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生活の建築知識.55

おはようございます。

多くのことが科学によって説明できるし、それを聞いて理解も出来ます。
しかし科学では説明出来ない、もしくは説明しづらいことも世の中には多くあります。
建築施工をするには、科学の裏付けなしに実施することは出来ません。
構造的に不安定である、有害物質を含む、エネルギー効率が悪い、そんな話を聞いて実施してくださいとお願いする方はまずいないでしょう。
しかし、建築設計では必ずしもそうではありません。
利便性が高い、面積に無駄がない、耐久性が高い場合でもそれらを犠牲にして意匠を優先させることがあり得ます。

よく言われる建築家の独りよがりの話ではなく、その方がクライアントのためになるという観点からもそのような調整をすることがあります。
機能美という言葉もありますが、本当に機能だけを追求すれば工場のようなものが当てはまるでしょう。
工場オタクの方も実際にいるので、それが醜悪な意匠ということを言いたいわけではなく、生活する空間としては当てはまらないことは容易く想像出来ます。
学問として建築に触れれば、工場の機能美に話が及ぶタイミングもあるかと思いますが、誰もがそこに憧れているのはあり得ません。
科学的な安定とはかけ離れた意匠が魅力となることもあり得るのです。

ちょっと違う言い方をすれば、局所的なスペックばかりを気にするのではなく、全体の調和やメリハリが重要であると言えるかもしれません。
どのスケール感で何を見るか、それを場合によって使い分けることが設計には求められます。
ミクロ・マクロ以外にもヒューマンスケールや俯瞰して見ることも大切です。
慣れていないと、つい目の前のことだけを操作してしまいますが、遠目に見たら違和感があることがあります。
話の構成とかに近いかもしれませんね。
はたまた音楽や料理コースの構成とも通ずるかもしれません。
プロが提供するモノは違和感なく受け止めていますが、いざそれをやってみようとするとチグハグになってしまうことはよくあります。

住宅設計おいて、クライアントの意思決定こそが最終決定になるのは間違いありません。
そして設計自体にも深く関わりますが、決定までに設計者より様々な提案やアドバイスがされます。
事前に説明されることが理想的ですが、もし腑に落ちない内容があった際には、理由を確認することをおすすめします。
設計者による調整がそこに表れているかもしれません。
また設計者により要望を反対された時に不満に思わず、どんなことを考慮しての反対なのか、どんな景気を提供しようとしているのか、よく確認をしてもらえると新たな発見があるかもしれません。

最悪どうしても相性が悪いということもあり得ますので、程度に関しては判断して難しい面もありますが、自身の目線だけに捉われず、多くの視点を持っているプロの感覚を味わってもらうのも楽しんでもらえればと思います。

では、また。

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