人がどうしても「自分で選びたい」と感じる理由

ある人が「おすすめのコース」しかないレストランがすごく嫌いだって言うんですね。

和食でもあるし、イタリアンやフレンチでもありますよね。おすすめのコースしかないお店。

もうそのシェフの料理を食べてください、と言いますか、シェフがその時期の一番おいしい食材を選んで、一番おいしい料理法で仕上げてあるし、絶妙な順番で出すから、お客さまは「どういう料理を食べようかな?」とかってメニューで選ぶ必要はないですよ。さあ、どうぞ、私の最高の料理を食べてください、って感じでしょうか。

これがどうも嫌いなんだそうです。

で、僕が「嫌いなものとかあらかじめ伝えておけばなんとかしてくれますよ」とかって言うと、「いや、そうではなくて、自分で選びたいんです」ということなんです。

まあ自分で選びたいって気持ちもわかるけど、そういうレストランって、「何がどんな風に出てくるのかな?」っていう驚きが楽しみの一部だし、「そんなに選びたいですか?」って僕がいうと、「とにかく選びたい。メニューを見て、何を食べようかなって考えるのが大好きだ」って言うんです。

それで僕が「そんなものですかねえ。僕はそんなに選ばなくても大丈夫ですけどね」なんて話してたんです。

 ※

その後、その人と最近の音楽をどうやって聞いてるかって話題になったんですね。

僕は相変わらず中古レコード屋さんに行って、カル・ジェイダーとかハイファイセットとかブロッサム・ディアリーとかを買って聞いてるって話をしました。

するとその人は、「もう最近はダウンロードで買ってますね。もうレコード店にもCD店にも行く時間がなくて」なんて話してたんですね(ちなみにその人は昔はレコードやCDを山のように買ってました)。

で、どうやって音楽を選んでいるかっていうと、「スポティファイでおすすめの音楽をかけっぱなしにしておいて、中にはすごく自分の好みの曲がかかることもあるから、その時はそのスポティファイからヒモづいているところに飛んで、ダウンロードしている」ということなんです。

ところで僕、あのアップルミュージックのたぐいの、「これ、あなた好きそうでしょ」って勝手に選曲して、色んな音楽を流すのがすごく苦手なんです。

「ああ、それまあ、好きだけどなあ。うーん、しっくりはこないなあ。このアルゴリズム、僕の好みそんなにわかってないなあ」とかって、どうも突っ込みたくなるんです。

でも、それはよくよく考えると、「自分で選んでいないから好きになれないだけ」なんです。

自分でレコード屋で選んでたら、「結構良いじゃない」って感じるはずなんです。

アップルミュージックが選んでいるから、どうもイヤなんです。

 ※

でもこれ不思議ですよね。彼は「料理のコースは選びたい、でも音楽はおすすめでも良い」みたいなんです。

僕は「料理はおすすめでもいい、でも音楽は選びたい」なんです。

 ※

その話を妻にしたところ、妻がこう説明してくれました。

「私は料理も音楽もおすすめでも良いんだよね。結構楽しめると思う。でも、私の着る服を誰かがおすすめで選んでくれたら私は絶対にイヤ。だって服は私はすごく選びたいんだもの。

私は服はすごく大好きだから、自分のセンスで選び取りたいんだと思う。例えばあなたは服は誰かに選んでもらった方が良いでしょ。それは服のことをそんなに好きじゃないからだと思うんだよね。

でもあなたは音楽は自分で選びたいんだよね。誰かにおすすめを選んで欲しくないんだよね。それはあなたがすごく音楽が好きなんだと思う」

なるほど。そういうことなんですね。

冒頭の人は「料理はすごく好きだから自分で選びたい」。

僕は「音楽はすごく好きだから自分で選びたい」。

妻は「服はすごく好きだから自分で選びたい」。

 ※

確かにこれだけ情報が多いと、「ソムリエとかキュレーターとか専門家」に選んでもらった方が楽なのですが、それをこえて自分で選びたいということは「そのジャンルが好きで好きで、さらに選ぶことが出来るくらいそのジャンルに詳しい」ってことなんです。

まあそりゃそうだろ、と言わればそれまでなのですが、「どうして人はおすすめでいいのか」、あるいは「どうして人は選びたいのか」の違いを見つけた気がするのでここに記しておきます。

#コラム

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この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「最近どうも太ってきて」です。

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林伸次

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渋谷でボサノヴァとワインのバーをやってます。http://www.barbossa.com/  『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』https://goo.gl/u2Guu1 韓国人ジノンさんとのブログhttps://goo.gl/B9MH6n