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あの時の修学旅行の話をしよう②幽霊

激録!修学旅行24時!!
そこに、旅行業者の接待が入る隙間はカケラもなかった。

二日目は団体行動なのだが、
前夜、喫煙で男子生徒がひとり、謹慎処分に入っていた。
私が泥のように寝ている間、
宿泊棟の巡回で、当番の教員に見つかったのである。

朝イチは、生徒指導会議だー!

「班を離れて、教員と見学」
「ですね」

次の目的地への移動もあるんだから、
どこかに閉じ込めておくわけにもいかぬ。
生徒は緊張するだろうが、教員も緊張するんだぞ。
団体行動を見ながら、ひとりの生徒を別に見学させるんだからな。

幸い、その日の見学先は、
寺じゃなかったから僧侶に叱られることもなかった。

問題は、「魔の二日目」であること。
過去に、

沖縄修学旅行でハイになった生徒が岩場で飛び込んで頭部強打、
頭がい骨骨折で命はとりとめたが記憶障害を起こしたのは
二日目。

北海道修学旅行で女子風呂を覗こうとした男子生徒が足元すべらせ、
右足をざっくり裂傷したのも
二日目。

教員団の緊張感、ダダ上がりである。

私の生徒宿泊棟巡回当番は、その日は丑三つ時であった。
あー、夜食におにぎり一個食ったような覚えがかすかに…
接待だの宴会だのの雰囲気が微塵もなかったのは覚えている。

「せんせい~…ゆ、ゆうれいがでた~…」

男子部屋である。
修学旅行定番の「怖い話」をしていたら、
ガラス窓の外を白い影が通って、
そしたら、部屋の一人が、意味不明なことを言って、

窓から外に歩いて行こうとした、と。

必死で止めた。
部屋は霊だ、霊が出たとパニック。

えー、男子高校生と言うと体格は大人並みなんだが。

私ともう一人の当番の男性教員が行ったら、
男子は二人ずつ一つの布団にもぐりこんで、
「怖いよう~怖いよう~」
と、言っていて、
窓から出ようとした生徒は、しくしく泣いていた。

ナサケナイな、オイ。

ところで、もう一人の当番の男性教員Fは、転職組で、
「教師の前は、ダム、作ってました」
という経歴の人。当然、ガタイがよい。その彼が、
「もう、お化けは消えた!いないから寝ろ!」
と、言い、
私が、
「霊感あるの、誰?」
「俺です」
「霊の気配、消えてるでしょ。」
「…消えてますね」
「F先生、魔除けだから。霊をはじく体質だから、もうこの部屋は大丈夫だよ」
と、言って、泣いている男子生徒だけは、ロビーに連れて行った。

落ちつくまで、私とF先生で話を聞いた。支離滅裂だったが。
落ちつかせてから、部屋に帰した。

F「あの生徒は、随分なにかを溜め込んでいるんじゃないですか?」
私「うちのクラスの、留年生なんですよ。一学年を二回やってます。
留年生はクラスメイトに恐れられることが多いけれど、
そういうタイプじゃないんで、むしろ軽く扱われています。
本人がねぇ、自分の内面を言葉で言い返せるタイプじゃないんで、
学級日誌とか見ると、ああ、溜め込んでるなぁ、とは思っていましたが。」
F「俺、お化けとか幽霊とか全く信じていないんです。
自分が見た物しか信じません。」
私「あの生徒は、自己暗示だと思いますよ。狐憑き、って状態でしょう。
ストレスが出たんだろうなぁ。」

と、巡回当番の時間は過ぎていたがロビーにいたら、

「せんせい~…ゆ、ゆうれいがでた~…」

ゴーストバスターズ!!

またも男子部屋である。
修学旅行定番の「怖い話」をしていたら、
部屋の鏡に長い髪の女が映って、
そしたら、部屋の一人が、全身硬直して動けなくなった、と。

F「もう、お姉さんは消えた!いないから寝ろ!」
と、言い、
私が、
「霊感あるの、誰?」
「俺です」
「霊の気配、消えてるでしょ。」
「…消えてますね」
「F先生、魔除けだから。(略
(硬直した生徒に)もう、動けるでしょ、右手握ってー肘からあげてー左ー首を動かしてーそうそう」

ロビーにて、
私「いわゆる『金縛り』ですねぇ。やっぱり自己暗示でしょうね。」
F「私は知らない生徒ですけど」
私「私も詳しくは…教科は担当しています。
音楽やってて感受性が鋭いです。」

幽霊騒ぎ、私の持論は、
グループに、自称霊感の強いメンバーがいて、それが霊媒師。
怖い話で騒ぐタイプが多いと、
暗示にかかりやすいメンバーが「憑かれた」状態になる。
暗示を解いてやれば、解決する。
霊媒師役の生徒に「霊はもういない」と言わせるのが要。

F「あ、なんか明るくなってきましたね。朝ですね。」
私「朝ですねぇー。」
F「寝る時間ないなぁ、でも、休憩しときましょう。」
私「お疲れさまでした。」

一部屋目を解決した時点で巡回当番の時間はとっくに過ぎていて、
次の当番も見回っていたけれど、二部屋目の事件も、
たまたま私とF教諭がロビーにいたので駆けつけることになり、
ゴーストをバスターしているうちに、

朝になったというわけだ!

私らだけが特別じゃない。
修学旅行の引率なんて、そんなものである。
教員団、寝不足と緊張の中、三日目を迎える。

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