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弟とNORIKIYO見た

集合そして客層

8月23日のことだ。転勤で仙台在住ヒップホップオタクの弟と川崎クラブチッタに集合し、NORIKIYOのライブを観に行った。
去年出た「馬鹿と鋏と」、そして今年出た「平成エクスプレス」の合同ツアーファイナルだ。
NORIKIYOはリリースペースがおかしい。前者のツアーを回っている最中に9曲入りEPを出し、その1か月半後に後者のアルバムを出した。さらに最近はAKLOというラッパーとの共作でアルバムを出した。すべて1年以内の出来事だ。どうかしている。

KREVAのワンマンには何度も行ってるけど、客層までゴリゴリのヒップホップのライブに行くのは初めて。
到着するとイメージ通りすぎるヒップホップの客層。
皆さんもヒップホップ好きな人の服装を想像してほしい・・・はい正解。はいそれも正解。あーそんなのも正解正解。全員正解!

そういう人たちが1000人以上集まったのが今夜のNORIKIYOのライブなのだ。

開演そして全力の「被せ」

ヒップホップのライブには「被せ」という文化があることは弟から教わっていた。ラップに欠かせない韻だったり、各々が最高だと思う歌詞の部分を客も一緒に「被せる」というものだ。
一緒に「歌う」と言われると必ずしもメロディーがあるような印象を受けるところ、被せるとは先人たちもなかなか上手く表現したものだ。

チケットを買ったのが約半年前ということもあり、新譜を中心に被せたいところが山積していた。
中でも、NORIKIYO沼にどっぷりハマるきっかけとなった「何だそりゃ?」は全バースラップできるくらいに聴き込み、もはや暗記している。

この曲も「とっておきのラブソングを」というMCからトラックが流れ始め、最高潮に達したおれはほとんどの韻を被せた。
特に2:21あたりの「おじさんテキーラより家で飲む養命酒!Wow!」は、なんて最高なパンチラインだと思っていたので、長いけど全部被せた。

新譜のツアーと謳っているだけあって、聴き込んでいた楽曲が次々とプレイされる。

その結果どうなったか。
3曲目で喉が枯れた。
明らかに飛ばしすぎた。

どうしようもねぇ!

途中でAKLOが出てきて、共作で一番盛り上がる「百千万」という曲をプレイしてるときに、般若とZORNが登場してブチ上がるバースだけで固めたラップをしたときは狂喜乱舞。
まだラッパーの顔はほぼ分からないけど、AKLOは雰囲気がすごくあるし、般若とZORNはラップがめちゃくちゃうまいし聞き取りやすくて、この3人は別格な気がした。

この最後のZORNのラップが特にやばい。
【わざわざ格下を見ないでしょ 俺が葛飾のリヴァイ兵長】が当日もハッキリと聞き取れて、その場にいた全員が「うおああああ!!!」ってなった。この韻の固さ(11音)はすごい、すごすぎる。

BRON-Kが登場

今回のライブは、登場するゲストが事前に告知されていた。おれが愛してやまないBRON-Kがアナウンスされたときは、当日の楽しみ度が500倍くらいになった。
アルバムに参加しているゲストは全員出てきたと思うが、BRON-Kはラッパーとしてほぼ活動していない。
当日ひっそり出てこなくても不思議じゃないくらい活動していないから、BRON-Kのバースとともにステージに現れたとき、おれはこう言った。

ぶおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
うーわうわうわ!!

それまで出てきたゲストにはヒップホップの客っぽく「フゥ~!」とか言って過ごしてたのに、BRON-Kが出てきた瞬間は心の底から、いや魂の根源からの咆哮が出た。

アルバムではBRON-Kの出番は、4分ある曲のうちの1分くらいだ。
しかし、最大の持ち味と言われているメロディに乗せたラップを披露し、1回目のサビにはなかったメロディをつけて歌い上げ、曲を全部持って行ってしまうという役割を果たしている。

普通は「被せ」で盛り上がる時間ではないが、おれら兄弟だけ、肩を身体の内に向け合いひっそりと「木戸新造~木戸ォ~」と被せた瞬間が最高に楽しかった。
木戸新造とは、BRON-Kが最近になって名乗り始めた悪ふざけネームである。
聴いたときにウケながら「なんで木戸で挟んだんだよ」と弟にLINEを送ったら「韻踏んでることに気づいて嬉しくなったのだろうか」と返ってきた瞬間、暗黙の了解で「被せ」が決定したようにも思う。

おれらはそんな。そんな兄弟。

しかもアルバムの曲のあと、BRON-Kの名曲Paper, Paper(feat. NORIKIYO)まで聴けた。サビで熱心にプチャヘンザしてた20人くらいとは全員仲良くなっておくべきだった。

3時間にも及ぶライブが終了

19時半から始まったライブは、なんと22時半まで続いた。

さすがに3時間もやると思っていなかったし足腰にきたが、それ以上に、今後の人生に影響する貴重な時間を過ごせたと思っている。
この「被せ」の文化は自分に馴染んだし、臆することなく楽しめたのが嬉しかった。それもこれも色々な日本語ラップを仕込んでくれた弟のおかげである。

終演後は終電ギリギリまで川崎駅前で弟と居酒屋で飲み、お互い実家にいるときはまず見せないテンションで話し続けた。
まさか弟と「あの曲のとき、かなりシブいとこで手上げたなと思った!」「あ~、あのときは【島国 ジェーピ~】の【ジェーピ~】の部分かな」などとヒップホップ的な会話を繰り広げることになるとは。

またひとつ音楽の楽しみ方を覚えて、さらに楽しく生きられそうな気がしている。

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