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読書備忘録

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2020年11月の記事一覧

考える精神は、誰のものでもなく、不滅です(42-50)

今年の夏、書き下ろしを加えられて新たに編成され出版されたとのニュースを読み、図書館の蔵書を調べました。 流石に私の住む田舎町の図書館の蔵書にはありませんでしたが、県立図書館の蔵書に入っていて、借りられるとのこと。8月の新刊を読む前に一度読んでみたかったので、相互賃借という形で借りていただきました。 その作品がこちらです。 「私には個人の意見というようなものはない」―では、彼女の言葉はどこからやって来たのか。「池田晶子」とは、いったい何者か。突然現われて去った孤高の思索者

自分も、社会も、認識しているだけではだめだ。半歩でも前に進もう(41-50)

昨日に引き続き、韓国の作家の作品を読みました。今日はチョ・ナムジュの作品です。 チョ・ナムジュといえば、「82年生まれ、キム・ジヨン」の作家で、皆さんもこの小説名だけは耳にされていることと思います。その著者が、2018年に発表した発表した小説集で、元々は新聞に「彼女の名前を呼ぶ」というタイトルで連載された記事で、2017年の連載後、小説に再構成され「彼女の名前は」と改題され発表されたものです。 セクハラにあった女性が戦い続けるわけとは?地下2階の部屋に住む女子生徒の悩みと

好きにやってごらん。と、そういうことだ(40-50)

今日も持病の通院後、色々となんとなくバタバタしていましたが、皆さんにやっと本を紹介できるので、ホッとしています。 今日読み終えたのは、韓国文学界で高い評価と人気を得ている作家の一人、パク・ミンギュの作品です。 韓国プロ野球の創成期、圧倒的な最下位チームとして人々の記憶に残った三美スーパースターズ。このダメチームのファンクラブ会員だった二人の少年は大人になり、IMF危機と人生の危機を乗り切って、生きていくうえで最も大切なものは何なのかを知る―。韓国で20万部超のロングセラー

網内人 (39-50)

三連休の方も最終日ですね。ゆっくりお休みできているでしょうか? まずはいつも私のnoteを読んでくださっている皆様にお礼を申し上げます。 このnote事務局からのお知らせで、更なるnoteを書く気力をいただきました。これからもよろしくお願いします。 さて先週に借りた本は日本の作品ばかりでしたが、今回の貸し出しで、私は翻訳本をいくつか借りてきました。 今日紹介するのは香港の大学を卒業し、台湾で執筆活動しつつ、日本の文芸誌での作品発表、受賞歴もある陳浩基氏の作品です。

三度目の恋 (38-50)

ここ数年定着した感がある今日は「いい夫婦の日」ですね。といって私たち夫婦は特に予定なく、ぼんやりと過ごしていますが。 読書の方では、いい夫婦の日を待っていたかように川上弘美氏の作品を読み終えました。 すべての女を虜にする魅力的な男、ナーちゃんと結婚したわたし。女性の影が消えない夫との暮らしの一方、わたしは夢のなかで別の女として生きることになる。あるときは江戸吉原の遊女、さらには遙か昔、平安の代の女房として、さまざまな愛を知り……。夢とうつつ、むかしと今のあわいをたゆたい、恋

一粒の砂に集中する、すぐそこに、己の手のひらに宇宙があると烈しく信じて(37-50)

昨夜は持病の投薬により、本当はアルコールを控えないといけないのですが、気持ちが揺れて夫婦で飲んでしまいました。今covid-19の蔓延が止まらないので、田舎町の古い風習の中で私たちは、この町の外に出ることができない状態であることが大きいです。早くワクチンが有効になって出かけることができれば、モヤモヤも収まる気がするのですが。 読書の方は着々と進めています。 今図書館から3冊貸し出し可能の通知が来たので、来週までに今手元にある3冊を読み終えようと頑張って、昨日はこの作品を読み

昨日星を探した言い訳(36-50)

昨日はこちらでも最高気温27度近くを記録し、暖かい1日でした。次第に雨模様となり、今日以降気温は平年並みに戻るらしいので、体調管理がとても難しいですね。 今日紹介するのは「いなくなれ、群青」の河野裕氏の新刊です。 自分の声質へのコンプレックスから寡黙になった坂口孝文は、全寮制の中高一貫校・制道院学園に進学した。中等部2年への進級の際、生まれつき緑色の目を持ち、映画監督の清寺時生を養父にもつ茅森良子が転入してくる。目の色による差別が、表向きにはなくなったこの国で、茅森は総理

愛しのシャロン(35-50)

