患者さんを怒らせた薬剤師・・・
やっちゃいました。
久々に。
糖尿病治療中の58歳女性、Mさん。薬の飲み忘れが多く、血糖コントロールがあまり良くない。血液検査結果を教えてくれず、いつもはぐらかす。検査地が悪かった理由として「足が痛くて寝てばかりいて、Hba1cが高かった。」「無花果と葡萄が美味しかったから、そればかり食べていて高かった。」「お下が痒くなったから薬をやめていて高かった。」「花粉症があり、家で寝てばかりいて高かった。」「トイレを我慢していたから高かった。」とまあこんな感じ。
今日も「検査は悪かった。」と笑う。今日はどんな言い訳だろうか・・・
私は言ってしまった。気持ちは雄弁に喋るYouTuberだった。
「Mさん、糖尿病は15年経った頃から合併症が出てくることがわかっているんです。血糖値を正常に保っていないと、血管の老化が早まって、動脈硬化が進み、網膜症で視力が低下したり、腎機能が悪くなって透析になる方もあるんです。脳梗塞とか、心筋梗塞とかの危険も高まるんですよ。今は痛くも痒くもないけど、ちゃんとコントロールしていかないと・・・まだまだお若いんですから。」
私は「まだお若いんですから・・・」と、患者さんを持ち上げたつもりでいたんです。でも、Mさんの口角はさがり、声のトーンは低くなっていきました。
・・・完全に怒らせちゃいました。
その後、薬剤師向けの雑誌で見たんです。「エンパワーメント・アプローチ」を。
エンパワーメント・アプローチとは、患者さん自らが問題を発見し、対応することを支援する指導法です。自らの気づきを促し、患者さんが話したいことを掘り下げ、ポジティブな面を強調していく手法だそうだ。
それを参考に、私がすべきだった対応は
ステップ1 :現状を聴く。「時々飲み忘れるから値が下がらないのだと思う」と言ったことに対して、現状を聞く。どんな時に忘れるのか、飲み忘れる理由はなんだと思うか?
ステップ2 :大袈裟に褒めてポジティブチェンジ。傾聴を忘れずに。「食前の薬は忘れずに飲めてるけど、食後に色々やっていると忘れちゃうのよ。」に対して、「食前の薬をきちんと飲めてるなんてすごいじゃないですか!?実は食前の薬を忘れずに飲むことの方が難しいのですよ!!」(大袈裟に褒めるのってちょっと苦手だわ)
ステップ3 :次に繋がる有用な情報提供をする。「実は、飲み忘れてしまう食後の薬って、食前に一緒に飲むこともできるんです。食前に全て飲んでも良いか、主治医に確認してみましょう。それによって薬剤費も安くなりますよ。」
いつも言い訳ばっかりのMさんにイラついている私がいました。次回はうちの薬局に来てくれないかも知れません。あぁ、反省、反省。
処方内容
Rp1,ミチグリニドCa10mg 3錠 1日3回毎食直前
Rp2,ミグリトール50mg 3錠 1日3回毎食直前
Rp3,メトホルミン塩酸塩250mgMT 1錠 夕食後
Rp4,ビルダグリプチン50mg・メトホルミン500mg配合錠 1錠 朝食後
Rp5,イプラグリフロジン Lプロリン 50mg 1錠 朝食後
今回はアムロジピン5mgが残薬多数のため中止となっている。