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【7章】 遠い未来は過去へ戻りつつある

人間は課題解決を繰り返す

大きなスパンで歴史を見ると、社会システムは古代まで原点回帰をしている。前述の通り、人々が何を目的として課題解決をしたのか歴史を振り返ると、一歩先の未来を予測できる。人類は何千年にもわたって“課題解決”を繰り返したことで、周りまわって元の社会システムに戻りつつあるのだ。

大量生産大量消費社会は終わりを迎え、適量生産適量消費をする社会へと戻る。“とりあえず生産する”のではなく、個々のニーズに合わせてものを生産する。このシステムが十分に普及した後、キトン(古代ギリシャの衣服)のような、合理性/利便性を追求し、細かいところで差別化を図る身なりが一般化するだろう。そしてついに、“身体のサイボーグ化”が人々に受け入れられる。そう、かつて人類がスカリフィケーション、刺青、コルセットや纏足などの身体改造を行ったように。

上記のように“未来は過去へ戻りつつある”が、
やはり同一ではない。ではどのような差異があるのか。
ここで、古代と未来を大まかに比較してみよう。

古代と未来の明るい相違

古代では、個々のユーザーに合わせてものが製造されることが一般的だった。しかしテクノロジーが発達していないという理由もあり、膨大な時間や手間がかけられていた。
特に古代ギリシャでは、人々は奴隷に労働を任せ、余暇をスポーツや音楽、観想(心静かに物思いに耽ること/テオーリア)など精神的に価値があることを楽しむ生活を理想としていた。また観想を通してアルケー(世界の本質や原理)が何であるか求めようとした。これが哲学の誕生だった。
上記のことから、生存するためだけでなく、労働せずとも快適に過ごせるライフスタイルを成立させるために、ある程度の集団行動を余儀なくされていた。地域社会や血縁などのしがらみがあり、関係性を維持するためにしきたりなどを守る必要があったのだ。

一方消費社会を経て、さらにテクノロジーが発達した暁には、製造時間や手間をかけずとも、ユーザーに合わせて製造されることが可能になる。サプライヤーとユーザーの垣根がさらに曖昧になり、全ての人がよりサービスなどを手軽に利用できるようになる。富裕層だけでなく、多くの人々は家事などの日常の雑務から解放され、時間をより自由に使えるようになる。その自由な時間で、人々は観想したり、新たなことに挑戦したり、新しい価値観を提示する活動を楽しめる。これらのことから、未来は今よりも個人の自由が確立されるだろう。個々の幸福を第一優先し、誰とどんな関係を築き、どのようなコミュニティに属し、どのような人生を送るのか自ら選択できるのだ。

かなりラフに古代と未来の比較をしたが、今回はこの程度に止めて、詳細に関してはまた別の機会に書こうと思う。
上記から言えることは、現在技術革新により、利便性と個人の自由を維持しながら、消費社会が生み出した問題の解決ができるようになりつつあるということだ。

もちろん、下記のような懸念点もある。

・多くの選択肢の中から選択することを繰り返し、選択という行為が嫌になる。
・自由な時間を得たことにより暇を持て余し、結果的に人生の満足度が低下する
・誰とどんな関係を築き、属するコミュニティを選択できるがゆ
えに、孤立してしまう

しかし、これらのの自由度さえも、コントロールできるようになるのではないだろうか。つまり、やりたいときに、やりたい分だけ、やりたいことだけできる。気分で変えられる。そんな未来が、きっと来る。

各々の自由を確立しながら、ゆるくつながる。便利だけれども、必要なリソースも限りなく少ない。かつての奴隷のように、犠牲になる人もいない。社会システムは原点回帰しつつも、古代とは比べものにならないほど便利だ。そんな“ちょうどいい”生活を送れる“適度社会”が、目の前まできている。未来の姿は、過去と類似しているかもしれない。

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画像キャプション:何千年の時を経て、社会システムは“元に戻りつつある”。なぜなら原点が同じだからだ。

“ファッション”で社会を読むことは、
人間の本質を解くこと

このように、「“ファッション”(=人々の身なりや流行など)を考えること」は、一概に短絡的で狭義的だと言い切れない。私にとって、それは社会の前後関係を学び、私たちが置かれている立場を直視し、未来を考察することだ。衣服は最も人間に密接なものの一つで、その時々の社会状況を映す鏡のようなものだ。思い出して欲しい。人類の長い歴史の中で、政治や経済が生まれる前から衣食住が存在していたことを。

私たちは社会的な生き物で、なんらかの形で社会に属さない限り、生きてはいけない。複雑化したこの社会では、政治、経済、新たなテクノロジーなど、カテゴライズされた観点から未来を予測することが多い。しかし、人々が分野を細分化し研究を続けたがゆえに、それらを中心に世界が回っていると錯覚を起こしているのではないだろうか。つまり、人間がそれらを生み出し利用しているという一番大切な前提を、忘れてしまっている人が多いように私は思える。
人類は幸福追求のために生きている。いくら技術発達したとしても、それを利用する人々が幸せでなければ、意味がないと私は思う。
未来を考察するには、私たちの根幹と言える物事(社会構造や人々の変化)を把握することが重要だ。

また上記と同時に、カテゴライズされた“狭く深い”研究を続けるだけでは、革新の限界を感じる。そう、今大切なことは「K-HOLE」が提唱するようにジャンルを超えて繋がることだ。

“ファッション”を考えることは、人間について考えること。
それは社会や未来について考察することにつながる。

きっと未来は明るいことばかりではないはずだ。環境問題や人種差別、ファシズムなど、今私たちの前に立ちはだかる課題は多い。既存の経済システム自体も崩壊しつつあり、世の中は数字だけで語ることはできない。だからこそ、せっかく未来を考察するのなら、信憑性があり、身近で、ワクワクするような方法でしたい。私はそう思う。

【関連書籍】
20世紀ファッションの文化史―時代をつくった10人
モードとエロスと資本
ファッションで社会学する
堕落する高級ブランド  (Deluxe: How Luxury Lost Its Luster)
ファッションの文化社会学  (Fashion: An Introduction)
性とスーツ―現代衣服が形づくられるまで
  (Sex and Suits: The Evolution of Modern Dress)
有閑階級の理論  (The Theory of the Leisure Class Kindle paper book)
モードの体系――その言語表現による記号学的分析  (Système de la mode)
サブカルチャー―スタイルの意味するもの
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Mac Book Pro、iPadとiPhone、そしてインターネット。電車で座らせてくれた人たち。Grimesのrealiti。市川春子の漫画。赤入れをする時に重宝したフリクションと、何度も原稿を印刷したプリンター。3Dプリンターは物を具現化してくれるけれど、インクジェットプリンターは、それ以上の夢を見させてくれる。

井上雅人さんと蘆田裕史さん。学生時代に御二方に出会っていなければ、こんなnoteを執筆しませんでした。
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Misaki, Waka, Yuuka, Rina, Ema,Yoko, Yozo, Misako.
多大なご協力を、ありがとうございました。
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