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読書備忘録

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2021年8月の記事一覧

雷神

この週末はしっかりと本を読みました。日中の暑さはまだまだ厳しいけれどこちらでは夜はぐっと涼しくなります。まさに秋の読書時間がやってきた感じです。 今までも道尾秀介さんの作品をいくつか読ませていただいていますが、今回の作品は過疎地に残る因習、そして家族の過去、親子の深い繋がりなど、私にとても印象深いものでした。 直木賞作家として、数々エンターテーメント的な作品を書かれていますが、本作は書評などにも書かれているように、横溝正史的な古臭さを持った日本的なミステリー作品になってい

貴方のために綴る18の物語

暑さの中ですが、時折通り過ぎる涼風に、肌が秋に近づいているのを感じています。日曜の昼下がりいかがお過ごしですか? 夫婦で朝寝坊をした日曜日はゆっくりとブランチを取り、部屋で各々好きに過ごしています。 むごくて、いびつ。せつなくて、まっすぐ。 たったひとつの愛なんてない… 帯に書かれたこのフレーズに惹かれて手に取りました。 「珈琲店タレーランの事件簿」の著者がトーハンの「新刊ニュース」に連載したものを今年5月単行本化した作品です。 「143」という字が英語のスラングで文

テスカトリポカ

連日夏の暑さが戻ってきて、少々バテ気味です。皆さんはいかがでしょうか? 先週から読み進めている第165回直木賞と第34回山本周五郎賞をW受賞した佐藤究氏の作品です。 題名のテスカトリポカTezcatlipocaは、アステカ神話の主要な神の1柱。 古代アステカの生贄の心臓を捧げる儀式と、現代の臓器売買が重なっていくというのが本作です。 実は現在もまだ読み終えていません。主人公がカタカナ名だし、周りの登場人部もニックネームが付けられてしまい、内容に入り切るまでに、私は疲れて

音楽家として母として妻として奮闘する姿

直木賞受賞作「テスカトリポカ」に苦戦しているので、ちょっと一息つこうとエッセイを手に取りました。 先般TV番組「王様のブランチ」でも著者本人が出演されていたSEKAI NO OWARIのメンバーであり作家の藤崎彩織さんのエッセイです。 母親となられた著者が親になって知る自分の親や祖母に対する感じ方の変化や、子育ての悩み、子育てする親を取り巻く環境に対する考えなどに私自身も親の一人なので、興味を持って読ませてもらいました。 上手くできないことは、みんなで助け合ってやろうと

スモールワールズ

今朝は久しぶりに朝読書をしてこの作品を読み終えました。 独立した6つの短編が収められていました。 ネオンテトラ 魔王の帰還 ピクニック 花うた 愛を適量 式日 作者の一穂ミチさんの作品は初めてでしたが、とても読みやすかったです。きっと本を読む時間がないといわれるだろう若い方でもすっと物語に入れて、読み終わることができる分量と内容だと感じました。 親として、孫を持つ世代としては「ピクニック」が怖さを感じる作品でしたが、今一番の問題提起をしていると思ったのは「愛の適量」で

夜行秘密

図書館の新刊コーナーに掲げてあって、音楽をベースにした物語ということなので、ちょっと借りて読んでみました。 川谷絵音さんという名前だけは色々と話題になったので、知っていましたが、音楽は聞いたことがありませんでした。 今回彼が率いるバンドのアルバムということで、幸いにもApple musicにあったので、曲を聴きながら本作品を読んでみました。 小説『夜行秘密』 はアルバムの曲順ではありませんでしたが、題名はそのままの短編が並んでいました。 目次 1.夜行 2.左恋

読み終えました

先日noteでサイン本をいただいたことを報告しました。 そしてやっとその作品を読み終えました。 こちらが借りてきた単行本の表紙です。2008年に発表後単行本化、2012年に文庫化されています。 データベースにもあるように犯罪者と死刑制度に真正面から向き合い、生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描いています。長編小説とAmazonなどの説明には書かれていますが、分量から中編小説だと思いました。 施設で育った経験を持つ刑務官の主人公は「死」を目の前にする2人の男と関わ