侍ジャパンヘッドコーチ 白井氏に学ぶ「頑張るリーダーへの処方箋」
今週は札幌で開催されていた「第32回 日本産業衛生学会 全国協議会」に参加してきました。産業保健・ヘルスケア分野に関わる優良なインプットも十分できたのですが、最終日の本日の午後に開催された、元北海道日本ハムファイターズヘッドコーチ・侍ジャパンヘッドコーチである白井一幸氏の特別講演「組織における人材育成・神コーチング流」が心に響きすぎたので、自身のアウトプットとしてその内容を書いていきます。特に、こんな方にはオススメです!
精一杯頑張っているのに試合に勝てない原因は何か
私自身も野球経験があったので、白井氏による野球のシーンを思い浮かべながらの講演はすべてが心に沁みたのですが、その理由は、おそらく白井氏自身が一番苦悩したという原体験があったからではないかと考えています。
白井氏がプロ野球に在籍した期間は1984年から1996年ですが、日本ハムファイターズのチーム順位をみると見ての通り、ずっと成績は低迷しています。
このときに、チームの成績が悪い理由を振り返り下記のような思考過程を経て、今の人材育成やコーチングの考え方に至っているようです。
こんな問いを続けることで、実はみんな精一杯頑張っているけれど、「頑張り方」を間違えてしまうと、チームの成果は出ないんだ!ということに気づいたようです。この話を聞くだけでも、毎日頑張ってるけど、まだ成果が出ていないチームや個人に勇気を与えてくれます。
誰もが陥りやすい間違った頑張り方
この間違った頑張り方は、実は誰もが実生活で経験している可能性があります。私自身も、自分のことをずっと言われていると感じるくらい、日々の仕事を振り返ると、反省点が多くあぶり出されました。
今回は野球をたとえ話にしているので、リーダーの象徴として、監督やコーチを事例に挙げますが、読者の皆さんにおいては仕事の場面だと「経営者・上司」、学校だと「校長・担任先生」、プライベートだと「両親」などに該当すると思うので、自分の立場に置き換えながら考えていただけると嬉しいです。
昔までのイメージとして、監督・コーチなどのリーダーは、「厳しく怒る(鬼監督のようなイメージ)」、「徹底的に教える」、「猛練習をさせる」ことが良いリーダー・成果を出させるリーダーとして、社会に一定認知されている側面があったのではないかと思っています。
例えば、県大会も勝ち進めることが出来なかった弱小チームが数年で甲子園に出場するなど、強いチームを作っているのは、成果を出させるために厳しい指導と、日々の猛練習を指示する鬼監督・鬼コーチがいるというようなイメージが少なからずあると思います。
一方で、監督・コーチが、選手がミスをしても「大丈夫だよ。たまにはそういうこともあるよね」と怒らない、ミスをしても「指導しない」、ミスをしても「もう二度とミスしないようにもっと練習するぞ!」というような指導をしない場合、「本当にこの監督・コーチで大丈夫か…」と不安になる方も少なくないのではないでしょうか。
だからこそ、リーダーは「怒ること」「徹底的に教えること」「猛練習をやらせること」でリーダーとして精一杯頑張ろうと努力するのです。しかし、大事な場面でミスをした選手の気持ちになってみると、エラーをして、次の回の守備につく際に「おい!次は絶対に同じミスをするなよ!分かったな!」などと言われたらどうでしょうか。内心「俺のところに絶対ボール飛んでくるなよ。」と思いながら守備につくことになります。そして、面白いことに、こういうときほど、自分のところにまたゴロがやってくるのです(笑)。そして、「ミスをしないように」という失敗を恐れるような消極的な感情やプレーが、再度のミスを誘発してしまうという悪循環に陥るわけです。
ここで重要なのは、リーダーが努力の方向、つまり頑張り方を間違えていることであり(これはチームを勝たせたいという強い想いがあるほど陥りやすい)、選手はどんどんパフォーマンスが落ちていきます。
白井氏はチームを強くするために「怒る」「教える」「やらせる」マネジメント、つまり、リーダーとしての間違った努力をしなくなったことが、日本ハムファイターズが常勝チームとも言われるようになった所以だと説明していました。
「怒るマネジメント」から「怒らないマネジメント」へ
怒られても誰も嬉しい人はいません。だから、まずは社員やチームメンバーがミスをしても怒らないこと。「怒られた」という感情にならないようなコミュニケーションをとるようにすることがリーダー層には求められます。
