世代の違いのことと山本のりこの「トレン・ダス・コーリス」について
先日、高校1年の姪っ子が渋谷に来たから、妻が何かランチでもと思って「何が食べたい?」って聞いたら「お寿司!」って答えたそうなんです。
最近の子供って一番好きな食べ物が「お寿司」なのってよく話題になりますよね。
それは知っていたのですが、さすがに渋谷みたいな場所に来たら「パスタとかピザ」だと思っていたので、びっくりしました。
というのは、うちの娘は26歳なんですけど、やっぱり外食の時は「パスタやピザ」を喜ぶんです。そういうのが「ハレの場」って感じていると思うんです。
こういうちょっとした世代の違いで「嬉しいと感じる食べ物が違う」ってことありますよね。
それってどうしてなんだろうとずっとずっと思ってまして、これって「親がお洒落とか贅沢だと思っている食事を子供は喜んでいるのでは」と気がつきました。
僕がレコファンというレコード屋でバイトを始めたとき、今の妻と川上さんという上司と3人で「昼ご飯、一緒に食べようか」ということになったんですね。
そしたら妻と川上さんはタパスタパスというパスタ屋さんを選んだんです。
ちなみにタパスタパスは20数年前には下北沢のその店しかなく、すごくお洒落な存在だったんです。
僕もさすがに22歳だったので、女の子とパスタ屋にデートに行くくらいのことはしていたのですが、「普通の仕事の休憩時間にパスタを食べるなんて、なんてお洒落なんだろう」って感動しちゃったんですね。
若い人は本当にわからないと思うのですが、ついこの間まで「スパゲティ」って呼んでいたモノを「パスタ」って呼びはじめて、「パスタにスプーンを使うのは~」と語ったり、「本式のカルボナーラは~」なんて語ったりするのって、なんだか新しかったんです。
その親の感覚を子供が引き継いでいるのではって感じました。
というのは、僕は小さい頃は「焼き肉とかハンバーグとかステーキ」といった「お肉がっつり」が「外食ならではのハレの場」だったんですね。
それって親が小さい頃は「お肉なんてめったに食べなくて、お肉は貴重だ」って感じていたからのような気がするんです。
そして今の親は「お寿司がステーキよりパスタより贅沢」って感じているのではと思いました。
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音楽に対する感じ方もそれと似ていることがあるような気がしています。
僕の親は映画音楽がすごく好きだったんですね。ストリングスがたっぷり入って、甘くて切ないメロディがいっぱいのあの音楽をたぶん「すごくお洒落だ」と思って聞いていたはずなんです。
そして僕もどういうわけだか、ストリングスがたっぷり入った甘くて切ない音楽がやっぱり大好きなんです。
音楽について文章を書くことを仕事にもしているので、出来るだけいろんなジャンルやいろんな時代の音楽を聞こうとは思っているのですが、やっぱり1960年代後半から1970年代前半までの「あのサウンド」が心に響くんです。
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山本のりこさんが新しいアルバム「トレン・ダス・コーリス」を発表しました。
僕は常々、山本のりこさんは日本のボサノヴァ歌手の最高峰だと思っていまして、何かとbar bossaで演奏もしていただいています。
のりこさんのアルバムは毎回どれも素晴らしいのですが、今回のアルバムは完全にノックアウトされました。
フルートとエレクトリック・ピアノの使い方と録音の質感が僕の好きな世界そのまんまなんです。
ボサノヴァってブラジルのリオ・デ・ジャネイロで1958年に生まれた音楽なのですが、その後、全世界で様々な形に発展して、とにかくいろんなサウンドがあるんですね。
そのどれもが僕は好きなのですが、やっぱり1960年代にブラジルで録音された「音数が少なくて、陰があって、質感がガサガサしてて、小さくて閉じた世界のアルバム」が好きなんです。
その肌触りがこの「トレン・ダス・コーリス」はすごくあります。
カヴァーは個人的に好きな曲ばかりだし(シコ・ブアルキのニカノー!)、のりこさんのオリジナル曲(「あなたに会いに」のコーラス具合や「回れ風車」のA&M感も最高!)もすごく良いです。
本気でオススメいたします。是非!
アマゾンでは2月1日に発売です。 http://goo.gl/cmXbL9
今は山本のりこさんのHPで買えます。 http://www.noriko-yamamoto.com/disc_6003.html
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