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バー・ムーン・ビーチ 第2の恋

今夜は若い男女が来店した。

女性はアマレットをアイスティーで割ったものを、男性はブッカーズをオン・ザ・ロックで注文した。

二人は「乾杯」と言い、恋について話し始めた。

「恋はね、会いたいことなの」

「うん」

「会いたいけど、すごく会いたいんだけど、会えない状態のことを恋って呼ぶの。メールが来てたりはするんだけど、でも会えなくて、はあ、会いたいなあ。会いたいって思うのが恋の正体なの」

「相手もそう思ってたら、会えるよね」

「そう。相手も恋してくれてたら、たくさん会えるようになって、そしてじゃあずっとこのまま死ぬまで会ったままにしようかっていうのを結婚って呼ぶの」

「なるほど」

「そしてね、ずっと会ったままだといずれ恋は消えるの」

「どうして?」

「だって恋の正体は、会いたい、なんだもの。ずっと会えてると、恋は消えるに決まってるじゃない」

「なるほどね。それで二人の気持ちはどうなるの?」

「ずっと二人でいると嫌いになることもあるから、たまにお互い一人で行動するじゃない」

「うん」

「そんなときに、お花を見たり、映画を見たり、音楽を聴いたりして、あ、あの人、こういうのすごく好きなんだよなあ、見せたかったなあって思うことってあるじゃない」

「うん、あるね」

「それをね、私は第2の恋って呼んでるんだけど」

「第2の恋」

「そう」

そして二人は同時にグラスに口をつけた。

#小説

お酒やバーについての僕の本です。『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』 

bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。

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