先週の週末に活字をほとんど読まなかった反動か、昨日は結局借りてきた本2冊読み終えてしまいました。 あの悪夢がよみがえる。悪意がまた忍び寄る。不幸な者をさらに不幸に追いやるために。十三年前の夏、小学四年生の百合は男に誘拐され、五年もの間、監禁された。今は男装クラブで働き、必死に自活する彼女の身辺で、犯人の仮釈放と同時に奇怪な出来事が続く。無言電話、姿なき足音、首を切られたテディベア。そして、ルームメイトが次々に失踪した―衝撃の結末が待ち受ける戦慄の長編サイコ・ミステリー。(「

楽園とは探偵の不在なり(34-50)

今週は2日続けてジムに行きました。帰宅すると何もしたくないほど身体がだるくなります。けれどお陰で眠りにつくのが早くて、今朝から読み始めた図書館の本もすでに2冊読み終えました。 今日はそのうちの1冊を紹介します。 二人以上殺した者は"天使"によって即座に地獄に引き摺り込まれるようになった世界。細々と探偵業を営む青岸焦(あおぎしこがれ)は「天国が存在するか知りたくないか」という大富豪・常木王凱(つねきおうがい)に誘われ、天使が集まる常世島(とこよじま)を訪れる。そこで青岸を待

若者の旅立ちと家族の存在 (33-50)

私の年齢になれば(仕方がないことですけれど)実家や親戚からの知らせが訃報であることが多いです。今朝も従兄の訃報が入ってきました。 私の年齢から彼も高齢に間違いないけれど、実母の年齢を考えるとまだ生きられる年齢だった従兄。5人兄姉のある末の弟として生まれ、看護師の妻の夫として、2人の子の父として、自身の電気工の仕事と婿入り先の果樹農業の2つをこなし生きてきた彼は、心身ともに負担が大きかっただろうなと今は想像します。 夫の運転で婿入り先の自宅へ最後のお別れに行きました。 c

作家藤野可織氏が描く世界(32-50)

今週後半入って、自分の気持ちに逆らわず過ごすことにしました。しっかりと寝坊をして、ゆっくりとブランチを楽しみ、洗濯をこなしつつ読書していました。 そうして読み終えたのは芥川賞作家藤野可織氏の作品です。 すぐそばにいる誰かの物語。あたしの前世はおっさんだった(「前世の記憶」)、体が腐らないよう冷蔵庫の中で眠る少女(「れいぞうこ」)、切手占いに夢中で男の子の存在を忘れた女の子たち(「切手占い殺人事件」)、軽蔑する親友からの電話にじっと耳を傾ける私(「時間ある?」)、凶器を持っ

持続可能な魂の利用(31-50)

新しい週の始まり、月曜日の昼下がり皆さんご機嫌いかがでしょうか? 昨夜はなぜかイライラして、どうしようもないほど不甲斐ない自分に腹立ちながら、読んでいるうちに少し立ちなることが出来た、そんな作品を紹介します。 「どうして親は私に殺しのテクニックを叩き込んでくれなかったのだろう」会社に追いつめられ、無職になった30代の敬子。男社会の闇を味わうも、心は裏腹に男が演出する女性アイドルにはまっていく。新米ママ、同性愛者、会社員、多くの人が魂をすり減らす中、敬子は思いがけずこの国の

また1人難解な作家を知ることが出来ました(30-50)

昨日書いたように、「夜更かしの本棚」の選者の一人が芥川賞作家の円城塔氏でした。 円城塔氏の作品は伊藤計劃氏との共著「屍者の帝国」しか読んでいません。そしてその作品も好きでなかった印象が残っているだけです。 そこで今回はまず円城塔氏の原点でもある芥川賞受賞作を選びました。 無活用ラテン語で記された小説『猫の下で読むに限る』。正体不明の作家を追って、言葉は世界中を飛びまわる。帽子をすりぬける蝶が飛行機の中を舞うとき、「言葉」の網が振りかざされる。希代の多言語作家「友幸友幸」

君たちは今が世界(すべて)(29-50)

久しぶりに朝日を浴びて洗濯物を干して珈琲を入れ、夫が鳴らすJAZZに耳を傾けながらPCに向かっています。 昨夜はこんな帯に惹かれて読んだ本を紹介したいと思います。 ”2020年難関校入試問題で出題多数! 学校の先生が今、いちばん読んでほしい本” 六年三組の調理実習中に起きた、洗剤混入事件。犯人が名乗りでない中、担任の幾田先生が放ったその残酷な言葉は、子どもの世界に終わりと始まりを連れてきた。いじられ役、優等生、『問題児』、クラスの女王の親友。教室での立ち位置がまったく違