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ハイチのボッサ・コンボのレコードをめぐる旅

先日、中古レコード屋で、ハイチの「BOSSA COMBO」というグループのレコードを¥680で見つけました。録音は1980年とクレジットされています。

さて、ハイチってどこか知ってますか?

北アメリカと南アメリカの間にカリブ海があって、たくさん島がありますよね。

大きいキューバがあって、その右にハイチがあります。ちなみに左にはジャマイカがあります。

中南米って宗主国や人種構成や歴史が違うと音楽が色々と違います。

ジャマイカの宗主国はイギリスでこんな音楽です。

キューバはの宗主国はスペインでこんな音楽です。


で、ハイチの宗主国はフランスでして、こんな音楽なんです。

さて、僕が見つけたレコードには「BOSSA COMBO」という名前があります。普通に考えて、ハイチでボサノヴァが演奏されることはありえないのですが、でも「これ、もしかしてハイチのボサノヴァなのかな?」と期待してしまいました。

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ところで、ボサノヴァはブラジルのリオ・デ・ジャネイロで1958年に生まれた音楽です。その後、1960年代にアメリカで大流行し、全世界で演奏されるようになりました。

ちなみにこの僕が手にした「BOSSA COMBO」のアルバムの録音された1980年は、ちょうど世界にフュージョン・ブームの嵐が吹き荒れていた時代です。フュージョンはブラジル音楽の要素を取り入れていることが多く、その時期、ハイチでボサノヴァが演奏される可能性は「全くなし」というわけではありません。

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ところで1980年代後半から「世界中の過去の隠れた音源を掘り出して再発見、再評価するレア・グルーブというムーブメント」があったのはご存知ですか?

そしてそのとき、かなり全世界のボサノヴァ(あるいはサンバを基調としたポップス)が発掘されたんですね。

例えばドイツのボサノヴァはこんな感じです。

あるいはアルゼンチンのボサノヴァはこんな感じです。

もちろん日本のボサノヴァも色々と発掘されました。

で、世界中の優秀なDJ達のその「発掘能力」ってすごくて、もうほとんどの音源は掘り尽くされたんですね。

だから2016年に、僕が渋谷の中古レコード屋で、偶然、誰も知らなかった「ハイチのボサノヴァ」を見つけるなんてありえないんです。

そんなことはわかっているんです。

でも、20年ほど前に、一度、トリニダードトバゴのスティールパンとブラジルのバイーアの音楽をミックスさせた、すごく実験的なCDを見つけたことがあって、「中米って実は探せばあるんだなあ」って実感したことがあったんです。

それで、このグループももしかして、「すごく面白いアレンジのボサノヴァかも」って期待したというわけです。

ちなみにこんな人たちが演奏しています。

裏ジャケにはフランス語で解説があるのですが、一応、僕はポルトガル語がわかりまして、こういう裏ジャケのクレジットくらいはパターンが決まっているので、なんとなくわかるんですね。

で、見ると、シンセサイザーとかギターとかトロンボーンとかサックスとかパーカッションの人がいて、後はみんな歌っているみたいなんです。

うーん、これはたぶん、「ボサノヴァじゃない」ですよね。

でも、「BOSSA COMBO」って名前、僕は買わずにいられないんです。買いました。こんな音でした。

さらに検索すると結構有名な人たちのようでした。

中古レコードって難しいんです。自分の今まで蓄積してきた知識を総動員してこんな失敗に終わるんです。でも渋谷で時間や空間をこえた小さな旅が出来ます。すごく楽しいんです。

※音楽に詳しい人であればあるほど、「どうしてその曲?」とか「もっとジャンルやアーティスト名を書けば」とか「その下手な地図、林が描いたの?」とか突っ込みどころあると思います。実は常々、「YouTubeの音楽って点だけでわかりにくいなあ、その点を繋ぐ物語があればもっと楽しめるのに」と思ってまして、それを試みました。音楽は好きだけどそんなに詳しくないという人を対象に「いろんな世界やいろんな時代の音楽を聞くのって面白いよ」と伝えたくて、あえてこういうスタイルにしましたのでご了承ください。

僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

#コラム #音楽

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