なぜ日本だけいまだにCDやレコードが売れているのか

先日、ブラジルのある音楽ジャーナリストからインタビューを受けました。

「なぜ日本でボサノヴァは人気があるのか?」というお決まりの質問などの最後にこんな質問がありました。

「なぜ、日本だけ未だにCDやレコードが売れているのか?」

これ、色んな意見や説があるのですが、僕はこう答えました。

「日本は島国で、大昔から新しい文化は海の向こうからやってきます。古代は中国大陸や朝鮮半島から、16世紀にはポルトガルから、経典や仏像や聖書や銃といった様々なモノが入ってきました。

私たちは海の向こうからやってきた新しいモノを大切に扱い、研究して、似たようなモノを作りました。

海の向こうからやってきたモノは、自分たち日本人が作ったモノではないので、再現不可能ですし、二度と手に入らないものなので、多くのモノは大切に保管されました。

実際、8世紀の日本では、海の向こうからやってきたモノを正倉院という場所に大切に保管し、現在でもそのままの状態で残っています。

そして、ロックやジャズ、クラシックやボサノヴァなんかも全ては海の向こうからやってきた『新しい文化』です。

そしてその『新しい文化』が記録されている『CDやレコード』はどうしても僕たち日本人は触って愛でて、保管しておきたくなるんです。

もう日本製のロックやボサノヴァが生産されていても、結局、僕たち日本人は海の向こうからやってくる『新しい文化が宿ったモノ』を保管しておきたくなるんです。

だから日本はいつまでもCDやレコードが売れるんです」

どうですか?

まあこの説があってるかどうかは別として、やっぱり僕たち日本人はいつまで経ってもCDやレコードを世界から買い集め、もちろん自分たちでもプレスし続け、それらを消費することでしょう。

僕は「ガラパゴス」と揶揄されても、これをずっと続けると日本が後の時代にちょっと面白い場所になるんじゃないかなって思います。

今、秋葉原に行けば電気に関するモノは何でもそろいますよね。神保町に行けば探している古本は見つかります。

そんな風にいつまで経っても、日本はCDとLPを集め続けて、プレスし続けると思うんです。

するといずれは世界中から「音楽好き人間」が日本にCDやレコードを買うためだけに集まってくると思います。

その時こそ胸をはって、「やっぱりモノって良いよね。海の向こうからやってきたモノは大切にしたいね」と海の向こうからやってきた人たちに告げましょう。

              ※ 

今から50年後。2066年のある日曜日の午後。インターネットで知り合ったロシア人とインド人が渋谷のレコード屋で初めて出会い、二人はコレクターだけにしかわからないレーベルの見分け方やジャケ違いの存在なんかの話をしています。

するとインド人があるCDを棚から取り出して言います。「え? この2030年代に流行ったアーティスト、配信だけだと思ってたらCDになってたんだ」ロシア人が言います。「やっぱり日本はすごいね。2050年にiTunesがテロリストに狙われて、全部データがなくなってしまうっていうのを予測してたんだよね」

僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています。今日は「渋谷の隠れた名店シリーズ」です。

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