恐怖と歓喜、自由と哀切
恒川光太郎氏がデビューして、どこかの媒体に発表したものの、本に収まらず埋もれていた作品と、アンソロジーに収録された作品10編を収めた単行本を読み終えました。
異才が10年の間に書き紡いだ、危うい魅力に満ちた10の白昼夢。人間の身体を侵食していく植物が町を覆い尽くしたその先とは(「白昼夢の森の少女」)。巨大な船に乗り込んだ者は、歳をとらず、時空を超えて永遠に旅をするという(「銀の船」)。この作家の想像力に限界は無い。恐怖と歓喜、自由と哀切―小説の魅力が詰まった傑作短編集。 (「BOOK」データベースより)
収められている作品は
古入道きたりて
焼け野原コンティニュー
白昼夢の森の少女
銀の船
海辺の別荘で
オレンジボール
傀儡の路地
平成最後のおとしあな
布団窟
夕闇地蔵
あとがきで著者が書かれているとおり、作風も実話怪談から幻想中編までとてんでばらばらな作品です。
今まで恒川作品をあまり読んでいない私にとって、あとがきの『作品解説』として作者のコメントがあって助かりました。
読み終えてコメントを読むと、どの作品も著者の豊かな想像力によって書かれているのだということが分かります。
特に「平成最後のおとしあな」は、平成最後の雑誌「幽」から平成をテーマにした怪談短編依頼で書かれたもので、時代のキャッチコピーを考えだすという方法で明治から平成のそれぞれをうまく描いていて面白い作品でした。
また「夕闇地蔵」は「ゲゲゲの鬼太郎」の好きな著者が、私たちの感覚では捉えられないエネルギーを信じて描いた中編で、シニアの私たち世代が好む(?)作品でした。
私がフォローしているアカウント twitter読書垢の方々が賞賛される恒川作品を手に取りやすい作品集だと思います。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。これからも励みますね。