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あの人に会えたら、何を伝えるだろうか?

重松清氏が、2016年から2018年にかけて雑誌に発表した5つの短編を、単行本化した作品を読みました。

子育て、離婚、定年、介護、家族、友達。人生には、どしゃぶりもあれば晴れ間もある。結婚もして、子どもをつくり、そして、いま、家族をなくした。再会は一度別れたからこそのもの。どう分かれたかで、再会の仕方も変わってくる。会いたい人、会いたくない人、忘れていた人。重松清が届ける5つのサプリメント。(単行本帯より)

5つの短編とは、

あの年の秋 旧友再会 ホームにて どしゃぶり、ある帰郷

どの作品も40、50代の男性目線で語られる物語です。

物語に登場する同世代の男性たちはそれなりの過去を持ち、仕事の現場で、バリバリに活躍している年齢ですが、子育てとともに親の介護問題を抱え始める年代でもあります。

本作品の男性たちもそれぞれが様々なものを抱えつつ出会い、交流し、その中で新たな力を得てそれぞれの道を再び進んでいくという、著者らしい短編集になっています。

心に残ったのは、「どしゃぶり」と言う作品。

中学時代を同じ野球部過ごした3人の男性が地元で再会を果たし、現中学生の野球の試合を中心に物語が展開するのですが、その試合が大人達の価値観のぶつかり合いの場にもなって、かなりヒリヒリしたものになります。

私たちもよく経験することですが、ある人のイメージが他人の噂や本人との会話の中で様々に変わっていくこと、人の世の常ではあることです。

「はちまる、ごーまる」という80代の親と50代の子どもの介護問題や、学校まかせの教育で育つもスマホ時代で子育てする40、50代の親たちの悩みなどもうまく作中で語られるのも上手いと思いました。

タイトルの「どしゃぶり」と言う言葉のイメージも最初と最後で大きく変わっていますので、ぜひ読んで見ていただきたいです。


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