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川柳「潔」

冤罪で潔白の身が裁かれる


潔斎しこれから推しに会いに行く


高潔なモンゴルの血で沸く土俵


潔癖な性にもやがて垢がつく


潔く避けて行かれぬ恋の沼


潔くなれぬ苦さも味な恋


目に見えぬウイルス避けて血の眼


風貌の美醜で決まる清潔さ


簡潔に完結狙うツイッター


髪と髭容姿不潔な俺は損


潔く夢あきらめて籤を買う




【後記】

「潔」という概念から、秩序や慣習、区別や境界の存在を私は思い浮かべるようである。それらの外面的な部分と実態の差異に疑問を感じてもいる。

頭の中は、ぐちゃぐちゃだ。いろんなことを考える。さっき思いついたことを、もう否定している自分がいる。その境界はあいまいだ。どこからどの領分だと定義するのも難しい。それでいて、その定義づけへの挑戦を肯定する私がいる。徒労はいただけない。挑戦を美化するつもりもない。やってみて分かることもある。

何もしないで得るものってなんだろう。現状の冗長がこの先も続く予感くらいか。そのつまらなさが、未来を変えようとこのからだを動かすこともある。

ある概念を提示されたとき、その反対を私は考えようとする。「潔」の号令が声高に響くほど、私は不潔を指向するのかもしれない。その単純さについていえば、私も純潔なほうなのだ。

青沼詩郎

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