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声なき声を描く

おはようございます。
一気に朝井リョウ氏の作品を読みました。
今朝はその感想をお伝えします。

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死んでしまいたい、と思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(『健やかな論理』)。家庭、仕事、夢、過去、現在、未来。どこに向かって立てば、生きることに対して後ろめたくなくいられるのだろう。(『流転』)。あなたが見下してバカにしているものが、私の命を引き延ばしている。(『七分二十四秒めへ』)。社会は変わるべきだけど、今の生活は変えられない。だから考えることをやめました。(『風が吹いたとて』)。尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が映されているような気がした。(『そんなの痛いに決まってる』)。性別、容姿、家庭環境。生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(『籤』)。現代の声なき声を掬いとり、ほのかな光を灯す至高の傑作。(「BOOK」データベースより)

デビュー作から著者の描く世界が好きで、今回の新作も幻冬舎のnoteで少し読みました。

本を手にしてじっくりと作品に向き合うと、若い著者自身も生きにくさを感じているのではと思うほど、リアルな場面が多く登場し、今生きている人の苦悩を共有できない人たちにアプローチしているかに思えました。

6つの短編で出来上がっているこの作品は連作ではありません。

全く違った環境でそれぞれ懸命に生きている人、もう生きるのを投げ出しそうになっている人、新たな命を宿りながら、現実とに苦しむ人、曲がり角に差し掛かって、孤独感に襲われる人など、私たちの身近にもいるような私にとっては若い人たちの声なき声を聞く形になりました。

是枝映画監督が帯で書かれている言葉は、今の若い方に向けられているでしょうが、私も10年後もう1度読んだらどんな感想にいきつくのか、とても楽しみなそんな作品でした。

昨日のnote 公開でこんなメッセージをいただきました。

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次回は吉田修一氏の作品の感想を書こうと思います。お楽しみに。

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