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幕間)この曲が忘れられない選手権・2020年上半期

早いもので今年も上半期が終わってしまいました。本当に今年は年明けからたくさんの素晴らしい曲がリリースされていて大豊作な上半期だったと記憶しています。

という訳で(?)2020年ベストEP、アルバムを選定しているのですが、個人的にこれは忘れたくないなあ、という耳に残った曲をピックアップしてみようと思います。本当はベスト10のようにしたかったのですが、どうしても上手く選択ができず30曲になりました・・。

文字数が多くなってしまったので、18曲+補足12曲って感じにしています。番号が付いていますがランキング形式ではありません。プレイリストは下記参照ください〜。

前回記事については下記となります。

それではどうぞ〜

★前半戦:ワールドからクラブ、ベッドルームを繋ぐ

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1.Desire Marea/ Tavern Kween

南アフリカの前衛的ユニットことFAKAの片割れDesire Mareaのソロ・アルバム『DESIRE』から。

そもそも「ワールドミュージック」というものがその土地で消費される「ポップス」である以上、南アフリカ発祥ジャンルであるKwaitoGqomは独特の取っ付き難さがあるというか、その土地の持つローカルなメロディやパーカッションに対してどのように乗って良いのかわからない戸惑いのようなものを「部外者」たる我々は感じると思うのですが、

かといって4/4拍子のようにわかりやすく西洋化してしまったものはなんだか味気なく、没個性的な感じも受ける・・という、その性質の異なる西洋・非西洋の「ポップス」という解釈を上手く折衷するバランス感覚が素晴らしい、と個人的には思います。

※前回記事:https://note.com/balmycrook/n/n0da18d56e055

2.Guedra Guedra/ Uggug

モロッコはカサブランカのプロデューサー。物理盤は即ソールドアウトしたデビューEP「Son of Sun」より。

Guedra Guedraの作品に入り込んでいる猫の鳴き声や虫の羽音のサンプリングからは近年のRiobamba「Inicio」(これは犬ですが)や、非英語にハウスを折衷させてどことなく未開の地の儀式のような雰囲気のある感じはBawrut「Atchu」辺り、

どこか日本の祭囃子などにも通ずるトライバルなメロディと、アフロっぽいやや複雑なパーカッションを合わせつつも異国民の耳にも馴染む絶妙なポップさからはEl Guincho「Antillas」を思い出しますね。リリース直後に「クラシック」となるような、貫禄のある素晴らしい作品です。

3.The Hanged Man/ Hasche

スウェーデンはストックホルムのアーティストThe Hanged Manのアルバム、『As The Tower Fell』より。反響し歪むギターから開幕し、マリファナを吸いながらだらしなく床に寝そべる午後のような、心地よいレイドバック感があって良いです。

4.Against All Logic/ If Loving You Is Wrong

USはニューヨーク出身、チリ系アメリカ人のNicolas Jaarによる変名プロジェクト、Against All Logic(A.A.L.)のアルバム『2017 - 2019』より。

サンプリングソースがLuther Ingramの同名曲「If Loving You Is Wrong」 だからソウルフル・・というわけでもなく、曲そのものはトーンの抑えられたハウスをベースに展開され、破裂音というか爆発音のようなキック、曲中半に入ってくる歪んだシンセサイザーの音、

しつこく繰り返される「Loving you is wrong, am I wrong to fall?」のラインも相まってどことなくマッドな雰囲気を感じさせます。

5.Holy Fuck/ Luxe(Feat.Alexis Taylor)

カナダはトロントのエクスペリメンタル寄りのエレクトロニカ・バンドことHoly Fuckの新作『Deleter』より。「Luxe」はHot Chip の Alexis Taylorをヴォーカルに迎えたものですが、『Deleter』はフォーテットことKieran Hebdenを共同制作に迎え、

去年のソロアルバムも良かったPOND の Nicholas Allbrook、Liars の Angus Andrewらが参加している豪華なアルバムの中の一曲。ヴィジュアルイメージも最高ですよね。

6.Sam Goku/ Tiny Anthem

ドイツはミュンヘン拠点のプロデューサー、Robin WangことSam Goku「Every Step」EPより。「Tiny Anthem」は一度耳にしたら頭から離れなくなるようなキャッチーなメロディラインですよね。今後がとても楽しみなアーティストです。

7.Four Tet/ School

フォーテットの新作『Sixteen Oceans』より。この世界には生まれた瞬間から傑作になることを約束された曲というものがあり、間違いなくFour Tet「School」はそれに値するでしょう。彼のDJでも既に定番の一つになりつつあると思います。

8.Jordon Alexander/ Watch the Flowers

オーストラリア出身、UKはロンドン拠点のプロデューサー、Mall GrabことJordon Alexanderの新作『Ohana』より。私自身もこのアルバムが突然リリースされてびっくりしたのですが、どうやらサプライズリリースだった模様

UKハードコア、ロウ・ハウスのMall Grabらしい曲が並ぶ『Ohana』の中で、まったりとレイドバックしたシンプルなトラックにギターストリングスをフィーチャーした「Watch the Flowers」はかなり際立った存在感を持っていると思います。

