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抽象画の設計図:油絵/完成篇

大きなサイズの油絵/抽象画における「スケッチに依存する」と「スケッチからはみ出る」の2つの作品をご紹介いたします。いずれも1997年に作成した幅210cmの大きめの油絵で、それぞれに3ヶ月程度費やした作品です。

当時通っていた大学(Pacific Northwest College of Art, Portland Oregon, USA)の卒業制作に制作した油絵は合計で4点ありましたが、展覧会に出展したのはこの2点のみです。

自由な校風の中、毎日描くことだけに専念できていたのを今でも思いだします。過去にご紹介した母校も是非ご覧ください。



A Gate

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2100mm x 1480mm Oil on Canvas
スケッチに依存しながら完成した作品です。わたしのアイコンのような存在になった一作で、黄色い絵の人と言われました。

下地には黒のアクリルでなぞったスケッチがあり、途中まではとてもカラフルに描かれていました。ポートランドは西と東を分ける川がダウンタウンの中心に流れていて、たくさんの橋が東西を結んでいます。北側に掛かるインターステート405からの眺めは、この作品のように「川に浮かぶ錆びた鉄の橋」が浮かんでみえるのです。

具現的に記憶された情景を、最終的に抽象として表現することへの違和感は当時からなかったので、こういった完成系に落ち着きました。



The First Last, The Last First

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2100mm x 1480mm Oil on Canvas
スケッチからはみ出るに基づいて完成した作品です。シンプルな白黒の作品に見えますが、下地には沢山の色が重なり合っています。

前項のスケッチに依存した作品に比べると、ブラシストロークが速く、アクションへの修正がすくないので、全体が踊っているように見えると思います。スケッチをしながら突発的に現れた現象から仕切り直し、更に構成と色を重ねて行く工程を繰り返しました。

アタマで理解しながら繰り返したのではなく、全体を客観的に見ながらタイミングを見計らって描くというのが適当でしょうか。



自然の流れに逆らわない

上記2点とも特に注意したのは、偶発的に起こった現象をかき消さないということです。意図して置きにいった個々のブラシワークには意味がありますが、時に色の配合であったりコンポジションが予想しない方向に進行することがあります。

この小さな発見こそが次のストロークへのヒントに繋がり、見えない答えを探し出す大切な資源と成り得るのです。わたしは写真からの写し絵や具象的な模写はしません。しないからこそ、完成に居たるまでのプロセスを愉しみ、時々もがき、あがき、大変な思いをしながらも産んでゆくのです。

上手に描こうとするジャンルの絵ではないからこそ、自由でありながらも、躯体となるスケッチや精密な完成度の設計図を創り上げることの大切さを、今一度ご一考いただきたいです。

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