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リノベーション

こんにちは。

私は個人事業主として工務店を営んでいるものです。
工務店と言っても事業規模が小さく、主に業務として行っているのは住宅リノベーション工事、店舗工事、オフィス改修工事がメインです。

その中でも近年はリノベーションというものの認知も上がり、中古物件を購入してリノベーションを行うというクライアントも増えてきました。
私もすでに何件のリノベーション工事をやったか数えきれなくなってきました。

これからマンションを購入するにあたり、新築か中古か、またどちらにせよリノベーションやちょっとした改修を行うか、悩まれる方も多いかと思います。

今回はそのような方々に向けて、リノベーションとは何かをお話ししていければと思います。
そして、リノベーションをすることによって出来ることや何を考慮すれば良いかなどを共有出来れば幸いです。

現在、リノベーションを業務の主としている会社は多くありますが、その考え方はまちまちです。
今回の記事もその一つの見方だと思って頂き、参考にして頂けることをお願い致します。
では本題にいきましょう。

リノベーションとは

意味は、手を加えて良くすること、刷新、再生するというのが調べれば出てくると思います。
現在よく言われているリノベーションもほぼそういった側面が強く、中古物件の改修工事を行うことで、室内の機能を変えたり、見た目にも再生させることを言います。

しかし、リフォームと何が違うかという疑問が生じるかと思います。
決定的に違うのは考え方であり、リノベーションは価値の向上も図ろうとすることだと思います。

既存のプランをただ綺麗にするだけでなく、現代にあったプランに更新したり、不動産価値としてだいぶ下がってしまった物件をビジュアル的に魅力あるものとして付加価値を生み出すことが例として挙げられます。

そのような考え方の違いに共感して、リノベーションを実施しようとしているクライアントは今までにも多くいらっしゃいました。

また、都市部においては不動産価格が高く、物件取得はしたいが新築では高すぎて、むしろ中古の安さとリノベーションでの好みの空間作りの良さを組み合わせることで、満足度の高い物件取得を目指す方々もいます。
実際どちらかというと後者の方が多い印象です。

どこに軸を置くかは各々ですが、とにかく[価値]を上げるというのが根本にあるのです。
そして[価値]の基準は金額面なのか、満足度なのか、使いやすさなのかそれぞれではあるので何が正解かは最終的に個人の判断となります。

つまり、目的が明確になっていないとリノベーションは成功しないことにもなります。
もちろん、粗悪なものが出来てしまうということではありません。
自分が望んでいた結果をリノベーションによって実現することが出来ているかが重要になってきます。

あなたにとって使いやすい物件が誰にとっても使いやすい物件であるとは必ずしも言えません。
個人的なこだわりを施せば施すほど、再販する際には金額面での価値が出にくい可能性があります。
これは逆も全く同じで、不動産価値を上げればあなたにとって最適な空間にならない可能性があります。
そのため、価値を上げたい内容が何かを決める必要があるのです。

何があなたにとって喜ばしい結果なのか、それが定まっていないうちにはリノベーションをすることをお勧めしません。
リノベーションはあなたに満足のいく結果をもたらすための手法ではありますが、リノベーションが全てを向上させてくれるとは限らないのです。

ですので、リノベーションを検討の際はその先の目的を明確にすることが何よりも重要となります。

今回はその中でも住み心地や満足度に重きを置いた方々のために話を進めますので、再販のための参考にしたい方にはまた別の機会で記事を書こうと思います。

リノベーションで何が出来るのか

リノベーションを実施するとなると、やることはいくつかに分けられます。
・設備の更新
・プランの更新
・内装、インテリアの更新
・その全て

リノベーションを行う物件自体が古くなるほど
実施する規模が大きくなる必要性が高まります。
ただ、せっかく工事をするので全てやり変えることを選択されるクライアントは多いように思えます。
また、設備更新を行うことで物件価値も上がりますのでメリットはあると言えましょう。

リノベーションをされるクライアントにとって特に注力されるのがプランの変更です。
よくLDKという部屋割りを耳にすることがあると思います。
空間を機能別と住む人数に必要な部屋数を考慮してプランを考えるこの手法は、第二次世界大戦後の住宅供給に向けた取り組みの最中で広がっていきました。
今でも子供が1人いれば2LDKにしようとか、2人なら3LDKにしよう…という考え方は主流と言えます。

