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バー・ムーン・ビーチ 恋する夜

夜が来店した。

夜はバランタインの17年をストレートで注文し、ちびりちびりと飲みながら、大きくため息をついた。

夜だって生きてる。失敗もするだろうし、誰かに裏切られたりもするだろう。

私は夜に話しかけた。

「あなたがため息なんて珍しいですね。どうされましたか?」

「恋をしたんだ」

「相手は土星とかオリオン座でしょうか? もし太陽ならやめた方が良いと思いますよ。あなたにはあまりあってないと思います」

「いや、普通の女の子なんだ。図書館で働いている。絵本と詩集が担当で素敵な子なんだ」

「絵本と詩集が担当ですか。でしたらその彼女に詩をプレゼントするというのはどうでしょうか。あなたが無理でしたら、私が今度図書館に行く時についでに渡しておきますよ」

「詩かあ。良いアイディアだね。じゃあ明日の夜までに何か素敵な詩を書いておくよ」と夜は答えた。

そして次の夜、約束通り、また夜が来店し、私は恋する夜から詩を預かった。

「ちょっと自信ないから封筒を開けてここで読んでみてよ」と夜が言うので私は読んでみた。

『僕は夜。

真夜中になると夜の階段をゆっくりと降りて、ぐっすりと眠っている君の夢のところまで行くよ。

静かな夜。

時々聞こえてくるのは星が瞬く音。

星が瞬く音って聞いたことあるかな。

今度耳をすませて聞いてみてよ。

僕が君のために世界を静かにしておくから』

私は感想を言った。

「素敵ですね。あなたの感じがよく出ていますよ」

すると夜が恥ずかしそうに笑った。

#小説

bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。 

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