そもそもミスをして一番凹んでいるのは、そのミスをしてしまった人、そう本人です。そして、殆どの場合、その人が一番反省をしています。そこにリーダー層が怒るような態度をとってしまうと、どうなるでしょうか。どんどんネガティブになっていくだけですよね。リーダーは、メンバーをネガティブにさせるのが仕事ではなく、メンバーの最大限のパフォーマンスを出させることが仕事です。
私もやりがちなので反省ですが、シンプルに「なぜ、〜〜〜?」というWHYの質問を単純にするだけでも、ミスをした直後のメンバーというのは、ただでさえ凹んでいるので「責められている。怒られている」という解釈をして、ネガティブ感情になりやすいので要注意だと思います。
では、リーダーはどのような対応を取るべきなのでしょうか。本来、リーダーはメンバーの成功に焦点を当てていると思います。したがって、ミスをしたときにリーダーが出来ることは、励ますことしかないのです。怒ってパフォーマンスが上がるメンバーはいませんが、「いつも、○○さんは頑張ってやってくれてるよね!こういうときだからこそ、自信をもってやってみよう!○○さんなら出来るよ!」と励ますだけでも、メンバーはポジティブな感情で「よし!もう一度やってみよう!」とパフォーマンスは上がっていくのです。
「教えるマネジメント」から「教えないマネジメント」へ
人が多くするミスというのは、だいたい知っているけど、それが出来なかったということが多いと思います。だから、ミスをしているところに
「いつもこうやって言っているだろう!」
「前も、この情報を見せただろう!いつになれば覚えるんだ!」
「何回も同じ練習をしているのに、なぜ同じ失敗をするんだ!」
などといっても、本人からすれば、すでに知っていることを何度も繰り返し教えられるということになります。そうなると、リーダーに怒られるとき「はい!分かりました!」と元気よく返事をしていても、内心は「分かってるよ、それは分かっているけど、それが出来ないから困ってるんだよ!」という感情が湧いてきます。
多くの場合、人は会社の目標や自分の夢に向かって、精一杯努力をする生き物です。だからこそ、すでに勉強していて、知っていることは多いのです。それなのに、ミスをしたからといって、改めて、細かいところまで口や手を出してしまう。リーダーとしては、ミスをしないように教えてあげていることが正しいリーダーとしての努力だと勘違いをしているわけですが(私自身も恥ずかしながらそうでしたw)、それを続けていると、どんどんメンバーのパフォーマンスは下がっていきます。
実は、メンバーに成果を出させるために重要なのは「教えること」ではなく、「教えないこと」なのです。人は質問を投げかけられると考える生き物です。だからこそ、リーダーは教えるのではなく、質問をして、考えてもらい、自分で答えを出せるサポートをするのが本来の頑張り方と言えます。
ただ、人は本来、質問をすることが苦手です。例えば、コーチが「今回のミスは何が原因だっただろうか。」と選手に質問すると、第三者からは、「コーチなんだから早く教えなさいよ!選手と一緒に悩んでどうするの!あんたコーチとして無能ね」などと評価されるリスクもあるわけです。
だからこそ、質問することは本当に難しいのです。
ここで、白井氏が伝えていた質問のコツを2つ紹介します。
①「クローズドクエスチョン」から「オープンクエスチョン」へ
例えば、「ゴロを捕球するときは、こういうことを意識するよう指導したよね?」と質問されても、「はい」としか返答のしようがありません。仕事場面に置き換えると、「この資料を読み込んで、プレゼンではこのような意識で取り組むようにいったよね?」という感じです。
クローズドクエスチョンは、その質問をするリーダー自身がこれまでの自分の指導を正当化しているだけで、実はメンバーには何のメリットもありません。メンバーがクローズドクエスチョンで質問されても、成長することもありません。
だからこそ、勝てるチームにするためには、オープンクエスチョンに質問の仕方を変えるべきで、教えるのではなく、メンバーが自ら考え、自ら答えを見つける支援をしていくべきなのです。
②「過去質問」から「未来質問」へ
これを聞いて、私自身もよくやりがちだなと感じたのは、焦点が過去にある質問をしてしまうことです。「今回のミスは、振り返ってみて何か思い当たる原因はありそうですか?」というような過去への質問をしても、「時間がなくて、事前準備が不十分でした」などの言い訳だけが生まれてきます。このような言い訳を聞くと、リーダーはイラっとくることもありますし、同じミスをしないように、「なぜ?なぜ?」と追加の質問をしてしまいがちです。これをすると、どんどんリーダーとメンバーの関係性は悪化していきます。
