映画鑑賞「大いなる沈黙へ」
“神と向き合う修道士達の生活を見つめる2時間55分。
「大いなる沈黙へ」は構想から21年の歳月を費やして製作され、長らく日本公開が待たれていた異色のドキュメンタリーである。
フランスアルプス山脈に建つグランド・シャルトルーズ修道院は、カトリック教会の中でも厳しい戒律で知られるカルトジオ会の男子修道院である。修道士たちは、毎日を祈りに捧げ、一生を清貧のうちに生きる。自給自足、藁のベッドとストーブのある小さな房で毎日を過ごし、小さなブリキの箱が唯一の持ちものだ。会話は日曜の昼食後、散歩の時間にだけ許され、俗世間から完全に隔絶された孤独のなか、何世紀にもわたって変わらない決められた生活を送る──これまで内部が明かされたことはなかった。
ドイツ人監督、フィリップ・グレーニングは1984年に撮影を申し込み、ひたすら返答を待つ。そして16年後のある日、突然、扉が開かれた。
彼は修道会との約束に従い、礼拝の聖歌のほかに音楽をつけず、ナレーションもつけず、照明も使わず、ただ一人カメラを携えて6カ月間を修道士とともに暮らした。なにも加えることなく、あるがままを映すことにより、自然光だけで撮影された美しい映像がより深く心にしみいり未知なる時間、清澄な空気が心も身体も包みこむ。 オフィシャルサイトより
インターネット・スマートデバイス・ソーシャルメディアが普及し、進化・変化する自分の日常とこの映画に映る修道士達の変わらない日々。
この間、ある方と「深み:depth」について意見をかわした。
進化する世界の我々と世間はかけ離れた彼らの生活を比べつつ、「深み」について想いを巡らせた。
● シャトリューズ・リキュール
グランド・シャルトルーズ修道院の修道士たちは、1605年に“長生きの万能薬”の製造方法を教えられた。だが、醸造方法が極めて複雑だったことと、130種以上の材料を必要としたため、薬剤師が醸造法を正しく理解し、最初のリキュールを作り上げるまでに100年以上を要した。以来、今日でも、香草、薬草、花、根などから抽出された成分をワインと合わせて作られている。
やがて、アルコール度数が55%のこの緑色の万能薬は薬用としてよりも、人々が楽しむお酒シャルトリューズ・ヴェールとして飲まれるようになった。
そして1832年、コレラがフランスで流行した時、シャルトルーズは再び薬用として使われた。数年後、修道士たちは、アルコール度数が40%という、より飲みやすいハーブ・リキュールを開発した。これは、その色からシャルトリューズ・ジョーヌと呼ばれている。この酒は瓶詰めされる前にオーク材の樽の中で5年間熟成される。
1970年以降は民間企業で製造されるようになったが、その詳細な製造法(ハーブを混ぜる秘密の配合)は、現在でもシャルトルーズ修道院の修道士3人のみが知る秘伝となっている。オフィシャルサイトより
往事の修道院は生きる智慧(ナレッジ)と先端技術(サイエンス)の集積地だったのだろう。
●素晴らしい自然との共生
修道院とその自然環境が素晴らしい。
神と向き合い生きていくに相応しい情景にも心うたれる。
岩波ホールにて
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