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わたしのはたらき方 〜憧れの企業入社から今に至るまで〜

べる



約2年前、わたしは安定した企業を捨てて無職になった。


事務職だったけど、お給料は良かった。
同職種の同年代と比べても高いほうだったと思う。

ボーナスもしっかり出ていたし、
業界的にも食いっぱぐれそうにはなかった。



なぜ、それらを捨てて無職になったのか。


持病が悪化したから
である。




さかのぼること約10年。
当時16歳のわたしは目の病気だと診断された。

「網膜色素変性症」という治療法のない目の難病で、
わたしの進行スピードなら27歳までには失明すると宣告された。


それでも夢を追いかけて大学へ進学し、
事務職として憧れの業界の企業にも就職できた。



私はいわゆるロービジョンで、目は見えている。

視野は健常者の3%ほどしかなくでとても狭いが、
眼鏡をかければ矯正視力は0.6くらいあった。


パソコンの授業は小学生のころからあったし、
高校・大学でも課題提出のためにたくさんパソコンを使ってきた。

だから、たとえ視覚障害者でも、
長時間パソコンを使うことに抵抗はなかった。



だけど、会社ではそんな比じゃない。

事務職は仕事柄、1日中パソコンとにらめっこ。


入社1年目は覚えることがたくさんあって、
障害のことを考える余裕もなく、あっという間に過ぎた。


しかし、2年目になると任される仕事量も増えてくる。

仕事量に比例して早出も残業も増え、
会社で決められていた残業時間を超えて怒られるまでになった。


そんなときだった。




「最近、視力が落ちた気がする」

そう感じた。



毎日毎日、家と会社の往復。

休日出勤がないのは救いだったけど、
休日は家にこもっていたかったし、母の相手で疲労困憊。

楽しむ余裕もない。

毎日、食欲もなかった。



気がつけば、矯正視力は0.4になり、視野狭窄の症状も進み
障害者手帳の等級も上がった。


「私は何のために、身を削ってまで働いているんだろう」

そう思ってしまった。




上司に持病が悪化したため退社したいことを申し出ると

「今どき、パソコンを使わない仕事なんてないよ」

と言われた。


気持ちや言いたいことは分かるし、正論だと思う。

でも、もともとついていけないと思っていた上司のその一言が
わたしをさらに退社へと導いた。



そして、

「事務職」の私の代わりはいくらでもいるが、
私の「目」の代わりはいない。


そう気づいてしまったら、身を削ってでも働いている意味が
分からなくなってしまった。

いくら憧れていた企業で働けて、なおかつ高収入だったとしても、
私には身を粉にして働くことはできなかった。


こうして、わたしは何もやる気になれずに無職になった。

年に数回、遠距離恋愛中の彼の家へ行っていたが、
花嫁修業にしかならないことばかり。




転機は、去年の9月だった。

家族からのプレッシャーや友人たちの環境の変化、
自分の人生に嫌気がさし、
以前から気になっていた文字起こしの会社に連絡してみた。

そうして、私の文字起こしの仕事が始まった。


このまま順調にことが進めば良いなと思っていると、
TwitterアカウントにDMが来た。

ロービジョン向けWebメディアのライターにならないか
というお誘いだった。


文字起こしの仕事を始めたばかりで不安もあった。

でも、自分の経験を言葉にしたいということもあって、
ありがたくお受けすることにした。

それが、私のライターとしての仕事の始まりだった。



どちらの仕事も、働く時間や場所は関係ない。

リモートワーク、在宅勤務、テレワーク……
最近注目の「働きやすい環境」なのだろう。


正直なところ、報酬については物申したい気持ちはある。
でも、仕事があることはありがたい。




わたしが2つの仕事を始めて気づいたことがある。


それは、

・わたしは働くにあたって
 お給料と休日はそこそこほしいこと

・自分の思いや考えを書くことが好きなこと

・「自分のやりたいこと」が分からないこと

・満員電車は嫌だけど、
 電車で通勤することはそこまで嫌じゃないこと

・会社員のように勤務時間が決められているほうが
 わたしには向いているかもしれないこと

・退社した会社に少しだけ未練があるかもしれないこと


安定した企業を退社してまで
やりたいことがあったわけではないし、
自分は何がしたいのか分からない状態だった。


たとえ実際にそうであっても
「途中で投げ出した人」と思われることも嫌だった。


「無職」ということにコンプレックスを抱いていたし、
かといって「視覚障害者だから」とバイトする気持ちにもなれず、
働くことから逃げていた。


退社しなければよかったのかなと毎日思っていた。



でも、退社したことによって自分の気持ちに気づけたり
自分のことが少し分かったような気がする。


退社してから2年。

退社したのも悪いことばかりではなかったと、
やっと思えるようになってきた。



これから、また別の仕事に就くかもしれないし、
どんな仕事に転職するかは分からない。

必ずしも自分のやりたいことを仕事にできるとも限らない。


でも、いろいろなことが日々進化していて、
多種多様な働き方が増えてきた。

まさに、はたらき方はどんどん自由になっていくのだろう。


これからは人間に代わって、
AIが仕事をする時代になっていくかもしれない。


そのスピードに後れを取らない程度に
「わたしのはたらき方」を見つけていきたい。


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