しかし日本の住宅は、特に都市部においては面積が狭く、単純に機能と人数で部屋を割っていくとどれも狭い部屋が出来てしまいます。
不動産業界ではこの手法が強く採用されており、ファミリー向けにはとにかく2LDK、3LDKを提供することが是とされていることは多いです。

ここからわかりますように、もし再販を考えているのであればLDKの手法は採用した方が良いと言えます。
しかし、住み心地を優先するのであれば必ずしもこの手法が良いとは言えません。
むしろリノベーションを考える方々にとっては殆どの場合が使いづらいものとなります。

近年の多様化した生活スタイルからすれば、寝室はまさに寝るだけのスペースで、その他のことはリビングで全て行うという考え方もあり得ると思います。
また、趣味や仕事も家で行うとなると寝室以外の部屋も欲しくなるかもしれません。

これは一例ですが、書斎併設の広いリビングを設け、寝室はベッドと収納の最小限でプランニングを希望するクライアントは多いです。
極端な例では、寝室はベッドの大きさだけあれば良いと希望されたクライアントもいらっしゃいました。

このように住み心地をリノベーションの目的とする方々にとってはプランは非常に重要な点と言えます。
しかし先にも言いましたが、これを突き詰めれば突き詰めるほど、再販には向きません。
理由はもうわかりますよね。

話を戻しますが、多くの方は住み心地を優先されます。
ですので、自分に合ったプランを作り上げることがリノベーションの最大の目的となるケースが多いです。
では、プランを考える上で、どのような手法があるか具体例を出していきたいと思います。


プランを考える

①広いリビングダイニング

これは多くの方が望まれることです。
都市部の一般的なリビングダイニングでは、面積が狭く、無理矢理ダイニングテーブルとソファとテレビ台を置いているのが現状です。
これを解決するために、リビングダイニングの横に設けられている寝室を1つ潰してしまい、全てをリビングダイニングにしてしまいます。
おそらく広さは1.5〜2倍になるでしょう。
ダイニングは食事をするため機能としては必要ですが、リビングは機能上の必要性はあまりありません。
しかし、多くの場合リビングが最もいる時間が長く、最も生活感も出る場所です。
つまり、家にいるときにはほとんど何もしていない、ゆっくりする場所がリビングなのです。
そしてリビングが良ければ家に対して大きな満足感を得られることが多いのです。
これは私個人としても強く共感しております。
これまで多くのリノベーションを行った経験上、リビングが広くなるだけでも物件の魅力は格段に上がります。
プロジェクターを置いたり、植栽を置けたり、大きいソファを置きくつろぐことも出来ます。
それだけでもリノベーションをした意味があったと言えるほど、出来ることが増えるでしょう。
先にも言いましたが、それらのことに機能はありません。
ただただ満足度が増すだけです。
しかし、長い時間を過ごすリビングの満足度が増すことは決して無駄とは言えない魅力があります。

②キッチンを主役にする

一般的なキッチンはシステムキッチンとその後ろに冷蔵庫や食器棚用のスペースを設けた個室となっており、場合によってはリビングを眺められるよう部分的に腰までの高さの壁で構成されています。
もしくは、リビングダイニングを背にして壁に向かって料理をするようなキッチンかもしれません。
決して機能としては悪いとは言えませんが、こちらも近年変更の要望が多いと思います。

キッチンをリビングダイニングに対してオープンな関係にして、さらにはアイランド型キッチンにすることで、LDKを一体の空間として構成するものです。
こちらに関しては、少し注意が必要です。
私も料理を毎日するので、キッチンの使い方に関しては細かいと自負しております。
ですので、これをやるときの問題点が明確にわかります。

それは油です。
このようなキッチンによくあるのがコンロ前にガラスの板を設けた油避けと言われるものを設置することが多いですが、とてもではありませんがそれでは油の跳ねは防げません。
料理をされる方なら分かると思いますが、油は想像よりも遥か遠くまで飛びます。
そうなると毎日床の油汚れを掃除しないと家中の床が油塗れということにもなりかねません。
もちろんどうしても憧れるという方はいらっしゃると思いますので、絶対ダメとは言えませんがオススメは出来ません。
もしやるのであればコンロは背面の壁側にして、シンクをアイランド型にするか、コンロをどうしてもリビングダイニングに向けるのであればガラスの油避けは下から上まで全て施すことをオススメします。