この曲はJordon自身の声ということなのですが、普通にこのようなベッドルーム系のインディ・ポップもいけるのね・・。

※Mall Grab「Sunflower」EPのレビュー:https://note.com/balmycrook/n/n450c848c6af1

9.Tan Cologne/ Strange God

USはニューメキシコ州タオスで結成されたデュオ、Tan Cologneのデビューアルバム『Cave Vaults on the Moon in New Mexico』より。

空間に溶けていくような、美しく反響するギターの音は仄かに歪んでいて、ソニック・ユースを彷彿とさせるようなナイーヴさがあり、優しく気だるげなヴォーカルに合わせるコーラスとベースラインの美しいユニゾン、それらを乗せてゆったりと展開するパーカッション。どれも美しく、素晴らしい。傑作です。

★後半戦:インダストリアルと王道、精神性とナラティヴと

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10.Public Memory/ The Maze

この曲はERRASのRobert Toherによるプロジェクト、Public MemoryのEP「Illusion of Choice」より昨年先行シングルとしてリリースされていたもの。(EPそのものの発売は今年だったためこちらにてピックアップしています。)

完璧です。素晴らしい。

11.Caribou/ Never Come Back

名作ですね。一度聴いたら忘れられない名作です。(二回言う)

12.Nikki Nair/ Slug

USはテネシーのプロデューサー?ことNikki Nairの、ブリストル拠点のレーベルBanoffee Pies RecordsよりリリースされたEP、「Number One Slugger」より。個人的に注目しているのですが良いですよね。

13.Ryan Beatty/ Patchwork

カリフォルニアはクローヴィス出身のSSW、Ryan Beattyのアルバム『Dreaming of David』より。クラウド・ラップを彷彿とさせるレイドバックしたトラックに内省的でややセンセーショナルな歌詞が乗っていて引き込まれます。

※前回記事:https://note.com/balmycrook/n/n619f8aa52909

14.Aril Brikha/A Cautious Gaze

1976年イラン生まれ、スウェーデン在住のアーティストであるAril Brikhaの新作アルバム『Dance Of A Trillion Stars』の開幕曲。

デトロイト・テクノのヒット曲を持つ彼の新作がディープ・テクノやダブ・テクノ、あるいはアンビエントにすら聴こえるような静謐とした作風になっているのには驚きますが、

シンセサイザーのメロディがピークとチルアウトを何度も発生させつつも全体的なトーンが抑えられており、その無重力空間をゆっくりと沈んでいくようなドープさに心をぐっと掴まれます。

※『Dance Of A Trillion Stars』レビュー:https://note.com/balmycrook/n/nd67b1b61bb51

15.Braids/ Young Buck

まあこれはやっぱり無視できないというか・・。

16.Bicep/ Atlas

北アイルランド出身のAndrew FergusonとMatthew McBriarによるデュオ、Bicep(バイセップ)ニューシングル。Ninja Tuneよりリリースされたもの。世間的な注目度が高いから・・というバイアスもあるのかもしれませんが、こちらも一度聴いたら忘れられない曲です。

17.sir WAS/ Letter

スウェーデンはヨーテボリを拠点にするアーティスト、sir WASことJoel Wästbergの新作EP「Letter」より。ここ最近精力的にリリースを続けていて、そのどれもが素晴らしいので今後も楽しみです。

※前回記事:https://note.com/balmycrook/n/n619f8aa52909

18.UVB/ Your Path to Us

フランスのプロデューサー、UVBことSébastien Michelの新作EP「Your Path To Us」より。好きです。

補足)この辺りも聴いていました

19.The Mauskovic Dance Band/ Ventura Phase
20.Bawrut/ Terza
21.Honey Harper/ Something Relative
22.Kennebec/ Kalahari
23.Gracie Abrams/21
24.Oklou/ entertnmnt (prod. by Mura Masa)
25.Working Men's Club/A.A.A.A.
26.Buscabulla/ Vámono
27.
Eyedress/ Let's Skip to the Wedding
28.Locate S,1/ Persona
29.Louis Prince/ The Number Thirteen
30.Blossoms/ Your Girlfriend

まとめ)2020年の個人的スマッシュヒットたちを改めて振り返る

今年聴いてきた作品を「2020年リリース上半期」というプレイリストにしてSpotifyで纏めていましたが、リストアップされているものは概ね500曲、アルバムやEPなども含めると、きっともっとたくさんあります。

基本的には今年の上半期も国籍、ジャンル問わず色々と耳にすることができたかなあ、と思いますが、やはり辺境の地やベッドルームから派生したマイクロジャンル(GqomやCloud Rap)や、ヨーロッパなどのアンダーグラウンドから上がってきた方々の音楽など、物理盤のないかなり限定的な配信をしているアーティストに、サブスクリプションのおかげで出会う機会が増えたかなあと感じます。

(個人的には物理盤を買ってオーディオ機器から聴きたい気持ちもありますけど・・)

生まれた時から名盤だったような曲がたくさん出てきて結局30曲のチョイスになりましたが、本当はもっとたくさん上げたかった・・。

今年の下半期も合わせて、2020年という年はきっととんでもない年になるかと思います。お財布の用意を万全にしておかねば、と気を引き締めました。

※下半期早速Animal CollectiveがEPを出しましたね。

2020 7/2 Ogri・著



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