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あの時の修学旅行の話をしよう④飲酒

修学旅行三泊四日。三泊目は、フェリー泊であった!考えたの誰だ!俺たち(教員団)だ!

「ほとんどの生徒が、修学旅行じゃなきゃフェリーなんて乗りませんよ」
「遠くから一気に帰ってくるのは、船中泊が効率いいですよね」

…考えすぎて、頭に虫が湧いていたのかな?

案の上の事態になった。
「せんせい…きもちわるい…」
船酔い続出。
多目に用意していた酔い止めがなくなるかと思った。

だが、海はおだやかで、
大半の生徒は元気。
一日目の自由行動で遅刻した連中などは、
三日目では誰も遅刻しなかったし、
(最後のグループ、すげぇ必死に走ってきて間に合った)
珍しい船旅にヒャッホウしていた。

さて、教員団はヒャッホウどころじゃないぞ。
緊張と寝不足はピーク。
船酔い生徒への対応もあるし、ちょっと不機嫌だったかもしれない。

夜の巡回で、
私「消灯ー。寝ろ!」
というと、楽しい修学旅行が終わってしまう生徒のひとりが、言った。

「まぁまぁ。先生たちだって、夜は(酒を)飲んだりするんだろ?」

禁句だったー!

「飲まねぇよ!私のどこが飲んでるんだ、ええ?!」

今、考えると、ここまでキレることはなかったんだが、疲れていたんだな。
ええ、徹頭徹尾、修学旅行中の夜の宴会なんざ、存在しませんでした。
それどころじゃねぇや。
旅行会社からの添乗員的には、ちょっと困っていたらしい。
次の仕事につなげるフックが、全然ないぞ、この教員たちは。

事件は翌日起こった。

忘れ物チェックをしていた教員が、男子6号室から、
紙袋に入った日本酒の空瓶を発見したのである。

旅行会社は、修学旅行を終えた先生方のために一席設けていたんだ、実は。

「キャンセルしてください!どうぞお帰りください!
我々の仕事は終わっていません!!」

男子6号室16名、解散後もその場に残れ。

霧雨が降っていた。

人通りが少ないところに移動した。

教員団12名、男子生徒16名。
事情を生徒指導部が話す。そして、誰だ!と。

生徒は全員、まっすぐ教員団を見ている。
射抜くような視線。
誰も、目をそらさない。

我々は直感した。この中にはいない。

指導部の教員が言った。
「飲んでないんだな?」
「飲んでません!」
最前列正面の男子生徒が言った。6号室室長である。小柄な生徒だ。
眼の中に、怒りが燃えているのがわかる。

「わかった。すまなかった。
腹に据えかねるだろうが、ここは曲げて帰宅してくれ。
我々も、このままで終わらせるつもりはない。」

生徒が立ち去るのを待って、
「…どこか、喫茶店にでも、行きますか。」

濡れた髪。
疲れきった顔の
押し黙った集団。
見たら異様だったろうな。

生徒指導部教員が、口を開いた。
「あいつら(6号室)の無念は、晴らさにゃいけません。」
そのために、できることは何か。
教員団が、重い口を開いて、ぽつりぽつりと意見が出た。

そして。

翌日、緊急に臨時の学年集会が行われた。
生徒指導部教員が、
「昨日、6号室にこれがあった!」
と、紙袋を示す。中身を取り出す。日本酒の空瓶。

「6号室が解散後居残りさせられたのは、これが理由だ!
犯人は、飲んだ酒瓶を帰り際6号室に放り込んだ!

俺は、そういうことをする奴は許せん!

規則違反をして、自分がやったことの責任を負わず、他人になすりつけた。
自分の荷物に入れて持ち帰ることもできたはずなのに、だ。

そういう卑怯者が、学年集会を開いたから名乗り出るとは思って無い!

だが、考えてみろ、
6号室は全員、
濡れ衣を着せられて!
雨の中!
他の生徒が解散する中に残されたんだぞ!
その悔しさが分かるか!

犯人は、人の心があるのなら、6号室全員に謝れ!

昨日残された16人は、全員被害者だ。
我々教員の責任だ。
すまなかった!

修学旅行引率の教員が全員、一斉に生徒に向かって頭を下げる。

前日の話し合いで決まったことは、
犯人はおそらく名乗り出ることはない。
学年集会は、犯人捜しにしてはならない。そんなことは無意味だと、生徒だってわかっている。
それよりも、残された生徒16人の気持ちに答えるものでなくてはならない。
教員は、全員、絶対に自己弁護しないこと。
学年全員の前で、生徒に謝罪する。
それしか、誠意を見せることはできないのではあるまいか。

犯人が名乗り出ることも、6号室に謝ることもなかった。

そんな形で終わった修学旅行、慰労会なんて誰も言いださなかった。

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