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結ぶ本屋

めおと岩カフェ&アクティビティ(2018〜2022)
※現在は体験イベントを中心に営業されています。

伊勢シーパラダイス・めおと横丁に、2018/7月末に新しくオープンした「めおと岩カフェ」の本棚をプロデュースしました。
「海・伊勢・旅」をテーマに選書した本はすべて販売しており、散策舎としてはめおと横丁店という位置付けです。
カフェでのんびり読むもよし、旅の想い出に買って帰るもよし。伊勢・二見ならではの体験を、本に託してお届けします。

→カフェの詳細は公式サイトへ

さて書き出すのが遅くなってしまいましたが、せっかくなので6月末から約一カ月の、めおと横丁店ができるまでのあれこれを書き留めておきます。

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最初にお話をいただいたのは、このカフェの立ち上げを担当されている方が、散策舎に来てくださったことからでした。散策舎ではちょうど夏から「海」フェアをやるつもりで選書などを準備していたところだったので、なかなかグッドタイミングでいただいたお話でした。
とはいえ、一ヶ月で本を準備するのはなかなか厳しいものがあります。選書して出版社に発注し、ある程度の冊数を揃えるのにはどうしても半月はかかります。そして本屋の仕事は、本と人とを結ぶことだからこそ、選書するにもまずはやはり現場を見て、そこにどういう人が居て、どんな人に来て欲しいのかを抑えておくところから始めます。「その場所に最も適した本のあり方」から考えるのが散策舎のやり方、ということでまずは直接出向いてお話を伺いにいきました。

二見の辺りには、まだ水族館が二見シーパラダイスだったころ、そしてそれよりももっと前の子供の頃、何度かは行ったことのある場所でした。広い伊勢湾から寄せる穏やかな波、遥かに見える知多半島。自然に畏れを抱いていた古い時代からの伝承が、今も感じられる土地です。
伊勢はもちろん二見もまた、かつては一大観光地でありました。お伊勢参りのはじまりの地として、今も海岸線に沿っていくつもの旅館が立ち並んでいます。

打ち合わせのあと広報の方に水族館を案内していただいて色々とお話を伺いました。今の水族館やショッピングプラザのあたりは、昭和40年ごろに開発が始まり、その後平成元年に全面改装を行って今に至っているとのこと。とはいえもはや平成最後の夏、30年も経てば施設も古くなるし、旅行や観光のあり方も大きく変わりました。これまでと同じやり方ではやっていけないのも事実です。
一方、それだけの長い歴史があるからこその魅力もあります。トドやアザラシなどの海獣たちと柵なしでふれあえるのは、本当に貴重な体験です。今は全国の水族館で行われている「カワウソとの握手」も伊勢シーパラダイスが発祥です。こうしたふれあいは、生きものたちとスタッフとが、世代を超えて築き上げてきた絆があるからこそできることなのです。

次の時代に向けて歩きだそうとするとき、何を残して、何を変えるのか。その原点はやはり夫婦岩を中心とした二見の土地柄と、水族館の生きものたちとスタッフとが積み重ねてきた歴史にありました。そしてこうした「物語」は、語られなければ埋もれていく。だからこそ、本の力が役に立つ。そう確信して、本の選書を始めました。

おかげさまでオープンから1ヶ月ほど経ち、本もかなり手に取られているようです。思いのほか様々なジャンルが売れており、しっかり選書した本たちと来てくださったお客様との、偶然の出会いを結ぶことができていたなら幸いです。
伊勢・二見にお越しの際はぜひ、立ち寄ってみてください。きっと二見ならではの体験が、あなたを待っています。

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