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あの絵のまえで(15-50)

昨日やっとフィットネスジムへ行った帰り、図書館に行って本を4冊借りてきました。ほっとした気持ちです。

夫が外出し、夕食もいらなかったので早速1冊読み終えました。
その作品が原田マハさんの新刊、こんなに早く借りられると思っていなかったので嬉しくて集中して読みました。

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どこかの街の美術館で小さな奇跡が今日も、きっと起こっている。人生の脇道に佇む人々が“あの絵”と出会い再び歩き出す姿を描く。アート小説の名手による極上の小説集。(「BOOK」データベースより)

テーマは日本各地の美術館に所蔵されている絵画との出会いと人生、6つの短編が収められています。

①ハッピー・バースデー・・広島ひろしま美術館蔵のゴッホ「ドービニーの庭」広島出身で広島原爆投下の日に生まれた女性の帰るべき場所、出会うための場所として美術館が関わってきました。
②窓辺の小鳥たち・・・岡山大原美術館蔵のピカソ「鳥籠」
高校時代から付き合ってきた男が夢の実現のため、国外へと旅立つ日、2人は共通の思い出の絵を思い、彼女のもとへ帰ることを誓うのです。
③檸檬・・箱根ポーラ美術館蔵のセザンヌ「砂糖壺、梨とテーブルクロス」
絵を描くことが好きなのに辛い思い出と日々を送る女性が、この絵を見て新たな1歩を踏み出します。
④豊穣・・愛知豊田市美術館蔵のクリムト「オイゲニア・プリマフェージの肖像」小説家を目指す天涯孤独な女性と隣家の一人暮らしの老婦人との交流と共にこの絵が2人の人生を後押しします。
⑤聖夜・・・長野県信濃美術館東山魁夷館の蔵東山魁夷「白馬の森」
冬登山で一人息子を亡くした夫婦がXmasの約束を10年後に<あの絵>のまえで果たします。
⑥さざなみ・・・香川直島地中美術館蔵のモネ「睡蓮シリーズ5点」
仕事に身体に挫折感を持った女性が、好きな絵のまえに湧き上がる「感謝」で生きる力が蘇ります。

どの作品も著者自身が通ってきたかのような、等身大に近い感覚の女性たちが登場します。

身近だったのは「豊穣」私も老婦人と同じ境遇になるかもしれないと思うと、心にしみた作品です。

また同じ親として、「聖夜」も心がざわつきました。子供には好きなことをやらせてやりたい、しかし死んでは欲しくない、親として当然ですね。残された老夫婦の胸中を考えるといたたまれず、涙が出るほどでした。(表題はこの作品中からとってあります)

著者らしい美術品を使った作品集、今回は好きなテーマでした。


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