また、もう一つ問題点としてアイランド型にした場合、収納能力は下がり結果的に機能性が下がります。
それはよくキッチンとセットになっている吊り戸棚がなくなってしまうことが多いのが原因です。
なので、小さくてもいいからアイランド型にしたい!とお考えの方は一度必要な収納を確認した上で再考して頂いた方が良いと思います。
出来ればアイランド型をやるのであればリビングダイニングを小さくしてでもキッチンのスペースを広くした方が機能的と言えるでしょう。

しかし、開放的なキッチンはどうしても視覚的に魅力がありますよね。
私個人としては厨房みたいなキッチンが憧れなので、皆さんの意見と相反するかもしれませんが、一応問題点を考えてみてはいかがでしょうか。

③寝室を最小限にする

寝室というとだいたい6畳が一般的だと思います。
もちろんもっと広いこともあるでしょうが、その面積を有効活用出来ていますでしょうか?
よく見かけるもので折戸収納付きの寝室があります。
多くの場合は収納前にはものが置けず、ベッドの位置も大きさを考えると寝室の一箇所にしか置けないのです。
その時ベッドの両サイドに無駄なスペースが出来てしまったり、洋服箪笥を置きたいから無理矢理置いて、通路が狭くなったりすることはありませんでしょうか?
寝室では寝ることと着替えることは想定されるべきことですが、必然的に設けるはずの収納とベッドの配置に関してビックリするほど配慮がないことが多いです。

寝室を最小限にすることは面積的に小さくすることと同時に最大限使いやすいものにすることで無駄なスペースを省くことがポイントとなります。
なぜなら使えてないスペースが物件全体にとってもったいないスペースになっているからです。

収納は人によって必要な量が変わりますが、それを把握することが大切です。
また、好みにもよりますが収納扉は引戸もしくは引き違い戸がオススメです。

さらにベッドのサイズを確認してみてください。
ベッドのサイズは数種類しかありません。
特に考慮すべきは、将来大きいサイズに変更するかどうかです。
もしするつもりがある方は大きい方のベッドで寝室の大きさを考えて下さい。

寝室は最終的には寝るだけの部屋となることも多く、起きている間の滞在時間もほとんどないことが多いと思います。
ですのでここはとにかく機能的にし、省スペースとすることが物件全体に良い影響を与えることが期待出来ます。

④ワークスペースを設ける

これは最近では要望も増えてきましたが、まだまだ盲点となっているケースがあります。
家において、一切仕事をしないという方もいらっしゃるかと思いますが、今回の新型コロナで家で仕事を出来る環境があることの有り難みを享受した方々も多くいました。
また、そうでなくても書物をすることや書斎としてのスペースがリビングや寝室に点在しており、それに伴い本棚や文房具の置き場も点在していることはよく見受けられます。

ワークスペースは少し面積に余裕がないと設けられませんが、特別大きなスペースが必要なわけでもありません。
最低限600mm×1100mm程度の机と椅子を置ければそれで良いのです。
机の上には書籍用の棚を付けておくのをオススメします。
机の上はほぼ間違いなく使えないスペースで唯一利用出来るのが棚だからです。

ワークスペースがあれば、簡単な裁縫やアイロン掛けなどにも使えます。
もしくは子供の勉強スペースとして利用しても良いでしょう。
意外とそのスペースは使う頻度が高いことが想像できます。

内装・インテリアを考える

リノベーションを行うとほぼ必然的に内装の更新を必要とします。
それは一部だけかもしれませんが、設備の更新やプランの更新をすると内装が損傷しますので、それに伴い内装を考えざるを得なくなります。
もしくは内装だけを更新する場合もあるかもしれません。
先に申し上げれば、内装は自由です。
主には仕上げ材の選定になりますが、何を選んで頂こうが、満足されるものを選んで頂くのが宜しいかと思います。

