見出し画像

【バスケのデータ分析書籍紹介】Basketball Data Science: With Applications in R

こんにちは

バスケのデータ分析書籍紹介ということで、今回は下記書籍の紹介をしようと思います。


概要

本の内容を端的にまとめると、高度*1な統計的手法を用いたバスケットボールのデータ分析事例集です。
統計解析向けのプログラミング言語のR、そして著者たちが作成したR用分析パッケージを利用して、NBAの実際のスタッツを対象に分析をしています。

*1 レベル感でいうと、大学で学ぶレベルと捉えていただければよいかと思います。

著者はPaola Zuccolotto氏とMarica Manisera氏で、イタリアにあるブレシア大学(the University of Brescia)で統計学の教授と准教授を務めています。
大学院でスポーツ分析に関する講義を行ったり、Big Data Analytics in Sports(BDsports)という国際的なスポーツ分析プロジェクトを運営したりなど、スポーツ分析の方面で精力的に活動されているようです。

なんとなく、アメリカの方が書いていると思い込んでいたので、イタリアの大学の教授が書いているというのは驚きでした。
ちなみに大学の短期コースで本書籍の内容を用いた講義(こちら)も行っているようです。

著者について詳細に知りたい方は、書誌情報のページ(こちら)に掲載されているbioなどをご参照ください。

バスケのスタッツ分析についての書籍としては下記がありますが、これらの書籍はバスケに特化した指標の検討や分析を行っている印象で、それに対して、今回紹介する書籍は統計的手法をバスケットボールに当てはめてみるというアプローチなので、個人的に新鮮でした。


掲載内容

本書は大きく下記3つのパートで構成されています。

1. Getting Started Analyzing Basketball Data
→バスケのデータ分析のこれまでの概要や、2で分析を進める際に前提となる情報を紹介しています
2. Advanced Methods
→具体的な分析事例を紹介しています
3. Computational Insights
→本書で利用している独自パッケージの詳細な使い方を紹介しています。

本書の肝は2の部分で、ここで様々な統計的手法とRを用いた分析事例を掲載しています。
具体的には、k-meansを利用してNBAチームを特徴ごとに分類したりや多次元尺度法を用いて選手の類似度合いを可視化したり、線形回帰を行って、外れ値となっている選手を見つけたりなどを行っています。

他にも、上記の手法を用いた分析の実例(論文など)の紹介もされており、紹介された分析手法を利用したバスケのデータ分析についてより深い理解をできるようになっています。

また、独自パッケージであるBasketballAnalyzeRはGithubで公開されており、中身を確認することができます。

利用されているデータもボックススコアだけでなく、プレイバイプレイも含まれているので、プレイバイプレイを使って試してみたい分析があるという方はこのパッケージ内にあるプレイバイプレイのデータをお使いになると良いかもしれません。

評価・感想

良かった点

大学で学ぶレベルの統計手法を利用したバスケのデータ分析事例を紹介していること
→表に出るような分析事例で、ある程度の統計手法を用いた事例はなかなか見かけないので、その面でとても参考になります
→しかも、統計手法を紹介するだけでなく、実際にデータを用いて分析を追体験できるので、使い方のイメージもしやすいです
観戦を楽しむためのデータ分析として有用な事例が載っている
→類似している選手を探すなど、Bリーグに当てはめて分析してみると酒の肴になりそうな予感がしてます。

悪かった点

独自パッケージを利用している
→実際に自分でも分析をしてみようとなった時に、このパッケージしか使えないと柔軟性に欠けて不便なので、独自パッケージで利用している関数やパッケージをそのまま利用する形にしてほしかったです。
勝ちにつなげるためのデータ分析という視点が弱い?
こちらに関しては、紹介されている分析手法が勝ちを求める分析に向いていないわけではなく、書籍内でそういう切り口の紹介がされていないということです。例えば、類似選手を見つけるという点では、若手選手の将来予測として、スター選手の若手時代のスタッツから似ているスタッツを探し、スター選手の現在の状況を一つのゴールとして育成するなどが思い浮かびます。
・統計手法の解説を理解するのが大変
解説が簡素で、何よりも英語なので統計やRの勉強をしたことがないような人だと理解するのに相当時間が必要になると思います(自分もところどころそうなってます)
→読むとしたら、先に日本語の書籍やサイトで統計やRの理解を深めておくことをオススメします。

私感

そこそこのお値段なのでお財布に厳しいですが、バスケで高度なデータ分析を行いたいと考えている人にはおすすめです。
特にバスケのデータを酒の肴にして楽しみたいという人や、そういうデータを提供したいという人にとっては、読解に支障がなければ、割とスムーズにデータを料理する幅を広げられるので、手元に一冊持っておいて損はありません。
ただ、勝利につながる分析を行うという点では、効果が出るまで時間がかかる*2と思われるので、そこを踏まえた上で購入を検討されると良いでしょう。
*2 勝利につながる分析という観点の説明が弱いので、読解がスムーズに行っても、実際の分析実務への応用方法を考える時間が必要になるからです

それにしても最近は、バスケのデータ分析の盛り上がりを感じます。
この本の出版もそうですし、日本でも佐々木クリスさんと増田林太郎さんがNBAのデータを自動で取得する仕組みを開発したりなどもあり、自分もその盛り上がりに少しでも貢献していきたいなと思います。

本文は以上です。

バスケのデータ分析に関する文献のまとめも継続的に行っているので、ぜひそちらも御覧ください


ご質問・ご指摘などありましたらコメントいただければと思います。


サポートしていただけるとありがたいですが、 SNS等で広めていただけるともっとありがたいです。 一緒にバスケを盛り上げていきましょう!