがあるからよく聞き取れないんだー。痰吸引してもらう?どう?どうかなー?」 ゴロゴロゴロ テレビでは相撲中継が流れている。

          父記録 2023/7/9 【かっこいいヒゲ】

          父記録 2023/7/6【小舟の時間】

          晴れ、暑い 母と二人で病室に入ると看護師さんが痰吸引中だった。 父は酸素をつけていた。 「今朝ちょっと酸素濃度が下がってしまって、今念のため酸素をつけてます。 なかなか痰吸引がうまくいかなかったりが続くと下がってしまうんですよね。 村田さーんご家族見えましたよー。」 痰吸引が終わった。 「お父さん、よかったね、楽になったねー」 「最近ね、いいですよね。『暑いですか?』『あつくない』とか『苦しいですか?』『苦しくない』とか、おはよう、とかね、やりとりが看護ノートにズラーっと

          父記録 2023/7/6【小舟の時間】

          父記録 2023/7/5 【ゴローズとステーキとレディボーデンと天下市】

          曇りのち雨 昨日から父は再び個室に移動となった。 久しぶりにゆっくりのびのびした面会。 父は目を開けていた。 母と二人で父の頭と顔と手足を拭く。 「どうした〜?大丈夫〜?ここにいたら安心ね〜危なくなったら助けてくれるからね〜」 母が歌うように話しかけた。 父の胸は少しゴロゴロしていた。 「お母さん、お父さんが看板屋さんの時ずっとお父さんのお弁当作ってたのよ。少ない予算で工夫して。お父さん痩せてたし、お金なかったし。あの頃、オイルショックもあって大変だったのよ。お父さんにな

          父記録 2023/7/5 【ゴローズとステーキとレディボーデンと天下市】

          父記録 2023/7/2【リフレイン】

          晴れ、真夏のよう。 今日は母はお休み。 父の呼吸は今日もゴロゴロと鳴っていた。 暖かいおしぼりでそっと父の顔を拭く。 頬におしぼりを当てるとちょっと気持ちよさそうな顔になった、気がした。 頭を拭くとちょっと顔を顰めた。 耳を揉む。 足がタオルケットの中で絡まっていたので直す。竹竿みたいな脚。 足も暖かいおしぼりで拭いてマッサージした。 首の付け根が凝っていた。揉む。 少しゴロゴロが小さくなった気がした。 帰り際、ナースステーションの前を通ると看護師さんが追いかけてきた。 「

          父記録 2023/7/2【リフレイン】

          父記録 2023/6/29【おにぎりと金目鯛】

          晴れ、暑い、暑い 店が立て込んで時間ギリギリに病院に駆け込んだ。母はロビーで本を読んでいた。 母の鞄にはいつも本と、新聞の切り抜きが入っている。スマホは持たない。 今日の父は穏やかな顔をしていた。 「金目鯛を上等な日本酒で煮たの。おいしく出来たから、きっとお父さんが好きな味だからともちゃん食べて。」 母が保冷剤で包んだタッパーを差し出した。 「お父さんには煮汁。舐められたらいいんだけど。」 小さなペットボトルに詰めた金目鯛の煮汁。 父は今日もゼロゼロしていた。 「う

          父記録 2023/6/29【おにぎりと金目鯛】