しかし、そう自由だと言われてもお困りだと思います。
床は無垢のフローリングで壁は白を基調にして部分的にアクセントクロス、キッチン周辺にはタイルを貼りたいという方はきっと多くいらっしゃるでしょう。
何度もそのようなリノベーションを行ってきました。
ただ、一概にそうは言ってもフローリング・クロス・タイルには多くの種類がありどうやって選べば良いかわかりませんよね。
これに関しては是非プロに聞いてみてください。
プロとして建築に携わっている人で、設計・施工管理を行なっているものであればそれらのメーカーを知っています。
各メーカーにはカタログがあり、Webでも見れます。
多くの場合サンプルまで無料で提供してくれます。
ですので、ここに関してはプロに聞くのが最も効率的と思われます。
何せ建材の種類は数多あり、プロであっても一つ一つを把握しきれません。
自力で探すのも楽しいかもしれませんが、多くの時間を必要とするかもしれません。
またそれが楽しいという意見もありそうですね。

内装に関しては自由と申し上げましたが、それはインテリアに関しても同様です。
自由にお好きなものをお選びください。
ただ、ここで1つ提案させて頂きたいと思います。

それは照明計画です。
リノベーションを検討される方々は、多くの場合ライティングレールというレール状の配線器具を利用して、スポットライトを取り付けることを検討することが多いです。
今までリノベーション工事を行なった中でライティングレールを付けなかったことがないように思います。
リノベーションと言えばライティングレールと言っても過言ではないほどよく採用されます。
ライティングレールのメリットは照明器具の取付位置をレール内で変更出来ることです。
模様替えなどを行う際も照明の位置が変えられるので、機能的と言えましょう。
その機能性を踏まえた上で、私はあえて提案したいと思います。

それはメインとなる照明に関しては、ライティングレールを使わず、デザインを重視した照明器具を採用してみてください。
理由としては、好みの問題もありますが、ライティングレールを取り付けると天井面がゴチャゴチャしがちです。
また、先程の話になってしまいますがリノベーション=ライティングレールというのがあまりにも出回り過ぎて、何でもかんでも最近はライティングレールを付ける傾向があり、空間とのバランスや相性とは関係なしに、洗練されたとは言い難い部屋を量産しています。

そして何より、メインの照明はそれほど可変させることもなく、かつ洗練された照明器具は部屋の印象を格段に良くしてくれます。

この点に関してはあえて批判的に述べさせて頂きますが、リノベーションばかりを取り上げた雑誌に出てくる住宅と、建築全般を取り上げた雑誌に出てくる住宅のメインの照明を見比べて頂きたいと切に願います。

その二つの比較をすることで、光に対しての考え方が違うことまで理解して頂ければ凄いことですが、何となくでも違うことがわかって頂ければ幸いです。
そして、本当に素敵な部屋には素敵な照明器具が付いているものです。

もちろんライティングレールが最適だという場合も多々あります。
決して使ってはいけないとは微塵も思っていません。
ただ、リノベーションを検討して積み上げたそれまでの創意工夫を安易にライティングレールで完結して欲しくないのです。

照明器具を選ぶのもかなり難しいかと思います。
実際照明計画はプロでも難しいです。
照明計画だけを専門にしているプロも存在するほど、奥が深いのです。

これは簡単な話ではない分、それだけ影響も大きいです。
極端な話ですが、内装は質素にしても照明計画が成功すれば空間づくりに満足のいく結果をもたらしてくれます。

今回は照明に関しての記述を控えますが、重要な点ですので、これは改めて記事に致します。

まとめ

今回は住み心地や物件への満足度を重視する方々へリノベーションとはどういうものか、そして何が出来て、何を考慮すべきかを具体例を交えながら説明致しました。

つらつらと文章で書くとわかったわかったと思えてしまうかもしれませんが、本当にリノベーションをやろうとするとかなり体力を使われることになると思います。

一から自分に合ったものを作れてしまうが故に、あれもこれもやりたい、やりたいことが多すぎて予算が足りない、取得したい物件では出来ないことがある、材料が多すぎて選び切れない、、と悩みが尽きなくなることでしょう。
大きな買い物ですので、尚更ですよね。

しかしそこはポジティブに考えてもらい、モノづくりの大変さと楽しさを体験出来る貴重な機会にもなります。
おそらく他の買い物で、そこまで自分の生活に向き合うことはないんじゃないでしょうか?

生活に向き合った上で、何を重視して何を目指すかを是非検討してみてください。
それがリノベーションへの第一歩だと思います。

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