そこで、白井氏のオススメは、焦点を未来にあてた質問にすることです。「次回、同じことがないように、どんなことであれば改善できそうかな?」というように未来に向けた質問をすれば、メンバーからの言い訳が出ることもなく、関係性が崩れるようなコミュニケーションにはなりにくいのです。むしろ、リーダーがここまで自分のことを気にしてくれていて、一緒に考えてくれる!というような体験がメンバーのパフォーマンスを上げることにつながります。人は質問をされれば、自ら考え、自ら答えを出していきます。教えられたことをやるのではなく、自らが考え、決めたことをやるからこそ、メンバーやチームのパフォーマンスは高まるのです。だからこそ、チームの成果をあげるためには、教えるのではなく、質問をするのです。
「やらせるマネジメント」から「やってみたいといってもらえるマネジメント」へ
私自身もずっと野球をやっていて、「死ぬまで走れ」と言われたり、「相手チームが来るまで腹筋をやり続けろ。絶対止まるなよ」というような先輩の指導を当たり前に受けてきたので、やらせるマネジメントのもとで育ってきてしまったようなものです。ただ、イキイキと最大のパフォーマンスを出すチームにするためには、自律的に考え、自身で行動を決めて、自らがやってみたい!という気持ちを引き出す、リーダーのコミュニケーションが必要です。
これまで書いたように、ミスをしたときに怒ってしまったり、細かいところまで教えてしまったりすると、自らの創意工夫もなくなり、「今度はよりよくするために、こうやってやりたい!」というようなポジティブな考えは生まれにくいため、やりたい!と思ってもらえるように、励まし、質問をするのがリーダーの正しい努力の仕方といえるでしょう。
これまで触れてきた質問力に加えて、傾聴力もリーダーに必要なスキルです。聞くにはじまり、聞くに終わるという言葉があるように、メンバーからの相談も、途中で話を遮らない。多くの場合、アドバイスを求めているわけではなく、答えは自分の中にある場合がほとんどです。リーダーは話を聞いて、共感し、励まし、未来質問をしてあげることが仕事です。
人はアドバイスをされたことをそのままやってエネルギーがでることはありません。自分が決めて、自分が行動することで、エネルギーがでるのです。だからこそ、リーダーの頑張り方は、チームの成果を左右する超重要な要素なのです。
成果を出せるチームにするために変えたこと
今回の話のまとめですが、白井氏がチームを強くするために変えたことは、下記にまとめられると思います。
インプットとアウトプットは車の両輪
今日この話を聞いたのは14時頃で、帰りの電車と飛行機の中で、何かに取り憑かれたよう一気に言語化してみたので、もし読みにくいところがあったら後日、修正します笑。
白井氏の講演で、もう一つ深く記憶に刻まれた内容があって、インプット-アウトプットと成長の関係についてです。
「インプットをしても、アウトプットをしなければ学びにはならない」これは常々、私自身も周囲に言っているのですが、うまい説明もできずに、モヤモヤしていました。情けないことに、漠然と自分の経験則をもとにアウトプットをしないインプットは意味がないと言ってきただけなんですよね。だからメンバーにも伝わらない。ただ、下記の説明は、これまで自分が言いたかったことを綺麗に言語化してくれているなと感じたので、シェアします。
このアウトプットも、私自身の学びにつながるアウトプットなだけで、ここまでお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました!
自身のこれまでの人生を振り返ると、野球部キャプテン、生徒会長、応援団長、起業家(社長)と、リーダー的な立ち位置が多かったのですが、育ち方が完全にスポーツ畑なので、「怒る(質問するので怒られてると捉えられやすい)」「教える」「やらせる」マネジメントのもとで育ってきて、自分自身がそうなりやすいことに以前から気づいてはいたけど、今日改めて認識することができたので、これを学びにして最高の組織を作っていきます!
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