ジャスト・フレンズ

#小説 #超短編小説

「ねえ。やっぱり私たちもうダメだと思う。別れよう」

「そうだね。君のこと本当に好きだったけど、このままずっと一緒にいるとまたぶつかって喧嘩しちゃうね」

「私も今でもあなたのことは好きよ。でももう一緒にいる意味はないと思う。明日、土曜日だから私、この部屋の荷物片づけて実家に送るわ」

「明日? まあ早い方が良いよね。二人で買った食器や本とかはどうする?」

「明日、考えようよ。今日はもう最後の夜だから出来ればそんなに言い争いたくないし、あ、そうだ、あのパリで記念に買ったワインも今日、開けてしまおうか」

「いいね。ミケはどうする? ミケはたぶん君のことの方が好きだよ。でも猫は引っ越すのが一番つらいんだよね」

「ミケかあ。ねえ、時々、ミケに会いに来て良い?」

「もちろん良いよ。ミケも喜ぶと思うし」

「あ、でもあなたに新しい恋人が出来たらどうしよう。あなたのことだからすぐに恋人出来るわね。それなのに昔の女が猫のために時々家に来るって変ね」

「そこまで想像できるのってなんか君らしいね。良いじゃない。俺たち、友達になろうよ。俺、君と友達になるのなら上手くいきそうな気がする。今までみたいに仕事のことなんかもお互い相談しあおうよ」

「え? あなたとお友達になるの?」

「そう。もう好きとか嫌いとかそういうのは一切なし。お互いの恋人も紹介しあって、お互いの結婚式にも出ようよ。俺、友人代表で挨拶するよ」

「本気で言ってるの?」

「もちろん。君とは良い友達になれそうな気がする」

「そうかあ。じゃあ今日から恋人はやめて友達ということね」

「うん。ほら、これだとお別れじゃないし、あんまり悲しくないよ。今日から友達。ミケも喜んでくれるよ」

「なんかあなたらしくて可笑しくて涙が出そう」


僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

この記事は投げ銭制です。この後、オマケでこの話を書いた経緯をすごく短く書いています。

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